けいざい四季報 2023Ⅰ ③ 日銀新体制 リスク認めつつ緩和継続
【ポイント】
①植田和男氏を次期日銀総裁とする人事案を国会が承認。植田氏は政策継承を表明
②白川方明前日銀総裁が国際通貨基金の季刊誌に寄稿し、金融政策見直しを訴える
③「異次元緩和」は異常円安による不本意な物価上昇を招き経済を下押ししている
4月に日銀新体制が発足します。黒田東彦総裁が10年間続けてきた「異次元の金融緩和」政策の弊害が噴き出す下で、日銀は今後どんな政策をとるのか。関心が高まっています。
格差の拡大も
黒田氏は4月8日に日銀総裁を退任する予定です。政府は、経済学者の植田和男氏を次期総裁候補とし、前金融庁長官の氷見野良三氏と日銀理事の内田真一氏を副総裁候補とする人事案を国会に提出しました。この人事案は、3月10日の参院本会議で自民党などの賛成多数で同意されました。3候補が「異次元緩和」を評価して継続する意向を表明したため、日本共産党は人事案に反対しました。
これに先立ち、2月末に衆参両院の議院運営委員会で植田氏らに対する所信の聴取と質疑が行われました。
植田氏は「2%の物価安定の目標実現にとって(現在の金融政策は)必要かつ適切である」と述べ、「異次元緩和」を継続する意向を示しました。他方、日銀が「いろいろなリスクを抱えていることは事実」と認め、大量に買った株式上場投資信託(ETF)を今後どうするかは「大問題」だと強調しました(2月24日、衆院議院運営萎員会)。また、「(異次元緩和が)所得格差の拡大につながる面がある」ことも認めました。(2月27日、参院議院運営委員会)
所信を述べる植田和男氏=2月24日、衆院議運委
前総裁の訴え
白川方明前日銀総裁は国際通貨基金(IMF)の季刊誌(3月1日公表)に「変化の時」と題して寄稿しました。日銀総裁の交代が迫る中、「金融政策の枠組みを再考する機は熟した」として、中央銀行は物価目標設定など現在の金融政策の基礎となっている考え方を再検討すべきタイミングだと訴えました。
白川氏は、黒田日銀の「金融大実験」が物価や成長に及ぼした影響は小さかったと分析しました。米国などで物価が高騰したことを念頭に、「(中央銀行は)デフレ(持続的な物価下落)に陥ることの危険性に焦点を当て続けるか、見直すべきだ」と主張しました。
反省と転換を
「異次元緩和」の行き詰まりは深刻です。10年間続けても、内需拡大による持続的な2%の物価上昇は起きていません。植田氏は「(金融緩和が)思ったほどの強い効果にならず、(基調的なインフレ率は)2%にはまだ達していない」と述べています。(2月24日、衆院議院運営委員会)
他方、「異次元緩和」は日米金利差の拡大から異常円安を招き、輸入物価を高騰させました。これが国内物価に波及し、消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は1月に前年同月比4・2%、2月に3・1%上昇しました。日銀の政策は、内需ではなくコストの増大に起因する不本意な物価上昇を招き、経済を下押ししているのです。
日本共産党の小池晃書記局長は2月13日に国会内で記者会見し、「異次元緩和」への「反省と転換が必要だ」と強調しました。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年4月1日付掲載
白川方明前日銀総裁は、黒田日銀の「金融大実験」が物価や成長に及ぼした影響は小さかったと分析。米国などで物価が高騰したことを念頭に、「(中央銀行は)デフレ(持続的な物価下落)に陥ることの危険性に焦点を当て続けるか、見直すべきだ」と主張。
「異次元緩和」の行き詰まりは深刻。10年間続けても、内需拡大による持続的な2%の物価上昇は起きていません。逆に、経済成長のない中での円安による不本意な物価高騰を招いています。
まさに、異次元緩和への反省と転換が必要です。
【ポイント】
①植田和男氏を次期日銀総裁とする人事案を国会が承認。植田氏は政策継承を表明
②白川方明前日銀総裁が国際通貨基金の季刊誌に寄稿し、金融政策見直しを訴える
③「異次元緩和」は異常円安による不本意な物価上昇を招き経済を下押ししている
4月に日銀新体制が発足します。黒田東彦総裁が10年間続けてきた「異次元の金融緩和」政策の弊害が噴き出す下で、日銀は今後どんな政策をとるのか。関心が高まっています。
格差の拡大も
黒田氏は4月8日に日銀総裁を退任する予定です。政府は、経済学者の植田和男氏を次期総裁候補とし、前金融庁長官の氷見野良三氏と日銀理事の内田真一氏を副総裁候補とする人事案を国会に提出しました。この人事案は、3月10日の参院本会議で自民党などの賛成多数で同意されました。3候補が「異次元緩和」を評価して継続する意向を表明したため、日本共産党は人事案に反対しました。
これに先立ち、2月末に衆参両院の議院運営委員会で植田氏らに対する所信の聴取と質疑が行われました。
植田氏は「2%の物価安定の目標実現にとって(現在の金融政策は)必要かつ適切である」と述べ、「異次元緩和」を継続する意向を示しました。他方、日銀が「いろいろなリスクを抱えていることは事実」と認め、大量に買った株式上場投資信託(ETF)を今後どうするかは「大問題」だと強調しました(2月24日、衆院議院運営萎員会)。また、「(異次元緩和が)所得格差の拡大につながる面がある」ことも認めました。(2月27日、参院議院運営委員会)
所信を述べる植田和男氏=2月24日、衆院議運委
前総裁の訴え
白川方明前日銀総裁は国際通貨基金(IMF)の季刊誌(3月1日公表)に「変化の時」と題して寄稿しました。日銀総裁の交代が迫る中、「金融政策の枠組みを再考する機は熟した」として、中央銀行は物価目標設定など現在の金融政策の基礎となっている考え方を再検討すべきタイミングだと訴えました。
白川氏は、黒田日銀の「金融大実験」が物価や成長に及ぼした影響は小さかったと分析しました。米国などで物価が高騰したことを念頭に、「(中央銀行は)デフレ(持続的な物価下落)に陥ることの危険性に焦点を当て続けるか、見直すべきだ」と主張しました。
反省と転換を
「異次元緩和」の行き詰まりは深刻です。10年間続けても、内需拡大による持続的な2%の物価上昇は起きていません。植田氏は「(金融緩和が)思ったほどの強い効果にならず、(基調的なインフレ率は)2%にはまだ達していない」と述べています。(2月24日、衆院議院運営委員会)
他方、「異次元緩和」は日米金利差の拡大から異常円安を招き、輸入物価を高騰させました。これが国内物価に波及し、消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は1月に前年同月比4・2%、2月に3・1%上昇しました。日銀の政策は、内需ではなくコストの増大に起因する不本意な物価上昇を招き、経済を下押ししているのです。
日本共産党の小池晃書記局長は2月13日に国会内で記者会見し、「異次元緩和」への「反省と転換が必要だ」と強調しました。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年4月1日付掲載
白川方明前日銀総裁は、黒田日銀の「金融大実験」が物価や成長に及ぼした影響は小さかったと分析。米国などで物価が高騰したことを念頭に、「(中央銀行は)デフレ(持続的な物価下落)に陥ることの危険性に焦点を当て続けるか、見直すべきだ」と主張。
「異次元緩和」の行き詰まりは深刻。10年間続けても、内需拡大による持続的な2%の物価上昇は起きていません。逆に、経済成長のない中での円安による不本意な物価高騰を招いています。
まさに、異次元緩和への反省と転換が必要です。
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