作者の加藤大介は舞台俳優。明治44年生まれ。昭和4年に二代目市川左団次のもとに入門。昭和8年に前進座に入座。18年衛生伍長として応召、21年に復員。戦後は舞台、映画、テレビで活躍しました。
この小説は、加藤さんが戦中、パプア・ニューギニアで兵隊生活をおくっていた最中、隊のなかに芸達者なものが多くいたこと、師団の隊長に理解があったことで、「マノクワリ歌舞伎座」を立ち上げ、兵隊生活で疲弊したいた男たちを精神的に支えたという実話です。奇跡のような話ですが、本当にあったことでした。
戦闘の話は一切でてきませんが、食糧難、病気の蔓延、戦死の報などは出てきます。
「マノクワリ歌舞伎座」には、加藤さんはじめ、浪曲をうなるもの、三味線をひくものの他、大道具、小道具、衣装、カツラを作る人がいました。加藤さんはかれらをたばね、稽古をかさねました。舞台は隊のなかで人気を博し、ニューギニアに駐屯していた兵士たちがかわりばんに観に来ていました。入場料は、お芋だったようです。
タイトルの「南の島に雪が降る」はこの一座が、負傷した東北出身の兵士が「雪を見たい」と死の直前にもらしたのを聞いて、その場面を彷彿させる演目を披露したことから来ています。
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