【古名「ムラサキシキミ」が紫式部にちなんで転訛?】
クマツヅラ科の落葉低木で、全国の山野に自生し、庭木としてもよく植えられる。高さ1.5~3mで、6~7月頃、薄紫色の小花を付け、10~11月に直径3~5ミリほどの紫色の実がびっしりできる。別名に「ミムラサキ」「タマムラサキ」。学名は「カリカルパ・ジャポニカ」。カリカルパはギリシャ語で「美しい果実」を意味する。野鳥がその実を好んで食べることから「トリムラサキ」や「トリノミ」などとも呼ばれる。
「ムラサキシキブ」は貝原益軒著の「大和本草」(1709年刊行)に「玉ムラサキ」として登場、「京ニテ紫シキミと云、筑紫ニテ小紫と云」と紹介されている。さらに越谷吾山が江戸中期に著した日本初の方言辞書「物類称呼」(1775年刊行)にも「玉紫」として「京にてむらさきしきみといふ」と掲載されている。
それらからムラサキシキブはもともと「タマムラサキ」や「ムラサキシキミ」と呼ばれていたことが分かる。ムラサキシキミの「シキミ」は枝にびっしり実が付いた様を表す「敷実」または「重実」から。そのムラサキシキミが「源氏物語」を書いた紫式部に語呂合わせのように結び付いて「ムラサキシキブ」と呼ばれるようになったらしい。
まれに花と実が白いものがあり「シロシキブ」と呼ばれる。このほか近縁種に小ぶりの「コムラサキ(別名コシキブ)」、大型の「オオムラサキシキブ」、四国や九州に分布する「トサムラサキ」「ビロードムラサキ(別名オニヤブムラサキ)」などがある。ムラサキシキブとコムラサキは混同されやすく、ムラサキシキブとして園芸店などで出回っているものの多くはコムラサキといわれる。区別する1つの方法は葉の縁のギザギザ。ムラサキシキブにはこの鋸歯がほぼ葉全体にある。
「トサムラサキ」は環境省の絶滅危惧Ⅱ類に分類されている。「コムラサキ」も岩手県で絶滅したとみられ、長野や千葉、山形、大阪、三重など8府県で絶滅危惧種(Ⅰ類またはⅡ類)に指定されている。ムラサキシキブの季語は秋。「むらさきしきぶ熟れて野仏やさしかり」(河野南畦)。
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