CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

青天を衝け  論語と算盤

2021-10-31 22:07:09 | NHK大河ドラマ感想
NHK大河ドラマ「青天を衝け」
視聴完了しておりました
うっかり感想書くのが遅れてしまったんだが
今回も非常に面白い一回だった
もう、大隈は萌えキャラとして売っていけばいいんじゃないか

タイトルの論語と算盤をまさに描いたともいえるのか、
正直読んだことないから中身わかってないんだが、
論語における仁の在り方を朗読するシーンが
すげぇ印象的で、それに対しての三井からの資本主義に対する疑問というのが
いい塩梅で染みた内容で
至極の出来栄えだったんじゃないかと思うところでありました
三井、いや、三野村もいい役どころで、商人らしい、
悪い良いというそれではない、経済に対してどうであったかが
非常に面白い人物でありました
それに加えて、三菱が来週絡んでくるようだし
これもすごい楽しみで、幕末から明治、大正にかけての
財界形成、幕末の色が薄れていく流れというものが見られそうで
楽しみでならんのであります

幕末の色というところで、すっかり政治から身を引いたと
態度で示す慶喜公を筆頭に、西郷さん、大久保さん、そして三野村さんまで死んでしまい
続々と御一新前の人たちがいなくなっていくというのが
この時代のうねりというのを感じるところだなと思うところ
もう二週も三週もそんな感じだけど、大物が死ぬと特にそれを感じるな

そして、横浜焼き討ちのやり直しは
うまいこともってきたなと感激というか、感動してしまった
全然いいことやってねぇというか、この頃から日銀砲は健在だったんだと
やってることが変わらないなと思ったりしてしまったんだけども、
胸がすくといえばいいか、あんまりよかーないが
こういうの必要だよねと思わされて
ドラマだなぁと感じ入ったのでありました
実際にも、ああいう感じだったら、それを支持してしまいそうだわ
結局感動だとか、わけのわからん情動に突き動かされてしまいそうだと
選挙の日に考えさせられてしまったのでありました

あれよあれよとあと二か月、どこまで描いてくれるか
また来週を待つのである

【読書】「ムダ」の省き方

2021-10-30 20:55:02 | 読書感想文とか読み物レビウー
「ムダ」の省き方  著:トーマスガジェマガ

生きていると、あれこれムダが多すぎる、
そのムダがどれかを指摘して、それをなくすことのメリットを
ざらっと並べた本でした
最終的には必要なものを選ぶ方法というか
情報の取り方について語るところで終わるんだが
ムダの害悪について、考えさせられる内容でありました

無駄なものがあるとパフォーマンスが落ちる
これが前提にあり、実際そうなのかもなぁと思ったりもするんだが、
割とよく知られた、時間術ではないけども、
ある程度を割り切ることへの後押しをしてくれるような内容で、
強く推していたのは、ドラム式洗濯機の導入で、
これがあれば洗濯物を干すという作業から解放される、
ついでに、洗濯物はたたむ必要がないという斬新な話も添えられていて
なかなか面白かったのでありました
確かにと思ったりもするんだが、正直洗濯回数が、そんなに多くない俺には
ちょっと、いいなと思うが、導入できない
いや、今住んでいるところが、そもそも、そんな大きな洗濯機置けないからなんだが、
それは住処のほうを変えろという話でもあったんだが
なかなか、ふんぎりがつかないところに
ズバズバくる内容である

まぁ、ブロガーが思ったことを書いたという本なので
正直なところ目新しい話はないというか、
よくある話だなといったところなんだが、
かなり読みやすいのと、著者の実体験に伴って、
書かれている内容が偏っているところが良かったように思うのである
ライフハックと仰々しくいうほどの話でもない、
ちょっとした生活の知恵のようなものでもあるので
取り入れやすいというか、確かにここに書かれているムダなものを
どうしようか悩んでいる人にとっては、
この本によって、捨てられるだろうと思ったりしたのである

ま、実際のところ書かれていたものの結構な内容を
すでに捨てていたので、共感というか、そういうものだよなぁと
安心を得たといった感じで読んだのであるのだが
まだまだ、無駄なものは数多く抱えているのは間違いなくて
1年使ってないものは、それこそ山のようにあるからどうしたものかと
思わされたのでありました
一年使わないものは捨てるのが鉄則だそうだ、そりゃそうだ

