【鹿児島の県木、近縁種のデイゴは沖縄の県花】
マメ科デイゴ属の中高木。南米のブラジルからアルゼンチンにかけて多く分布し、日本には江戸時代末期に渡来した。別名「海紅豆(カイコウズ)」。海を渡ってやって来た紅色の豆というわけだ。つぼみの形はまるでエンドウ豆を赤く染めたよう。学名は「Erythrina Crista-galli」(エリスリナ・クリスタガリィ)。エリスリナは赤い色、クリスタガリィは鶏のトサカを意味する。そう言えば、花の色や形がトサカに似てなくもない。
南国生まれだけあって寒さにやや弱く、関東以西で街路樹や庭木として植えられる。鹿児島県は1966年「カイコウズ」として県木に指定した。気候風土が合うのかよく育ち、南国的な雰囲気も鹿児島にマッチしているというのが理由のようだ。鹿児島から遠く離れた岐阜県南部に「薩摩カイコウズ街道」と呼ばれる道路がある。江戸時代、薩摩藩士が多大な犠牲を払った木曽三川の堤防工事「宝暦治水」の縁で、両県は姉妹県盟約を結び交流を深めてきた。カイコウズ街道はその盟約締結20周年を記念し、約20年前、南濃関ケ原線の道路沿いにアメリカデイゴを植樹したことから、この名前がついた。岐阜には友好の森として「薩摩カイコウズの森」もある。
アメリカデイゴはアルゼンチンで「Ceibo(セイボ)」と呼ばれ国花になっている。花が盛りの時期には「セイボの日」(11月22日)まであるそうだ。隣国パラグアイの国花でもある。種子や樹皮には麻痺作用があるエリスリナ・アルカロイドが含まれ、中南米の先住民アメリカ・インディオは歯痛の治療に用いたそうだ。色鮮やかな深紅色の花は布地の染色に使われ、メキシコでは花がサラダや煮物などとして食用になっているという。
一方、沖縄のデイゴはインド原産で、アメリカデイゴ以上に寒さに弱く沖縄が北限。ただ鹿児島の奄美地方には両方が植えられているそうだ。開花時期はアメリカデイゴが7~9月なのに対し、デイゴは主に3~5月ごろの入学・卒業シーズン。このため琉球大学の合格電報の文面は本土の「サクラ咲く」に代わって「デイゴ咲く」。デイゴの幹は乾燥に強く変形しにくいことから、琉球漆器の材料として使われる。沖縄にはデイゴが花を多くつける年は「台風の当たり年」という言い伝えがある。THE BOOM(ブーム)の代表曲「島唄」はその言い伝えを基に作詞されたのだろう。「でいごの花が咲き 風を呼び嵐が来た……」。作詞・作曲の宮沢和史さんは「ひめゆり平和記念資料館」を訪ねた後にこの「島唄」を作ったそうだ。
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