きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

陥穽(かんせい)ファンド 危ない大学改革⑤ 科学者が“危険な職業”に

2024-04-29 07:13:17 | 政治・社会問題について
陥穽(かんせい)ファンド 危ない大学改革⑤ 科学者が“危険な職業”に


ペンシルベニア大学のM・スーザン・リンディー教授の著書『軍事の科学』の「隠れたカリキュラム」の章には、研究と軍事機密の板挟みになった米ソ冷戦下の米国の科学者の異様な習性が紹介されています。
ある研究者は、同僚との飲み会、学生との応答、電車、教会のなかでも「四六時中、用心を怠らない方法」を身につけたと回想。別の研究者は、家族や同僚にうそをつくことを学んだと打ち明けます。隠れたカリキュラムには、秘密保持に関するセキュリティー・クリアランス(適性評価)に合格するための受け答えの仕方も入っていました。
公開と共同で成り立つ科学の営みがゆがめられ、厳しい監視や重い刑罰と隣り合わせだった時代。「専門家であることは危険だった」とリンディー教授は強調します。



◆軍事研究に大学ファンド活用を求める意見も
2022年10月20日の「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」の議事録から作成

予期せぬ「機密」
同書の日本版の監修を務めた河村豊・東京工業高等専門学校名誉教授は、民生技術や戦闘の支援にかかわる後方装備の重要性が高まるもとで、核兵器開発などに機密情報が限定されていた冷戦期とは異なり、研究者自身が予期しない形で研究内容が重要軍事技術になったり機密情報になったりする可能性があると指摘。「社会学や心理学のような文系の学問も含めて、軍からすれば全ての研究が重要な軍事機密の候補になる。専門家であることの危険は過去の話ではない」と語ります。
河村氏は背景として、直接戦闘に用いられる「正面装備」と「後方装備」の米軍での比率が1945年の4対6から91年には2対8に、21世紀に入ると1対9に変化したとする研究を紹介。「後方装備」の中身も冷戦期の軍用特注品から既成市販品に置き換わってきたことが、軍と研究者との距離を縮めることにつながっているといいます。

軍事研究が加速
岸田政権は今国会で研究者や技術者など広範な民間人に適性評価の網をかぶせる経済秘密保護法案の成立を目指し、軍事研究の禁止を宣言した日本学術会議への攻撃も執拗(しつよう)に続けています。
さらに10兆円の大学ファンドと昨年末に改悪された国立大学法人法が組み合わされることで、軍事研究の流れが加速するとの懸念があります。大学ファンドの支援を受ける国際卓越研究大学(卓越大)と東大など国立大学5法人に設置が義務づけられる最高意思決定機関「合議体」で、政府や産業界に近い学外委員が学長以上の権力を握れば、大学ごとに定めている軍事研究禁止の縛りを外せとの圧力が強まりかねないからです。
2022年10月に官邸で開かれた「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」で山口寿一読売新聞社長は、軍事研究に大学予算を重点配分すべきだとし、そのために大学ファンドを活用するよう主張。政府の総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の上山隆大常勤議員は「相当慎重に対応する必要がある」としつつ、軍事産業と科学者が深いかかわりを持つ米国を「有り得べき一つのモデル」とし次のように述べました。
「そのような状態をどうつくっていくか。国民の皆さまと一緒に考えながらコンセンサス(合意)をつくっていくことが最大の試練だし、CSTIとしてやるべき仕事だ」
憲法が定める学問の自由の保障として大学自治を再生させるのか、米国の軍事戦略に沿って軍事研究の拠点へと変質させるのかが、大学ファンドをめぐって鋭く問われています。(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年4月27日付掲載


ある研究者は、同僚との飲み会、学生との応答、電車、教会のなかでも「四六時中、用心を怠らない方法」を身につけたと回想。別の研究者は、家族や同僚にうそをつくことを学んだと打ち明けます。隠れたカリキュラムには、秘密保持に関するセキュリティー・クリアランス(適性評価)に合格するための受け答えの仕方も入っていました。
河村豊・東京工業高等専門学校名誉教授は、「社会学や心理学のような文系の学問も含めて、軍からすれば全ての研究が重要な軍事機密の候補になる。専門家であることの危険は過去の話ではない」と。
憲法が定める学問の自由の保障として大学自治を再生させるのか、米国の軍事戦略に沿って軍事研究の拠点へと変質させるのかが、大学ファンドをめぐって鋭く問われています。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 陥穽(かんせい)ファンド ... | トップ | コロナ後遺症 立ち上がった... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

政治・社会問題について」カテゴリの最新記事