司馬遼太郎の『この国のかたち4』を読みました。
司馬遼太郎が日本の歴史のあれこれについて、思うがままに書いていくこのシリーズ、この4巻では「統帥権」についてかなりの紙数を割いて書いています。明治維新で立ち上がった新政府は、政府軍を持っていませんでした。そこで薩長から武士を出させてとりあえずの政府軍を俄かに拵えました。長州の山縣有朋がこれを率いて、薩摩からは西郷隆盛を陸軍大臣として担ぎました。
西郷隆盛は新政府のやり方に違をとなえて政府を去るのですが、その際に薩摩の武士たちは西郷と行動を共にします。政府軍の帽子を堀に投げ捨てて東京を去りました。この軍には統帥がまったく及んでいなかったわけです。司馬さんは大学生時代に陸軍に招集されて戦車兵として満州に送られました。その後本土防衛のために新潟に配置換えされた時に終戦となって、九死に一生を得ました。このことがよほど彼の根底にあるのか、このシリーズでは繰り返し昭和の軍部の暴走を糾弾する記述があります。司馬さんが生きていたら、昨今の状況をどう判断するか聞いてみたいです。