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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

「骨太の方針」を読む① 医療 マイナ保険証強制・病床削減

2024-07-08 07:23:26 | 政治・社会問題について
「骨太の方針」を読む① 医療 マイナ保険証強制・病床削減

岸田政権は6月21日、「経済財政運営と改革の基本方針2024」(骨太の方針)を閣議決定しました。
「財政健全化」の名目で社会保障分野を中心に歳出を削減する方向を打ち出し、国民向けの歳出を標的とした切り捨ての方策を並べています。社会保障分野を中心に「骨太の方針」を4回に分けて分析します。

「骨太の方針」では、政府を挙げて医療DX(デジタル化)を推進するとしています。その柱の一つが、現行の健康保険証の新規発行停止(12月2日)とマイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」への移行です。
マイナ保険証は医療機関や薬局に設置されたカードリーダーで患者本人かどうかを認証する「オンライン資格確認」を行います。
政府はマイナ保険証の利用促進を狙いますが、利用率は5月時点で7・73%と低迷。利用者数の伸び悩みは、健康保険証と別人のマイナンバーが誤ってひも付けされたなど相次ぐトラブルが原因とされています。
マイナ保険証への移行は、患者も窓口で働く職員にとっても不利益をもたらします。同方針では医療DXに関連するシステム開発などについて「国が責任をもってガバナンスを発揮できる仕組みを確保する」とし、あくまでもマイナ保険証への移行に固執しています。政府は開き直りをやめ、国民からの起こっている反対の声を受け止めるべきです。



「マイナ保険証を強制するな」とアピールする緊急アクション参加者=2022年12月3日、東京・新宿駅東口

治療の制限も
病床削減を進める「地域医療構想」も政府の狙いの一つです。
同構想は医療費削減を狙う自公政権が、2016年度までに全都道府県に策定させたもので、25年時点の病床の“必要数”を4機能(高度急性期、急性期、回復期、慢性期)ごとに推計。高度急性期・急性期病床は全国の積み上げで15~25年の間に約25万床も減らします。
病床削減は医療機関の再編・統合を通じて行われます。厚労省は人口減少を理由に病床削減を正当化しますが、都市部への集約や医療機関の統廃合が進めば交通手段に乏しい高齢者をはじめ周辺住民は、ますます入院医療にアクセスしづらくなります。
コロナ禍で起きた医療体制の逼迫(ひっぱく)で、政府は方針を転換。入院対応が基本だった新型コロナ感染者を自宅療養としました。呼吸困難に陥った高齢者の治療に制限がかかるなど「命の選別」が現実化しました。公的医療の縮小で国民の健康と命が危険にさらされたのです。

医療費を抑制
同方針では、創薬力の強化やヘルスケアを押し出していますが、その内実は医薬品並びに医療費の抑制に他なりません。「医薬品の革新性の適切な評価も含め、検討する」、「休薬・減薬を含む効果的・効率的な治療に関する調査・研究を推進し、診療のガイドラインにも反映していく」としていますが、処方は医者の権利であり、国が指図すべきものではありません。
また、「スイッチOCT化(市販薬化)」でのセルフケア・セルフメディケーションの推進や薬剤自己負担の見直しについて引き続き検討を進めるとしていますが、患者の自己判断で隠れた病気に気付かず重症化することもあり得ます。安易に一般薬を増やすことは、医療費負担増にもつながります。見直しが求められます。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年7月7日付掲載


「骨太の方針」では、政府を挙げて医療DX(デジタル化)を推進するとしています。その柱の一つが、現行の健康保険証の新規発行停止(12月2日)とマイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」への移行。
病床削減を進める「地域医療構想」も政府の狙いの一つです。
都市部への集約や医療機関の統廃合が進めば交通手段に乏しい高齢者をはじめ周辺住民は、ますます入院医療にアクセスしづらくなります。

