司馬遼太郎の『歴史を紀行する』を読みました。
歴史小説家司馬遼太郎が、日本各地を旅して、紀行風土が生まれ育った人にどのような影響を与えたのかを探っていく随筆です。司馬遼太郎には、街道を行くという膨大な紀行シリーズがありますが、本書はそれに先駆けて書かれた作品です。大阪、鹿児島、会津若松など、各地を巡り、独自の視点でそれぞれの土地の人々の特性を語ります。
鹿児島については、大きな驚きとともに語っています。薩摩隼人の剽悍で勇猛なことは有名ですが、その開明的な政治感覚や鮮やかな外交手腕についても、日本人離れしていると讃えています。関ヶ原の合戦で、西軍につきながら領地を全く削られずに済んだ事や、幕末における臨機応変な動きなど、鹿児島人の素晴らしさであると司馬さんは語ります。一方で、貧乏くじを引いたとしか言いようのない会津藩のことも同情を持って語っています。