CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】落英

2017-05-31 20:22:14 | 読書感想文とか読み物レビウー
落英  作:黒川 博行

平たくいえば、刑事モノというジャンルの小説でありました
ミステリとか、サスペンスとか、確かにそういう要素もあるんだが
トリックがとか、迫り来る何かがといったことではなく、
存外淡々と事件を解いていくというか、
起きた事件を洗っていく、刑事の仕事を描いた小説かのような印象で
落ち着くところは、刑事という生き方、
そして、無常といっても差し支えないような
終わりが描かれた物語でありました
面白かったんだけども、小説の中だけの話であってほしい
そう願いたくなるような物語でありました

序盤は、覚せい剤を取り扱う悪党たちを一網打尽とするため、
その周辺の聞き込みや、張り込みを繰り返すことで、
じわじわと全体像を浮かび上がらせて、地道に捜査を行う姿、
この地道さが、なんというか、まったく華々しさがなく、
じっと、クーラーもない寺の部屋から眺めているだとか、
そういうのをやりつつも、今日はぐったりだから飲みに行こうぜとか
特に事件と関係はないのだけども、
刑事たちの仕事とプライベートというほどでもない
サラリーマン的な平日を描いているかのような感じでありまして
物凄く面白いとかじゃないのに、ついつい読みたくなるのでありました

やがて、この覚せい剤話が、思わぬおまけをつれてきて
そこからの展開も面白く、
新しい曲者刑事が出てきたりして、ヤクザとのやりとり、
利権やなんだかんだが見え隠れしながら、
地方に巣食う悪党といえばいいか、利用者たちとのやりとり
そして、知らないうちに、そうせざるを得ないといえばいいのか、
警察組織としての矛盾といえばいいのか、
刑事という仕事はどういうものか
読み終わって考えさせられるそれこれが突きつけられるようで
面白すぎたのでありました
本当に、ありそうな話だなんて思ってしまったんだが
関西に生きている身分として、大阪府警を舞台にしたこの物語は
なかなかどうして、怖いのでありました

よくよく、警察は菊の大門をつけた何某であるというのが
こういうことかもしれないなと
そんな風に思わされた一冊でありまして、
重い話なんだが、それでも、さらっと読めて、楽しかったのでありました

ただ、こういうところに出てくる刑事たちは
どうして、みんなせつな的というか、本当に仕事のために死ぬというか、
どうかしているやつばっかりなんだろうか
それが魅力でもあるのだが、何か、考えさせられたのでありました