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検証 財界主導の大学改革④ 地方の進学機会さらに奪う

2024-07-06 07:06:39 | 政治・社会問題について
検証 財界主導の大学改革④ 地方の進学機会さらに奪う

将来社会を見据えた高等教育のあり方について文部科学相から諮問を受けた中央教育審議会の特別部会は、将来の大学進学者数を推計しています。急速な少子化をふまえると、この間の進学率の伸び率を加味しても、現在64万人の大学進学者数は2040年に51万人へ減少、50年までの10年間にわたり50万人前後で推移するというものです。自民党の提言は、こうした推計をふまえて定員「規模」の適正化を求めています。
しかし、中教審の推計は、今の高学費・低奨学金を前提にしており、都市部と地方、男女の進学格差はそのままです。大学進学率(22年度)は、東京で77%、京都で71%に達していますが、岩手は40%、鹿児島は42%にとどまっています。東京と岩手では37ポイントもの差があります。男性が59%に対し女性は53%にとどまっています。この格差を埋めるためには経済的支援の抜本的強化が不可欠です。それぬきに定員を減らせば、格差が残るどころか、むしろ拡大する危険すらあります。

要求はあるのに
現在、定員割れの私立大学は320校、全体の53%に達しています(23年度)。とくに三大都市圏を除く地方の中小規模の私立大学のほとんどが定員割れとなっています。自民党の提言は、定員割れ大学への私学助成の削減などのペナルティー強化を示唆しており、これでは、大学進学率の低い地方の私大をつぶし、地方の大学進学の機会をさらに奪うことになります。
中教審の特別部会では大森昭生副部会長が、定員割れの大学への見方を転換し、地域社会の基盤を支えている重要なインフラと位置づけるよう提案しています。具体的には、現在は規模に応じて配分している私学助成を、中小大学により手厚く支援できるように、同額を一律に配分したうえで規模に応じて配分する2段階方式に変えることや、定員割れ大学に対するペナルティーを廃止することなどです。こうした改革こそが求められています。
そもそも高等教育は、市民とりわけ若者の、知的探求の自由、知る権利、職業選択の自由を含めた学び成長する権利を満たすための社会の営みです。NHKの「日本人の意識」調査でも国民の高等教育への要求はますます高まっています。(グラフ)




学び直し需要増
経済成長、学術・文化、科学・技術の発展を背景として、社会人が大学で学び直す要求も高まっています。先進国では、社会人入学が定着しています。高等教育機関への入学者の平均年齢は、最も高いスイスが24・7歳、経済協力開発機構(OECD)諸国の平均が21・9歳なのに対し、日本は18・4歳で最も低くなっています。日本の修士課程の進学率は7・4%で、OECD平均の20・4%の約3割にすぎません。博士課程の進学率は0・7%で、OECD平均の1・5%の半分にとどまっています。社会人入学や大学院への進学を阻んでいるのは高学費です。
日本で学ぶことを希望する留学生も増えています。とくに、日本の過去の侵略戦争と植民地支配に対する反省をこめて、国際貢献を果たすという見地からアジアから留学生を迎え入れることは重要な意味があります。
高まる国民の高等教育への要求にこたえるためにも、社会人、留学生に門戸を開くためにも高等教育の無償化は必要です。中教審は、将来社会を見据えた高等教育のあり方を検討するというのなら、財界に忖度(そんたく)することなく、憲法が定めた教育を受ける権利を保障する立場から、国際人権規約の無償教育の漸進的な導入についての長期的な計画を検討すべきです。(おわり)
(土井誠 党学術・文化委員会事務局長)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年7月5日付掲載


中教審の特別部会では大森昭生副部会長が、定員割れの大学への見方を転換し、地域社会の基盤を支えている重要なインフラと位置づけるよう提案。具体的には、現在は規模に応じて配分している私学助成を、中小大学により手厚く支援できるように、同額を一律に配分したうえで規模に応じて配分する2段階方式に変えることや、定員割れ大学に対するペナルティーを廃止することなど。こうした改革こそが求められています。
そもそも高等教育は、市民とりわけ若者の、知的探求の自由、知る権利、職業選択の自由を含めた学び成長する権利を満たすための社会の営み。NHKの「日本人の意識」調査でも国民の高等教育への要求はますます高まっています。(グラフ)
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検証 財界主導の大学改革③ 高等教育ゆがめる「質」確保

