【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

宮城谷昌光『夏姫春秋(上)』文芸春秋、2000年

2011-01-18 09:05:51 | 小説
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 「春秋」とは時代の意です。また「夏姫」の「姫」は女性の意ではなく、「姫姓(きせい)」を指します。

 微妙な楚と鄭との関係、両国の軍が陳を攻め、宋を落としますが、晋が睨みをきかせています。他に、弱小ですが衛と曹。中国春秋時代の国盗合戦を小説のかたちにしたてたもので、表題から想起される絶世の美女、夏姫の像は必ずしも前面に出てきません。

 しかし、夏の妹嬉(ばっき)、商の妲己(だっき)、周の褒姒(ほうじ)、春秋の驪姫(りき),彼女たちに夏姫を入れて中国の200年にひとりの絶艶といわれるのだそうです(上、p.58)。

 夏姫は鄭の国、穆公の子として生まれ、兄の子夷の愛を受けます(今までいえば近親相姦)。その後、陳の国の御淑に嫁ぎ、子、徴舒(子南)をもうけますが、夫は早逝。

 実の兄で鄭王となった子夷が殺され、その悲しみの最中、夏姫(20歳代)は夏氏の全ての采地を陳の君主の管理下におかれるという不遇にあいます。そして、楚軍の陳国への攻撃なかで受けた陵辱。

  著者はこの作品で、第104回直木賞、受賞。(下)はまたいつか読みます。硬質の文体は、この著者の面目躍如です。

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