黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『メグル』乾ルカ(東京創元社)

2010-03-26 | 読了本(小説、エッセイ等)
H大学に通う大学生の高橋健二が、学生部奨学係の女性職員・ユウキに押しつけられたバイトは、老婆・木林スミヲの遺体の添い寝だった。
その地域では、手だけ死後硬直がこない状態を“引く手”といい、生きている周囲の人をあの世に引っぱっていくのだという。身内は連れて行かれやすいことから、無関係な大学の人間にバイト頼んでいるのだった。
彼が添い寝をする中、やがてスミヲは起き上がるが、そこへ彼女の孫・美香がいなくなったとの知らせが……『ヒカレル』、
飯島涼子は、ユウキからH大学医学部付属病院内の売店の商品入れ替え作業のバイトを斡旋された。
先日その病院には父が脳出血で運ばれて、一命はとりとめたものの後遺症が残った。
父はその鬱憤で母にあたり、母は飯島に当たるようになった。父と二人きりでいることに耐えられなくなった飯島は勉強を言い訳に逃げたが、そんな中で母が結婚指輪を無くし、病院内のあちこちを探す騒動があったのだった……『モドル』、
バイトを探して学生部にきた高口康夫は、二週間の犬の餌やりで一日一万円を支給するというおいしいバイトを見つけて喜ぶが、ユウキに反対される。その反対を押しきり、何とかそのバイトを決めたが、彼女からは後悔しないようにと釘をさされる。
かくして、向かったバイト先は、猛犬を飼っているという根竜川家。
彼の先輩・小田が同行したのだが、夫人から家族は夫妻と子供2人の4人だと聞いた彼は、何故か不審げな声を上げる。
犬に与えるのは夫人が用意した冷凍の肉だというが、肉の正体がわからず、また犬の姿も見えない……『アタエル』、
ゼリー飲料のゴミを捨てるために学生部にやってきた橋爪啓太は、バイトを斡旋される。業務内容は、食事。
雇用主・佐藤総一郎のマンションの一室に用意される、豪華な食事の数々を食べるだけなのだが、橋爪はある事情から人前での食事を避けていたことから、食べることができなかった。
そのため、苦学生の小泉に譲るが、責任からそのバイトに自分も付き添うことに……『タベル』、
大学職員の大橋冬樹。彼が大学4年だった5年前と同じ依頼がきた。
それは、冬囲いの撤去等の庭仕事。ところがその住所は、彼が住む家のそれだった。しかし依頼人の三瀬みゆきは自分の家だと主張して……『メグル』の5編収録。

H大に勤める学生部奨学係の、ミステリアスな女性職員・ユウキ(悠木)さんが斡旋するバイトにより、さまざまな経験をする人たちを描いた連作短編集。
彼女のいうことを聞かなかった『アタエル』はちょっとアレですが(笑)、それ以外はSF要素を織り込みつつ、ちょっとハートウォーミングな感じのお話でした。

<10/3/26>