【南米原産、グランドカバー植物として人気だけど……】
アルゼンチンやペルーなど南米に広く分布するクマツヅラ科イワダレソウ属の多年草。日本には昭和初期に渡来した。常緑性だが、日本では葉を落として越冬する。旧属名(学名)から「リッピア」と呼ばれることも多い。草丈は5~15cmで、茎が横に這って節々から根を下ろし地表を覆うように広がる。繁殖力が旺盛なうえ寒さや踏圧にも強いことから、地被植物(グランドカバープラント)や雑草対策用の植物として人気を集めている。
花期は5~10月頃。白またはピンク色の唇形状の小花がたくさん集まった直径1~1.5cmほどの集合花を上向きに付ける。小花の下唇中央には蜜標の黄色い斑紋。和名は日本の在来種で主に海岸に生えるイワダレソウに似て、花や草丈が小さいことから頭に「ヒメ」と冠した。学名は「Phyla canescens(フィラ・カネスケンス)」。属名は「種族」を意味するラテン語の複数形で、1個の苞葉内に多花が集まることから。種小名は「灰白色の」を意味する。別名リッピアは17世紀のフランスの植物学者名に由来するそうだ。
ヒメイワダレソウによく似た植物に「クラピア」という園芸品種がある。これは宇都宮大学・雑草科学研究センターの講師だった故倉持仁志氏がイワダレソウを品種改良し緑化用地被植物として開発したもの。倉持氏の「クラ」とリッピアの「ピア」からクラピアと名付けられた。ヒメイワダレソウは6年ほど前、福島県内での調査の結果ヒマワリの30倍の放射性セシウムの吸着効果があるとの発表があり、除染を助ける植物として一躍注目を集めた。ただ繁殖力が旺盛なこの植物については一方で生態系への影響も懸念されており、環境省は2015年「生態系被害防止外来種リスト」に〝重点対策外来種〟として掲載した。