森友・加計疑惑を追う⑤ 「総理のご意向」明白に
学校法人「加計学園」(岡山市)の獣医学部新設をめぐっては、重要な節目ごとに安倍晋三首相の「ご意向」が示されてきました。
まるで印籠効果
最初は、2015年4月2日に、柳瀬唯夫首相秘書官(当時)が加計学園事務局長や愛媛県、今治市の担当者らに「本件は、首相案件」と伝えました。
同日午前には、内閣府の藤原豊地方創生推進室次長(当時)が、前出の一行に「要請の内容は総理官邸から聞いており」と述べています。
この後、今治市は国家戦略特区に獣医学部新設の規制緩和を申請。内閣府の全面的なバックアップを得ます。
16年9月9日には、文部科学省の前川喜平事務次官(当時)が、官邸の和泉洋人首相補佐官に呼び出され、「総理は自分の口からは言えないから、私がかわりにいう」と獣医学部の推進を迫られました。前川氏はこの経過を国会の参考人質疑で証言しています。
文科省の内部文書によると、内閣府の藤原氏は16年9月26日、文科省の専門教育課長に獣医学部の18年4月開学は「官邸の最高レベルが言っている」と圧力をかけます。抵抗した文科省に、内閣府は追撃のように「総理のご意向だと聞いている」と伝えます。
別の文科省内部文書では、萩生田光一官房副長官(当時)が、和泉首相補佐官と話したと前置きし、こう述べたとされています。
「官邸は絶対やると言っている」
これらの後に、文科省は獣医学部新設に協力します。
「総理」「官邸」の名前が出るたびに、“壁”が突き破られ、獣医学部新設が進んだ形です。時代劇で水戸黄門が示す印籠(いんろう)のような効果でした。
特徴的なのは、「総理」「官邸」を記した文書が、別々の省庁や自治体の内部文書であるということです。また前川氏のような元高官が実名で証言しているのも異例の事態です。
2013年5月に安倍首相(左)の別荘で撮影された写真。加計学園の加計孝太郎理事長(中央)、萩生田官一房副長官(右)らとバーベキューをした=(萩生田氏のHPから)
事実はっきりと
他方、発言したとされる側の反応はどうか。柳瀬氏は「記憶がない」。和泉氏も「記憶は全く残ってない」。藤原氏は「『総理のご意向』と伝えた認識はない」。いずれも“記憶がはっきりしない”と共通しています。萩生田氏は文科省に相談を受けたことを認めながら「指示を出すことはない」としています。
「総理のご意向」を示す記録も記憶もあるのに、発言したとされる側は証拠も示さず「記憶がない」などとあいまいにする―。
「総理のご意向」があったのかどうか、事実がはっきりと物語っています。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年5月10日付掲載
柳瀬唯夫首相秘書官(当時)の参考人質疑で、愛媛県や加計学園と会っていたとやっと証言。しかし、首相には報告していないという不可解な言い訳。
これでは通らないでしょ。
学校法人「加計学園」(岡山市)の獣医学部新設をめぐっては、重要な節目ごとに安倍晋三首相の「ご意向」が示されてきました。
まるで印籠効果
最初は、2015年4月2日に、柳瀬唯夫首相秘書官(当時)が加計学園事務局長や愛媛県、今治市の担当者らに「本件は、首相案件」と伝えました。
同日午前には、内閣府の藤原豊地方創生推進室次長(当時)が、前出の一行に「要請の内容は総理官邸から聞いており」と述べています。
この後、今治市は国家戦略特区に獣医学部新設の規制緩和を申請。内閣府の全面的なバックアップを得ます。
16年9月9日には、文部科学省の前川喜平事務次官(当時)が、官邸の和泉洋人首相補佐官に呼び出され、「総理は自分の口からは言えないから、私がかわりにいう」と獣医学部の推進を迫られました。前川氏はこの経過を国会の参考人質疑で証言しています。
文科省の内部文書によると、内閣府の藤原氏は16年9月26日、文科省の専門教育課長に獣医学部の18年4月開学は「官邸の最高レベルが言っている」と圧力をかけます。抵抗した文科省に、内閣府は追撃のように「総理のご意向だと聞いている」と伝えます。
別の文科省内部文書では、萩生田光一官房副長官(当時)が、和泉首相補佐官と話したと前置きし、こう述べたとされています。
「官邸は絶対やると言っている」
これらの後に、文科省は獣医学部新設に協力します。
「総理」「官邸」の名前が出るたびに、“壁”が突き破られ、獣医学部新設が進んだ形です。時代劇で水戸黄門が示す印籠(いんろう)のような効果でした。
特徴的なのは、「総理」「官邸」を記した文書が、別々の省庁や自治体の内部文書であるということです。また前川氏のような元高官が実名で証言しているのも異例の事態です。
2013年5月に安倍首相(左)の別荘で撮影された写真。加計学園の加計孝太郎理事長(中央)、萩生田官一房副長官(右)らとバーベキューをした=(萩生田氏のHPから)
事実はっきりと
他方、発言したとされる側の反応はどうか。柳瀬氏は「記憶がない」。和泉氏も「記憶は全く残ってない」。藤原氏は「『総理のご意向』と伝えた認識はない」。いずれも“記憶がはっきりしない”と共通しています。萩生田氏は文科省に相談を受けたことを認めながら「指示を出すことはない」としています。
「総理のご意向」を示す記録も記憶もあるのに、発言したとされる側は証拠も示さず「記憶がない」などとあいまいにする―。
「総理のご意向」があったのかどうか、事実がはっきりと物語っています。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年5月10日付掲載
柳瀬唯夫首相秘書官(当時)の参考人質疑で、愛媛県や加計学園と会っていたとやっと証言。しかし、首相には報告していないという不可解な言い訳。
これでは通らないでしょ。
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