ジャーナリスト、ミカエル・ブルムクヴィストが実業家ヘンリック・ヴァンゲルから受けた依頼は、40年ほど前に失踪した一族の少女ハリエットの真相究明、ヴァンゲル一族の家族史をまとめることでした。達成されれば、ミカエルを名誉毀損で有罪に追い込んだ経済界の大物ヴェンエルストレムの秘密を教えるとのことでし。
下巻ではミカエルの懸命のハリエット捜しから始まる。徹底した調査(撮られた写真の分析、埋もれた写真の発掘、アルファベットと数字が書き込まれた謎のメモの解読)の結果、ハリエットはオーストラリアに生存していたことがわかります。調査の過程で、ミカエルは命を何度も狙われました。邪魔者は消せというわけです。
暗躍したのは、一族のゴットフリートの息子でハリエットの兄マルティン・ヴァンゲルでした。秘密の地下室でマルティンからの拷問に苛まれていたミカエルは、リスベット・サランデルによって窮地を救われます(直後マルティンは事故死)。
後半ではヴェンエルストレムを、彼のコンピュータの徹底したハッキングによって、調査員リスベットがヴェンエルストレムの悪事を暴き、追いつめていく過程が凄まじく描写されています。
ミカエルはその成果をふまえてヴェンエルストレムを糾弾する記事を掲載、絶大な反響を得ました。(直後、ヴェンエルストレムはスペインのマルヴェージャにあるアパートの一室で殺害されます)。
解説でミステリ研究家の小山正さんが書いていますが、この小説は「告発型のスウェーデン・ミステリ」であり、この書の「最大の特徴は、全編にみなぎるジャーナリストとしての気骨」とのこと、「過去に名探偵はたくさんいたけれども、ジャーナリスト的な”調査報道”という専門的な手法を使って、ミステリの謎を解いていく探偵は、いなかったのではないだろうか?」(p.437)と結んでいます。解説者は、さらに「そもそも、本書の総合的なタイトルになっている、”ミレニアム”(千年紀)、これは、いったいどういう意図でつけられたのであろうか? ・・・雑誌の名前を”ミレニアム”と命名した作者ラーソンの意図-それもまた、作者の大いなる仕掛けのひとつであろう」と書いています。
すでに著者は亡くなっているので、直接的な言明を本人から聞くことはできません。われわれは引き続く第2部、第3部を読み込み、解読していくしかないようです。
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