【満開! アジサイ・ハナショウブ・ハンゲショウ…】
平安遷都1100年を記念して1895年(明治28年)に創建された平安神宮(京都市左京区)。社殿を国の名勝に指定されている「神苑」がぐるっと囲む。明治の造園家、7代目小川治兵衛が作庭した池泉回遊式庭園だ。神苑が整備された日を記念して毎年6月13日は無料公開。今年は「平安蚤の市」と重なって、神苑も参道も多くの観光客で大賑わいだった。(写真は東神苑の「泰平閣」)
神苑は南・西・中・東の4つの区画からなる。広さは約3万3000㎡と壮大。神苑の入り口は正面の大極殿(外拝殿)の左側、白虎楼のすぐそば。「南神苑」に入ると「八重紅枝垂桜」の案内板が立っていた。谷崎潤一郎の『細雪』にも登場する。高峰秀子の回想記によると、谷崎は毎年ここの紅枝垂れ桜を見るのを最も楽しみにしていたという。見ごろは4月上旬~中旬。桜は時期外れだが、その代わりアジサイが満開で、小川ではハンゲショウ(半夏生)が群生し白と緑のコントラストが目を惹き付けた。
南神苑にはもう一つ見どころがあった。庭園の中にあってちょっと異色の「京都市交通局二号電車」。約110年前の1911年(明治44年)に製造された国内で現存最古の路面電車で、車体は梅鉢鉄工所の製作、電動機は米ゼネラル・エレクトリック社製。3年前の2020年9月に国の重要文化財に指定された。
「西神苑」では白虎池の周りを埋め尽くすハナショウブがちょうど満開を迎え、池の中ではハスも白やピンクの花びらを天に広げていた。ハナショウブの種類は約200種、株数は2000株にも上るそうだ。スイレンの仲間のコウホネ(河骨)も数輪咲いて、黄色の花が目にも鮮やかだった。
本殿背後の回遊路を進むと「中神苑」。一番の見どころは「臥龍橋」だ。池の南北を点々と配置された円筒形や長方形の石でつなぐ。その橋のたもとには幹が池にせり出した松の古木。橋の名はてっきりその松の樹形に由来すると思ったが、見当違いだった。池に浮かべた石が龍の臥す姿をかたどっているからとのこと。使用された石材は豊臣秀吉が造営した三条大橋と五条大橋の橋脚部分という。
「東神苑」は神苑の中で最も大きな栖鳳池を中心とし東山を借景とする。1912年に京都御所から移築された泰平閣は神苑を象徴する観光スポット。池を横断する長い建物で「橋殿」という異名もある。回廊内は両側が長いベンチ状になっており、庭園巡りを楽しんだ観光客が心地良い風に当たりながら休んでいた。橋殿を渡ってすぐ北側の池のほとりには尚美館(貴賓館)が立つ。こちらも京都御所からの移築。桜の季節にはこの建物の周りも紅枝垂桜が咲き誇るそうだ。
(下の写真は「平安蚤の市」でにぎわう参道)
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