【草丈1m・花穂20cmにも 全草に有毒成分】
ユリ科シュロソウ属の大形多年草。本州中部以北と北海道の高山帯~亜高山帯の湿地に自生し群落をつくる。花が梅に、葉が(ラン科のシラン)に似たバイケイソウの小形版ということで「小梅草」の名が付いた。小形といっても草丈は60~100cm、花穂も20cmほどもある。高山植物としてはかなり大形で遠くからでも目立つ。
花期は6月から8月ごろ。茎は直立し、その先の円錐花序に径1cm前後の白い小花をいっぱい付ける。葉は長さ10~20cmの幅広の楕円形。大群落をつくるのは数年に1度といわれ、花の多い当たり年と花の少ない年がある。別名「コバイケイ」。コバイケイソウはバイケイソウと同じく有毒植物。そのため長野県などでは「ハエドクソウ」「ハエコロシ」などとも呼ばれる。
コバイケイソウは『花の百名山』(田中澄江著)で北アルプスの双六岳、『新花の百名山』(同)で会津駒ケ岳、『NHK花の百名山』(山と渓谷社)では中央アルプス宝剣岳を代表する花として紹介されている。伊藤啓子は著書『随想集優しい花々』でコバイケイソウについて「岳人を勇気づけ励ます花でもある」と記す。東海地方だけで見られる変種に「ミカワ(三河)バイケイソウ」。環境省のレッドリストに絶滅危惧Ⅱ類として登録されている。
若葉は一見オオバギボウシ(山菜名ウルイ)やギョウジャニンニクにそっくり。そのため誤食による中毒事故が毎年のように発生、厚生労働省などでも注意を喚起している。有毒成分はアルカロイド系で全草に含まれ、加熱しても分解されない。高山に分布するため登山者による誤食が多いのが特徴だ。2002年春、富山の僧ケ岳で7人のパーティーが採取した山菜類を煮て食べた直後中毒症状を起こし、ヘリコプター2機が出動して病院に搬送される騒ぎになったこともあった。「小梅草行者白雲まとひ来ぬ」(岡田日郎)。(写真は愛知県のS・Eさん提供、白山で)
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