【日本の焼き物の流れを辿る多彩な作品90点】
大和文華館(奈良市)で日本の焼き物の流れを、時代を追って辿る展覧会「豊かなる日本のやきもの―縄文から江戸まで―」が開かれている。縄文土器に始まって古墳時代の埴輪、古代の須恵器、中世の焼き締め陶と施釉陶、桃山時代の茶陶、そして繊細に絵付けされた江戸時代の色絵陶器へ。それぞれの時代を代表する作品群を通して、改めて焼き物の変遷をじっくり味わうことができる。8月16日まで。
展示品の中で最も古いのは縄文時代中期の「縄文大壷」。この壷は高さが76cm、口径が57.5cmもある。埴輪の「鷹狩男子像」は群馬県出土、「男子立像」は茨城県出土で、ともに重要文化財。「鷹狩男子像」は左手に鷹が止まり、腰に剣を差す。冠をかぶり髪を美豆良(みずら)に結っており、その優しい表情は一見女性にも見える。(上の写真は㊧室町時代の信楽焼「檜垣彫文壺」、㊨江戸中期の有田焼(柿右衛門様式)「色絵菊花文八角瓶」)
奈良時代に入ると釉薬をかけた施釉陶が登場する。展示作品「二彩碗」は唐三彩を模したもので、白釉の上に緑釉をかけた薄手の碗。金繕(きんつくろい)部分に「松民補綴」の銘が入っている。小川松民(1847~91)は明治時代前半に蒔絵師として活躍した。中世になると各地で素朴かつ力強い締め焼き陶が次々に生まれた。会場には日本6古窯といわれる常滑、丹波、信楽、越前、瀬戸、備前の灰釉壷や茶碗、徳利などが並ぶ。
桃山時代に入ると、茶の湯の隆盛とともに茶陶づくりが盛んに。歪んだ形や斬新な文様が好まれ、楽焼や美濃の志野、織部、さらに萩焼、唐津焼、高取焼などが生まれた。江戸時代になると高温で硬く焼成した磁器が誕生、同時に絵付けの技術も発達した。会場には初期伊万里や古九谷様式、柿右衛門様式の有田焼がずらりと並び、色鮮やかな色絵磁器が来場者の目を引いていた。
色絵陶器を得意とし京焼の大成者といわれるのが野々村仁清。その作品「色絵おしどり香合」(写真㊧)は高さ5.1cm、長さ6.5cmという小さなものだが、その中に高度な技術が凝縮する。1657年作で、近衛家への献上品と伝わる。青木木米も京焼の名工の一人。「黒地色絵瓜桃文鉢」(㊨)は木米が金沢に招聘されて春日山窯を築いたときの代表作。木米は南画家としても活躍した。この作品では見込みに桃、側面の内外に瓜を配しており、大胆な構図の中に気品と温かみがあふれる。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます