【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

李恢成「伽倻子のために」(新潮文庫,1975年)

2017-03-24 21:10:56 | 小説

 「伽倻子のために」を読了しました。樺太からわたってきた父のもとを離れ、東京の大学で学ぶ主人公・林相俊(イム・サンジェニ)。種々の偏見のなかで二世として生きていくなかで、朝鮮人の家庭に育った日本人・伽倻子と出会い、生活(同棲)し、そして別れていく。サンジュは「伽倻子のために」何ができたのだろうか?

 直前に小栗康平監督の映画を観ていたので、どうしても原作と映画との相違が気になります。


 この原作では朝鮮人の二世が日本で生活していくことの難しさ、心の問題が細かく丁寧に書かれています。またサンジュニが大学で演劇(構成劇「白頭山をめざす若者たち」)に関わり活動する様子も紹介されています。50年代末以降の朝鮮帰還運動も背景に登場し、友人の女性・崔明姫が登場します。彼女はサンジュニに少ないくない影響を与えていますが、映画には出てきません。

 伽倻子についても、幼少期に不幸があったこと、東京での相 との同棲生活から故郷にもどってからバーの男と関わったこと、その後、その男ともわかれ別の結婚生活が始まり、美和子という女の子を産んだことなど、映画で描かれているよりも深刻な人生をおくっています。


       


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