【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

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郭洋春『TPP すぐそこに迫る亡国の罠』三交社、2013年

2013-06-11 22:29:52 | 政治/社会

          

   装丁と本文の強調箇所の太文字のインパクトがありすぎるので、政治的プロパガンダ本かとの第一印象だったが、内容を読むと、TPPの危険性と、これを止めることの緊急性に対する著者の主張、想いの反映に他ならなかったのだということが分かる。


   著者はTPPをひとことで言うと「現代版経済帝国主義」と断定している。現政権はこのTPPへ加盟を画策しているが、もしこれが現実化すると、日本は大変なことになる、具体的には、農業保護のための補助金は許されない、BSE牛肉の輸入を阻止できない、公共サービスが剥奪される、エコカーは違反と訴えられる、安全基準は黙殺される、公共事業が外国企業の草刈り場になる、学校の存在目的が金儲けになる、中小企業が衰退し国も衰退する、地方条例も覆される、国内法も変更を迫られる、要する日本国民はにアメリカ企業に弄ばれ、餌食となってしまうというわけである。

   さらに、国民生活にとって生命線である、脱原発も不可能になり、食品表示がなされなくなり、国民皆保険制度の土台がくずされ、郵貯・簡保もアメリカ企業の利益目的に再編されてしまう。

   アメリカの言うとおりにならなければ、伝家の宝刀「ISD条項」が発動される。これは、投資家(企業)が進出先で不当な扱いを受け、期待した利益があがらないと判断すれば、国家を訴えることができるというもので、訴える先は国際投資紛争解決センターで、世界銀行傘下の組織(その総裁は一貫してアメリカ国籍)、仲裁審判員の最終任命権はアメリカの影響下にある同センターの事務総長である。アメリカ一人勝ちの構造がつくられている。

  著者は、こうした危険性をもつTPPの中身が、すでに2012年に米韓で締結されたFTAとして前提になっていて、既に韓国ではその弊害がいたるところに出ていることを明らかにしている。

  問題は、こうした危険な内容が国民にほとんど知らされていないこと、実は与党の自民党閣僚をはじめ政府関係者さえ内容を知りえない仕組みになっていることである。日本の主権、領土、文化が根こそぎ侵略される、そんなことがまかりとおっていいのだろうか。日本の豊かな未来は農業と観光産業を軸にした成長戦略であることを提唱して、著者は本書を閉じている。巻末に、俳優の山本太郎氏との対談。まことに時宜を得た出版といえよう。


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