【世界遺産登録20周年の記念展第3弾】
奈良市写真美術館で「入江泰吉 古都奈良の文化財~総集編~」が始まった。本展は「古都奈良の文化財」がユネスコの世界文化遺産に登録されて20周年になるのを記念した3回シリーズの最終回。昨年の第1回記念展では東大寺・春日大社・春日山原始林、第2回は中金堂の落慶に合わせて興福寺を取り上げた。今回は総集編として西ノ京の薬師寺、唐招提寺を中心に東大寺や興福寺、元興寺、平城宮跡なども加え入江作品70点余を展示している。
展示室に入ってまず目に飛び込むのは満開の桜の大木を撮らえた『春の平城宮跡』。桜の花が木全体を覆い尽くし、地面も散った花びらでピンク色に染まる。その背後には奈良時代の大きな建物の基壇跡、さらにその奥には昔と変わらない春日原始林の山並みが広がる。だだっ広いだけのような古の都の跡にもこんな風景があったのかと改めて思い知らされた。(多分あの場所かな?)
薬師寺では創建当時の姿を今に残す東塔が約110年ぶりに全面解体修理中。その東塔を撮った作品も多く並ぶ。『水に映る薬師寺東塔』もその一つ。西塔が再建される前の1967年頃の作品で、西塔の礎石の中にできた水溜りに東塔がくっきりと影を映す。作品発表当時大きな評判を呼び、参拝客の間で水溜りを覗き込むのがはやったそうだ。薬師寺を撮った入江作品には西ノ京大池越しに東西の両塔を遠望したものも多い。入江が〝定点観測の写真家〟といわれた所以である。今展でも池を前面に置いた『夏の薬師寺伽藍』『陽春の薬師寺堂塔』などが展示されている。
入江は朝雪が降っていたら撮影のため一目散に自宅を飛び出していたという。今回も『降雪薬師寺堂塔』『雪の飛火野』『猿沢池雪日』など雪景色の作品が10点近くを占めた。その多くが1970~80年代の作品。それにしても当時はこんなに雪が降っていたのか! とりわけ雪が杉の木立を覆う豪雪のような『春日大社二ノ鳥居降雪』には目がしばし釘付けになった。奈良の冬の風物詩、若草山の山焼きの作品の中では、燃え盛る山焼きの炎を山の上側から撮らえた『若草山山焼き』の迫力に圧倒された。会期は2月17日まで。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます