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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

この人に聞きたい 作家・落合恵子さん 第2回 未婚の母から生まれて おとなの同情に傷ついた

2020-12-05 08:39:17 | 政治・社会問題について
この人に聞きたい 作家・落合恵子さん 第2回 未婚の母から生まれて おとなの同情に傷ついた
〈1945年1月、宇都宮市で生まれました。戦時下で年上の男性を愛した母は、22歳で未婚での出産を決意しました〉
いまでいえばシングルマザーです。でも、当時の地域社会では大変なスキャンダルだったでしょう。おとなたちの口まねなのか、子どもたちに「おまえには父ちゃんがいない」「ててなしっ子」と言われ、幼稚園は数週間でやめました。
いまと違って当時はあけすけでした。ある意味では、たたかいがいがあった。(笑い)
〈就学前、自分より長い物干しざおを引きずり外へ出ようとしたこともありました〉
よく覚えてはいませんが、後年、叔母から聞いたんです。友だちからはやしたてられ、子どもなりに「世間」と対峙(たいじ)しようとしたのでしょう。でも、途中で転んで大声で泣きだしたそうです。




〈家にしまってあったビスケットの缶を、無断で持ち出し、まわりの子どもたちに配って“ロ封じ”しようとしたこともありました〉
近所の子がワーッと集まって、ビスケットの缶はすぐに空になりました。でも、食べ終わってしまえば同じこと。差別がやむわけではありません。子どもながらに屈辱的なことをしたものです。
最も嫌だったのは、周囲のおとなたちが「かわいそうな子」と同情することでした。自分ではかわいそうだと思っていないのに、勝手にかわいそうと言うなよと。それが一番悔しかったですね。
大好きな祖母が私を不欄(ふびん)がって、特別扱いするのも居心地が悪かったです。おとなのそうした対応に傷ついた記憶があります。
そうして、ある集団のなかで異質であることが、子どもに何をもたらすかを学びました。「かわいそう」という上から目線の同情は、かえって人を傷つけると感じました。
祖母や母の友人たちから贈られた、「シンデレラ」「白雪姫」「人魚姫」などの絵本にも感情移入できませんでした。お姫さんたちは、こんなにいじめられながら、なぜ従順で耐えているのか。どうして少女たちにだけ苦難がふりかかるのか。「かわいそうな子」という私への目線とお姫さんたちが重なり、息苦しさを感じました。



1952年、小学生入学(本人提供)

5歳で東京に
〈「世間」の重圧から逃れるように、5歳で母と上京しました〉
住んだのは、中野区の東中野ハウスというアパートでした。戦争で家族や恋人や家を失った女性たちが集まっていた住宅で、子どもは私だけ。かわいがられました。
母は会社の事務の仕事を終えた後、夕食後には娘時代の経験をいかして生け花を教えたり、雑居ビルの清掃の仕事に出て家計を支えました。子どもだった私は、トイレ掃除を仕事にする母のことが恥ずかしく「お掃除の仕事、やめて」と言ったことがあります。
「どうして恥ずかしいと思うのか、よく考えてごらん。その気持ちこそが恥ずかしい場合があるのだから」
母のいう通りで反論できませんでした。シングルマザーの子どもとして、差別や偏見に気づいていたはずなのに、私の中にもある種の職業差別があることを思い知らされました。
〈中学、高校は女子校でした。高校時代は「ウエストサイド物語」に夢中になり、友人と一緒にミュージカルのまねごとをしたこともあります〉
しかし、クラスにいまひとつなじめないまま、周囲からは「穏やかでいい人」と言われていました。猫をかぶっていたんでしょう。(笑い)
自分の努力ではどうにもならないことへの差別、私の場合は戸籍ですが、それを知ることで、私は、例えばアメリカの人種差別の問題も海の向こうの話とは思えなくなりました。10代後半から20代は、そういうテーマばかり追っていました。だから就職試験の面接で戸籍について問われた時、こう答えました。
「私が責任をとれるのは、私が生まれるまでではなく、生まれてからのことです」(つづく)

「しんぶん赤旗」日曜版 2020年11月29日付掲載


シングルマザーの子として、いじめにあった落合さん。
まわりの子どもたちに配って“ロ封じ”に、ビスケットを配ったことも。
母のダブルワークの清掃の仕事。
「恥ずかしいからやめて」と言った落合さんに、お母さんは「その気持ちこそが恥ずかしい場合があるのだから」と。
私の中にもある種の職業差別があることを思い知らされましたと。

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