SDGsを力に 持続可能な世界へ① 気候正義へ公正な計画を
駒澤大学名誉教授 小栗崇資氏に聞く
9月の国連総会期間中に「SDGs(持続可能な開発目標)サミット」(同月18~19日)と「気候野心サミット」(同月20日)が開催されました。両サミットの意義を採択された報告書などをもとに駒澤大学名誉教授の小栗崇資氏にその特徴について読み解いていただきました。
注目されたのは、二つのサミットでSDGsも気候変動対策もいずれも深刻な危機に直面していることが明らかにされたことです。グテレス国連事務総長は、SDGsサミットにおいて、SDGsの169のターゲット(具体的目標)のうち「軌道に乗っているのはわずか15%」にすぎず、目標の多くは「停滞と後退」に陥り、SDGsは「危機にひんしている」と警告。持続可能な開発への加速した変革を求めました。
気候野心サミットでは、「先行し行動する者」と認められた34力国が発言を許されましたが、二酸化炭素排出国のトップ5であるアメリカ、中国、インド、ロシア、日本の発言は拒否されました。事務総長は「人類は地獄の門を開いた」と強い危機感を表明し、行動の加速へ「気候正義を実現する公正な移行計画を立てなければならない」と訴えました。
国連総会に合わせて開かれたSDGsサミット=9月18日、ニューヨーク(ロイター)
相互信頼の欠如
SDGsサミットでは、「迫る危機、変革の時-持続可能な開発への変革を加速するための科学的検討」と題する報告書などに基づき、「政治宣言」が採択され、気候野心サミットではアジェンダ(行動計画)「生存可能な地球のためのロードマップ」が提起されました。
SDGs・気候変動対策の停滞や後退を招いた大きな要因は、この3年間に起きた、新型コロナのパンデミック、ロシアによるウクライナ侵略、インフレと生活費の高騰などです。SDGsサミットの「政治宣言」は、大きな三つのグローバル危機に気候変動の強い影響が加わり、いっそうの貧困、飢餓、不平等が生じていると述べています。そして何よりの問題として「これらの危機に共同で打ち勝とうという国際連帯が弱まり、相互の信頼も欠如している」と指摘しました。
二つのサミットでは、SDGs・気候変動対策の危機を救うために、遅れを取り戻し、スピードを上げる取り組みを求めています。そのために、各国の国内政策や地域政策の中心課題にSDGs・気候変動対策を据え、加速的な取り組みのための計画を策定し、実施することを要請しています。
人間社会が破局
国際金融機構の改革の必要性を提起していることも重要です。発展途上国の求めに対応して資金供給を改善し、金融機構のガバナンス(管理)への発展途上国の参加を広げることが気候変動を含むSDGsの実現に不可欠だと訴えています。
国連の二つのサミットには、このまま停滞・後退を放置すれば、地球と人間社会の破局的危機につながりかねないという強烈な危機感が貫かれています。日本ではメディアの報道も少なく危機意識が希薄ですが、私たちは人類の「生か死か」の強い危機意識を共有し、国際的に見ても遅れている日本でのSDGs・気候変動への取り組みを強めなければなりません。
(つづく、4回連載です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年10月24日付掲載
9月の国連総会期間中に「SDGs(持続可能な開発目標)サミット」(同月18~19日)と「気候野心サミット」(同月20日)が開催。
SDGsサミットでは、「迫る危機、変革の時-持続可能な開発への変革を加速するための科学的検討」と題する報告書などに基づき、「政治宣言」が採択され、気候野心サミットではアジェンダ(行動計画)「生存可能な地球のためのロードマップ」が提起。
日本ではメディアの報道も少なく危機意識が希薄。私たちは人類の「生か死か」の強い危機意識を共有し、国際的に見ても遅れている日本でのSDGs・気候変動への取り組みを強める必要があります。
駒澤大学名誉教授 小栗崇資氏に聞く
9月の国連総会期間中に「SDGs(持続可能な開発目標)サミット」(同月18~19日)と「気候野心サミット」(同月20日)が開催されました。両サミットの意義を採択された報告書などをもとに駒澤大学名誉教授の小栗崇資氏にその特徴について読み解いていただきました。
注目されたのは、二つのサミットでSDGsも気候変動対策もいずれも深刻な危機に直面していることが明らかにされたことです。グテレス国連事務総長は、SDGsサミットにおいて、SDGsの169のターゲット(具体的目標)のうち「軌道に乗っているのはわずか15%」にすぎず、目標の多くは「停滞と後退」に陥り、SDGsは「危機にひんしている」と警告。持続可能な開発への加速した変革を求めました。
気候野心サミットでは、「先行し行動する者」と認められた34力国が発言を許されましたが、二酸化炭素排出国のトップ5であるアメリカ、中国、インド、ロシア、日本の発言は拒否されました。事務総長は「人類は地獄の門を開いた」と強い危機感を表明し、行動の加速へ「気候正義を実現する公正な移行計画を立てなければならない」と訴えました。
国連総会に合わせて開かれたSDGsサミット=9月18日、ニューヨーク(ロイター)
相互信頼の欠如
SDGsサミットでは、「迫る危機、変革の時-持続可能な開発への変革を加速するための科学的検討」と題する報告書などに基づき、「政治宣言」が採択され、気候野心サミットではアジェンダ(行動計画)「生存可能な地球のためのロードマップ」が提起されました。
SDGs・気候変動対策の停滞や後退を招いた大きな要因は、この3年間に起きた、新型コロナのパンデミック、ロシアによるウクライナ侵略、インフレと生活費の高騰などです。SDGsサミットの「政治宣言」は、大きな三つのグローバル危機に気候変動の強い影響が加わり、いっそうの貧困、飢餓、不平等が生じていると述べています。そして何よりの問題として「これらの危機に共同で打ち勝とうという国際連帯が弱まり、相互の信頼も欠如している」と指摘しました。
二つのサミットでは、SDGs・気候変動対策の危機を救うために、遅れを取り戻し、スピードを上げる取り組みを求めています。そのために、各国の国内政策や地域政策の中心課題にSDGs・気候変動対策を据え、加速的な取り組みのための計画を策定し、実施することを要請しています。
人間社会が破局
国際金融機構の改革の必要性を提起していることも重要です。発展途上国の求めに対応して資金供給を改善し、金融機構のガバナンス(管理)への発展途上国の参加を広げることが気候変動を含むSDGsの実現に不可欠だと訴えています。
国連の二つのサミットには、このまま停滞・後退を放置すれば、地球と人間社会の破局的危機につながりかねないという強烈な危機感が貫かれています。日本ではメディアの報道も少なく危機意識が希薄ですが、私たちは人類の「生か死か」の強い危機意識を共有し、国際的に見ても遅れている日本でのSDGs・気候変動への取り組みを強めなければなりません。
(つづく、4回連載です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年10月24日付掲載
9月の国連総会期間中に「SDGs(持続可能な開発目標)サミット」(同月18~19日)と「気候野心サミット」(同月20日)が開催。
SDGsサミットでは、「迫る危機、変革の時-持続可能な開発への変革を加速するための科学的検討」と題する報告書などに基づき、「政治宣言」が採択され、気候野心サミットではアジェンダ(行動計画)「生存可能な地球のためのロードマップ」が提起。
日本ではメディアの報道も少なく危機意識が希薄。私たちは人類の「生か死か」の強い危機意識を共有し、国際的に見ても遅れている日本でのSDGs・気候変動への取り組みを強める必要があります。
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