2024-07-05 07:08:18 | 政治・社会問題について
検証 財界主導の大学改革③ 高等教育ゆがめる「質」確保

自民党の教育・人材力強化調査会の提言(5月23日)は、大学への「手厚い支援」を「単なる高等教育機関の延命につなげるのではなく、高等教育機関の質を確保」するように「厳格な評価」を行う必要があるとしています。
自民党の提言に強い影響を与えているのが、大学教育改革についての経団連の2022年1月の提言です。同提言は、少子化のもと定員充足のために学生を実質無試験で入学させていることは、「教育の質が担保されていない」として、大学の淘汰(とうた)を求めています。定員を絞り、「足きり」によって「質を確保」しろとの主張です。
自民党のいう「質」とは、財界が求める「質」であり、それを確保できない大学は「厳格な評価」によって切り捨てられます。




定員割れに罰則
自民党の提言は、「質の高い高等教育の実現に向けた規模の適正化」をはかるとして「教育の質を保障できない高等教育機関の撤退の促進」「私学助成のメリハリ付け」などを掲げます。現在も定員割れの私立大学には国庫助成の減額・不交付、新学部・新学科申請での制限、修学支援新制度からの除外などのペナルティーがあります。財界の要求にこたえ、これらをさらに強化する方針です。
「教育の質」を定員割れかどうかで測るのは誤りです。文部科学省も「定員充足の状況のみが私立大学等の教育の質をあらわすものではない」と答弁しています(18年6月6日、衆院文科委)。定員未充足は、国の適切な財政支援があれば、少人数教育によって教育の質を高める機会にもできます。
23年度の大学・短大・高専の進学率は62・1%に達し、専門学校も含めると84%です。日本の高等教育は、いわゆるエリートだけでなく、高度に発達した社会に適応しうる国民を育成する機能を持つユニバーサル(普遍的)段階に達しつつあると言われています。「足きり」で「質を確保」するのは進学率が低かった段階の発想です。
今、求められているのは、自主的・主体的な学びや学生・教員間の双方向的コミュニケーションの充実など、一人ひとりが学び成長する権利を大切にする教育の質です。

財界求める人材
財界が求めるもう一つの「質」は、自らが求める人材養成への「改革」です。
経団連は提言で、「経済界が求める人材像と採用動向」などを示し、「学修者本位の学び」の実現に必要な制度改革として、大学設置基準の見直しを求めました。自民党の提言は、教育研究の「質」の高度化として「学修者本位の教育」のさらなる推進をかかげます。
これは財界が求める人材養成のための「改革」です。
経団連の「学修者本位の学び」とは、財界が求める「即戦力」の養成に必要な単位だけを履修して卒業できるように大学のカリキュラムを見直すことです。
「人格の完成」という教育の目的を学位取得に矮小(わいしょう)化し、就職予備校化するものです。
実際、「学修者本位」を掲げた22年10月の大学設置基準改定は、専任教員を非正規雇用に置き換えることを可能にし、「原則」備えなければならないとしていた運動場と体育館を「必要に応じて」とするなど、教育研究の質の低下を招きかねない規制緩和でした。
大学は「学術の中心」(学校教育法)であり、一般教育、専門教育、職業訓練とともに専門的研究を目的とします。「学修者本位の教育」は、学術の中心としての大学のあり方を、財界本位にゆがめる危険があります。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年7月4日付掲載


自民党のいう「質」とは、財界が求める「質」であり、それを確保できない大学は「厳格な評価」によって切り捨てられます。
23年度の大学・短大・高専の進学率は62・1%に達し、専門学校も含めると84%。日本の高等教育は、いわゆるエリートだけでなく、高度に発達した社会に適応しうる国民を育成する機能を持つユニバーサル(普遍的)段階に達しつつあると。
今、求められているのは、自主的・主体的な学びや学生・教員間の双方向的コミュニケーションの充実など、一人ひとりが学び成長する権利を大切にする教育の質。
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検証 財界主導の大学改革② 公費負担による無償化こそ

