く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<ヤドリギ(宿木/寄生木)> 半寄生植物、脅威の生存戦略!

2022年05月08日 | 花の四季

【鳥が排泄したネバネバの種子が枝に着生】

 ビャクダン科ヤドリギ属の常緑小低木。その名の通り、ケヤキやエノキ、サクラ、コナラ、ブナなどの落葉樹に寄生する。宿主から栄養や水分を吸い取るが、ヤドリギ自身も光合成を行っているため〝半寄生植物〟と呼ばれる。枝の固まりが樹上でこんもりとした丸い茂みを作って、遠目にはまるで鳥の巣や造り酒屋の杉玉のよう。雌雄異株。2~3月ごろ黄色い小花を付け、初冬に球形の果実を結ぶ。(写真は4月下旬、奈良市の平城宮跡で)

 学名は「Viscum album subsp.coloratum(ビスクム・アルブム(サブスピーシーズ)コロラツム)」。属名はラテン語で「鳥黐(とりもち)」、種小名は「白い」を意味する。その属名が表すようにヤドリギの果実には強い粘り気があり、小鳥などを捕獲するための鳥黐として用いられてきた。亜種名は「色の付いた」。セイヨウヤドリギの果実が白いのに対し、亜種の日本のヤドリギは淡黄色の実を付けることによる。古くから霊力が宿る縁起木とされ、ヨーロッパではクリスマスにヤドリギを玄関などに飾る風習も残っている。仲間に赤っぽい果実を付ける「アカミヤドリギ」と呼ばれる品種もある。

 ヤドリギは種子で増殖するが、寄生植物のため種を地面に蒔いても発芽しない。では高い樹上にどうして根を張ることができるのか。それを手助けするのがヤドリギの実が大好物な野鳥たちだ。中でもシベリア方面から渡ってくる冬鳥のヒレンジャクやキレンジャクの果たす役割が大きい。鳥が食べた実はネバネバして糸状につながって排泄される。その一部が運良く枝や幹にくっ付くと、そこから寄生根を差し込んで発芽する。ヤドリギはスギやヒノキなど針葉樹には寄生しない。その点、落葉樹なら実が熟す時期に葉が落ちよく目立って鳥を呼び寄せやすい。樹上で日の光をたっぷり浴びることもできる。その生存戦略には驚くほかない。

 古名は「ほよ」。万葉集には大伴家持の歌1首が残されている。「あしひきの山の木末(こぬれ)のほよ取りて 挿頭(かざ)しつらくは千年(ちとせ)寿(ほ)くとそ」(巻18-4136)。越中国の国司だった家持が正月の宴で長寿を祈って詠んだ。京都府はヤドリギを絶滅危惧種に指定、自然環境保全課は「寄生した落葉樹は伐採せず残すよう」注意喚起している。最近はヤドリギ探しが静かなブームに。「ヤドリギハンティング」(略してヤドハン)なる言葉も生まれている。「宿木を見つけしこゑの高弾み」(高澤良一)


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