【葉の縁には鋸歯、サカキの代用として神事に】
モッコク科(旧分類ツバキ科)ヒサカキ属の常緑樹。北海道を除く各地の山中の雑木林などに自生する。樹高は4~8m。花期は3~4月頃で、壷型の径5mmほどの白い小花を下向きにたくさん付ける。雌雄異株。雄しべが退化した雌花、10~15個の雄しべを持つ雄花のほか両性花もある。花は「プロパンガスのような」と形容される独特の臭気を放つ。葉の縁にギザギザの鋸歯があるのがサカキとの大きな違い。秋に球形の小さな果実が黒紫色に熟す。
ヒサカキはサカキに比べると寒さに強く、関東以北にも分布する。このためサカキに代わって神棚に供えるなど神事に広く使われてきた。サカキはヒサカキなどと区別するため「マ(真)サカキ」「ホン(本)サカキ」と呼ばれることも。ヒサカキの名前の由来には諸説ある。サカキより小ぶりなことを表す「姫(ひめ)サカキ」から転じたとする説や、サカキに似てサカキにあらずを意味する「非(ひ)サカキ」から来たという説など。
ヒサカキはよく分枝し葉が密生して刈り込みに強いことから垣根として植えられることも多い。学名は「Eurya japonica(エウリア・ジャポニカ)」。属名の語源は「広い・大きい」を意味するギリシャ語、種小名は「日本の」を意味する(「ジャポニカ」という学名を持つ植物は他にもスギ、ツバキ、シャガ、アセビ、ヤマブキ、イタドリなど多い)。変種に暖地の海岸近くで見られる「ハマヒサカキ」、屋久島固有の「ヒメヒサカキ」などがある。「あしらひて柃の花や適ふべき」(富安風生)