2024-07-04 07:17:38 | 政治・社会問題について
検証 財界主導の大学改革② 公費負担による無償化こそ

自民党の教育・人材力強化調査会の提言(5月23日)は、「人への投資」の拡充を強調し、「教育コストの増加を踏まえて、国立大学の授業料の適正化」を求めています。その狙いは、文部科学省の中央教育審議会が今年度中に出す高等教育の在り方に関する答申で新自由主義的な「受益者負担主義」を強め、国立大学の授業料を値上げし、私立大学の学費値上げを誘導することにあります。

学費値上げ限界
しかし学費値上げは限界に達し、国民世論はむしろ教育無償化を求めています。政府の「こども未来戦略」(2023年12月22日閣議決定)が強調しているように、夫婦が理想のこども数を持たない理由で最も高いのは「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」です。「日経」アンケートでも、少子化対策の1位は「大学までの学費無償化」でした(6月6日付電子版)。
自民党の提言は、「我が国は、人口減少問題という最大の課題に直面している」として少子化対策を強調しているのに、授業料の無償化は、“授業料を家計負担から公費負担としているにすぎない”とし、家計負担が異常に重くなっていることを不問にして教育無償化を否定しています。
そもそも「受益者負担」といって、学生に教育費を負担させる道理はありません。教育を受けることは、憲法で保障された国民の権利であって、憲法は教育を「個人的な投資」とはとらえていません。学生は、教育を受けることによって人格を完成させ、人間として全面的に発達する可能性を得ることができます。だからこそ、教育は社会権の重要な一つとして、国民に保障されているのです。この権利を保障することは、社会全体に利益をもたらします。欧州では、社会人が仕事から離れて大学で学ぶことは、社会全体の利益をもたらすので、教育費を公費で負担する無償教育が当たり前になっています。




私学支援強化を
今、日本で求められているのは、大学生の8割近くを擁する私大が果たす公共的役割にふさわしく、私学への国の支援を抜本的に強め、私学の学費を下げることです。学生の学ぶ権利を保障する高等教育機関としては、国立と私立に差異はありません。私大にも国公立大と同様に公費を支出する「公費負担」の原則を確立すべきです。
同時に、無償化に向かうためには、私学助成を増額するとともに、国立大の学費を下げ、私大の学費値下げを誘導する必要があります。国が直接大学の学費を決められるのは国立大の入学料・授業料の標準額だけだからです。東京大学など国立大の学費値上げは、国民が求める教育無償化への逆行であり、なんとしても回避しなければなりません。
自民党は提言で、26年度から授業料後払い制度の本格導入をめざすとしました。後払い制は、卒業後に所得に応じて授業料を支払うもので、「受益者負担主義」にもとついています。入学するときに負担感がなく学費値上げが容易になります。英国では後払い制の導入と同時に授業料が値上げされました。授業料の支払いが結婚、子育て期に重なるため「少子化対策」としても逆行しています。
日本政府は、12年に国際人権規約の高等教育の漸進的無償化条項の留保を撤回し、国際社会に対して高等教育を段階的に無償化すると公約しました。中教審は、今こそ「受益者負担主義」の誤りを認め、高等教育の段階的無償化の実現を盛り込むべきです。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年7月3日付掲載


しかし学費値上げは限界に達し、国民世論はむしろ教育無償化を求めています。政府の「こども未来戦略」(2023年12月22日閣議決定)が強調しているように、夫婦が理想のこども数を持たない理由で最も高いのは「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」。「日経」アンケートでも、少子化対策の1位は「大学までの学費無償化」。
今、日本で求められているのは、大学生の8割近くを擁する私大が果たす公共的役割にふさわしく、私学への国の支援を抜本的に強め、私学の学費を下げることです。学生の学ぶ権利を保障する高等教育機関としては、国立と私立に差異はありません。私大にも国公立大と同様に公費を支出する「公費負担」の原則を確立すべき。

