吉田恭子さんのヴァイオリン演奏は、朝日カルチャーのレクチャー・コンサートで数回、聴いたことがわかります。近くの川口市でリリア・音楽ホールでコンサートがあったので、出かけました。
ホールでのコンサートは、華があります。吉田さんは、前半は白のいでたち、後半は真っ赤な服装で、ひときわ目立ちました。伴奏のピアノは、鈴木慎崇さん。
曲目は下記のとおりです。
・モーツァルト:ヴァイオリンソナタ 第28番 ホ短調 K.304
・ベートーヴェン:ヴァイオリンソナタ 第5番 ヘ長調
・クライスラー:愛の喜び
・クライスラー:愛の悲しみ
・ラフマニノフ:祈り(クライスラー編曲)
・オードリー・ヘップバーン映画メドレー
・サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン
「モーツァルト:ヴァイオリンソナタ 第28番」は、モーツアルトのヴァイオリンソナタとしては珍しく短調です。未完のものを含め37曲ほどのヴァイオリンソナタをかいたモーツアルトは、35歳でなくなったという事実もそうですが、つねに死のイメージを作品の背後にもっていました。とても、明るく、陽気な、弾むような曲も、その底には何かしらの死との対話があったようです。
「ベートーヴェン:ヴァイオリンソナタ 第5番」もよく聴く曲です。ベートーヴェンには、非常に理知的で、とりつくしまのないところがあるようにみえますが、その音楽を素直に聴くと、聴き手を必ず満足させる姿勢があり、その作品にはいつもすばらしいメロディが秘められています。
「愛の喜び」「愛の悲しみ」は、20世紀前半にウィーンで活躍した名ヴァイオリニスト。当時、レコードはSP版。この版は片面が3-4分で終わってしまいますが、クライスラーはその時間でひとまとまりでおさまる佳品をたくさんつくりました。「祈り」はラフマニノフのピアノ協奏曲2番の第2楽章をクライスラーが編曲した作品です。
「オードリー・ヘップバーン映画メドレー」では、映画「マイ・フェア・レディ」「シャレード」「昼下がりの情事」「ティファニーで朝食を」からの名曲がメドレーで演奏されました。
E列13番の最高の席だったので、吉田さんの表情、演奏テクニックも十分楽しめました。円熟の境地の演奏です。緩急がよき効いていました。力強さもあれば、優しさ、慈愛にあふれた演奏です。「サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン」は迫力満点でした。
曲の解説をしながらの演奏だったので、十二分にENJOYできました。
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