【NHK文化センター主催のフォーラムで講演】
サッカー・ワールドカップ(W杯)ブラジル大会の開幕まで約80日。日本は1次リーグを突破できるのか? 優勝候補はどこか? 22日けいはんなプラザ(京都府精華町)でオムロン文化フォーラム(NHK文化センター京都支社主催)が開かれ、元NHKアナウンサーでJリーグ特任理事、山本浩氏(法政大学スポーツ健康学部教授)が「世界で勝つ日本の計算式~サッカーW杯を前に~」と題して講演、「勝負は情報戦、コンディショニング戦という見えないところで動く」などと話した。
山本氏はまずオフト監督以降の歴代日本代表監督の戦いぶりを振り返った。1994年のW杯出場権を逃した〝ドーハの悲劇〟は現地から実況中継した。当時の日本チームのコンディションは良くなかったという。「選手たちがドーハに着いたときには疲労困憊(こんぱい)しヘトヘトの状態だった」。試合後、祝勝会が予定されていたオフト監督のホテルのスイートルームで、ビールを放心状態で飲む選手たちの姿が忘れられないそうだ。
W杯は通常「中4日」で試合が組まれる。それだけに「試合の合い間の作り方が重要になる」。2010年W杯1次リーグでは「中4日の練習を軽くすべし」というトレーナーの提言を受け入れて練習メニューを組み立てた。その結果、グループ2位の2勝1敗で決勝トーナメントに進出、ベスト16となった。「負荷を下げて選手たちの心身の状態をベストに保ったことが勝利につながった」。
相手チームの情報分析も欠かせない。2011年女子W杯ではなでしこジャパンがアメリカとのPK戦をGK海堀あゆみの活躍で破り頂点に立った。日本側は事前に過去のアメリカチームのPK戦をチェックし、海堀には相手の蹴る順番と方向が書かれたデータが渡されていたそうだ。その結果、海堀は1人目を止め、動揺した2人目のミスを誘い、さらに3人目も止めた。
山本氏は日本がW杯で活躍するにはポイントを稼いでFIFAのランキングを上げる必要があると指摘する。「(強い)欧州勢との試合数を増やすなどしてポイントを積み上げ、世界のトップ8に入るとシード国になれる。だが現実にはなかなかランキングが上がらない」。日本は現在48位。1次リーグで当たるコートジボワール(24位)、ギリシャ(13位)、コロンビア(5位)はいずれも日本より上位。
1次突破はなかなか容易ではなさそうだが、「これから2カ月半、けが人を出さずチーム状態が順調に仕上がるかどうかで決まる」。今回のW杯でキーマンとみられているのが本田圭佑。「本田はピッチの中にいる監督のような存在。ドーハの悲劇のときのラモス選手と同じような立場にいる。本田がザッケローニ監督とうまくいけばいいが……」。
右膝負傷の長谷部誠が間に合わない場合、誰がキャプテンを務めるのか。「(ドイツで活躍中の)細貝萌が長谷部とよく似たタイプでベンチ・選手の信頼も厚い。イタリア語でザッケローニ監督と直接話せる長友佑都の可能性も大いにあるだろう」。優勝争いは試合日程も大きく影響しそうと山本氏はみる。1次リーグ最終戦から決勝トーナメントの日程をみると、ブラジルにゆとりがあるのに対しドイツは「中3日」が入るなどかなり厳しいという。(この日の講演はNHKラジオ第二で5月18日午後9~10時に放送の予定)
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