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検証 財界主導の大学改革① 受益者負担主義で学費高騰

2024-07-03 07:08:15 | 政治・社会問題について
検証 財界主導の大学改革① 受益者負担主義で学費高騰

「学費値上げか、無償化か」―。東京大学が学費値上げを検討していることが明らかになり、学生たちが反対の声をあげています。文部科学省の中央教育審議会では、学費値上げの大合唱が起きています。自民党の教育・人材力強化調査会も「教育コストの増加をふまえて国立大学の授業料の適正化」を提言し、学費値上げを後押ししました(5月23日)。背景には財界の要求があります。
(土井誠 党学術・文化委員会事務局長)

学費値上げの大合唱の急先鋒(せんぽう)となったのは伊藤公平・慶応義塾長でした。中教審の高等教育のあり方に関する特別部会で、国立大学の授業料を約54万円から150万円程度に値上げして、私立大学との公正な競争環境をつくるべきだと提案しました。伊藤氏は私立大学への公財政支出が学生1人当たり18万円にすぎず、国立大学には約13倍の229万円を支出していると問題にしています。
1975年の私立学校振興助成法成立時の全会一致の国会の付帯決議では、経常費2分の1の補助の速やかな達成を目指すとされました。しかし、経常費補助は11・4%にとどまっています(2022年度)。公正というなら、なぜ私大への公財政支出を増やすことを求めないのでしょうか。




予算増認めない
伊藤氏の主張は、「イコールフッティング」(競争条件の平等化)を求め、高等教育予算の増額を認めない財界の主張そのものです。経団連は、01年6月の提言「科学技術戦略の変革に向けて」で、国立大学の独立行政法人化とともに、私立大・国立大のイコールフッティングを要求。22年1月の大学教育改革の提言でも、私大にも国立大学にも“自らの努力と裁量で外部資金の獲得を拡大しろ”と迫るのみで、政府に対して高等教育の予算増は求めていません。
そもそも、大学予算を抑制し、学費を高騰させた原因は、財界が1971年に持ち込んだ「受益者負担主義」にあります。
戦後、憲法の教育を受ける権利を保障するために、教育費負担の原則は「設置者負担主義」(学校教育法第五条)とされ、国の財政責任を明確にしました。

先進国最低水準
ところが、財界が「教育は投資だ」と主張し、それによって「利益」を得る学生が学費を払うのは当たり前だとして、中央教育審議会答申に「受益者負担主義」を持ち込みました。これにより、国立大学の授業料は71年の1万2千円から、2005年には53万5800円(標準額)へと45倍に高騰しました。私大の授業料(平均)は同期間に9万610円から95万9205円へと10倍化しました。学費値上げにより、大学の経常費における家計負担が増え続け、家計が国よりも多く負担する逆転現象がおきました。
このため、日本の高等教育予算は先進国の中で最低水準に陥ったのです。高等教育機関に対する公財政支出はGDP比でわずか0・5%にすぎず、経済協力開発機構(OECD)平均0・9%の約半分です。逆に、私費負担は0・9%で、OECD平均0・5%の倍近くになっています。
これが日本社会にさまざまなゆがみをもたらしています。財界主導の大学改革を転換させるときを迎えています。
(つづく)(4回連載です)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年7月2日付掲載


学費値上げの大合唱の急先鋒(せんぽう)となったのは伊藤公平・慶応義塾長。中教審の高等教育のあり方に関する特別部会で、国立大学の授業料を約54万円から150万円程度に値上げして、私立大学との公正な競争環境をつくるべきだと提案。
伊藤氏の主張は、「イコールフッティング」(競争条件の平等化)を求め、高等教育予算の増額を認めない財界の主張そのもの。
戦後、もともとは憲法の教育を受ける権利を保障するために、教育費負担の原則は「設置者負担主義」(学校教育法第五条)とされ、国の財政責任を明確。それが「受益者負担」に変質。
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