ムダがストレスとのトレードオフになるというのが
大切な考え方だと思わされたのでありまして、
どこに金を使い、どこを節約するかというのは
ある程度決められるけども、最終的には自分にかかるストレスで判断というのは
いい落としどころだなぁと思ったのでありました
気づかないストレスというのに、はまってしまってる気もするんだが
このくくりのおかげで、考え方を整理しやすくなると思った

最後、情報の収集と生き方についてまとめて終わるんだけども、
この人自身が、かなり優秀な人だったのはどうも間違いないようなので
一緒のようなことをしても、その通りにならんというか、
そんな楽観できないよな、なんだかんだ、意識高く優秀な人のいうことだと
気を付けておかないといけないとも思ったのであった
この生き方は、若いうちにしておけばと思わされるが、
できないものはできないとも、割り切っておかないといけないと
真逆のことを今更ながらに思うのである
やっておいたら、人生変わっただろうか、慣れないストレスを受けただけでないだろうか
ちょっと、そんなことを考えてしまったのである

人間関係のムダを排除する勇気は、そういう時代だなという感想も持ったのだった

【映画】燃えよ剣

2021-10-29 21:09:16 | ドラマ映画テレビ感想
丸々1年延期だったのか、あるいはもっとだったのか、
わからんが、ようやく放映された「燃えよ剣」を見てきた
ちょっとあれこれあったから、序盤の5分くらい見られなかったので
そこにすごいシーンとかあったら、残念なんだが
2時間半くらいで、よくまとめたなと
大胆な構成をしつつも、司馬遼太郎の原作を大切にした
なかなか面白い映画でした

語るところがいっぱいあるというか、
出てきた役者、それぞれの立ち回りが見事で
映画としてかなり面白かった
つくりとして、土方の生涯を2時間半でまとめる、
いってみると幕末の動乱を2時間半で紹介なので
かなり端折られているというか、駆け足すぎてどうだと思うところもあったけど
かなりのスピード感をもって、見たかったシーンをまとめた
そういう映画になっていたのでありました
六車殺し、浪士隊参加、新選組立ち上げ、鴨殺し、
池田屋、伊東殺し、鳥羽伏見から敗走
おおよそ押さえるところを絞っても、ぬかりない内容となっていて
ああ、確かにこういう感じだったと、「燃えよ剣」を楽しむことができたのであります
そう、この映画の目的は幕末映画を撮ることじゃなくて、
あくまで司馬遼太郎の燃えよ剣という、時代小説を映像化することなんだから
これが正しい、むしろ、もっと六車殺し界隈のところをやって欲しかったかも
そう思ったりしたのでありました

上記イベントに加えて、いわゆる司馬遼太郎の、小説の、燃えよ剣というそれを記した
お雪さんとの関係、総司との関係、近藤との関係、
ここらがちゃんと要所を抑えているというか
まさに小説の通りの関係性で、細かなイベントや所作は異なるけど
空気はこれだったと思わせるところがすごいよかった
近藤との友情というか、やりとりなんか、セリフの使い方が抜群によくて
このあたり、役者も豪華で滅茶苦茶見応えあったんだが、
映像化という観点においてすごくよかったと思うのである
「近藤さん、これからは歳はやめてくれ、土方君で頼む」
「土方くん」「ふへへ」
てな感じで、実際こんなセリフはなかったし、現代解釈っぽくされてるけど
この武州のバラガキ二人のやりとりとしてすごくいいなと思えた
白眉のシーンだと思うのでありました

さらに、総司との関係性も原作準拠の道場の気のいい後輩というか
弟分という関係をしっかりとセリフとやりとりで見せているのもよくて
また、総司のキャラクタ造詣が、クラシックというか
これこそ司馬遼太郎の総司だという、ふわっとしてるがやるときはやるし、
どっか悲しいものが、影ではないけども、なにかまとっている
そういう感じに美しく落とし込んでいて、これは役作りがすごかったのかもと
俳優をほめたいくらいでありました
鴨殺しも、山南殺しも、厭いながらやってしまう、そこにはかない笑顔があるんだが、
それは顔の形でしかない、やるせないともいえない独特の空気が
いやー、上手かった、思い出すに、この総司は本当にいい
総司に関しては、ラストに向けての処理も実にうまくて、
都を落ちていくとき、車に乗せられていくんだが、このしぐさのどこか子供っぽく
でも、敗戦をおったという感じが滲み出るようで、少しだけ心を交わした女との別れが
ああ、いかにも司馬遼太郎っぽいと思ったのである
確か原作にあったと思うが、「僕らの青春が終わった」といったセリフを
是非この総司には言ってほしかった、よくできていた

司馬遼太郎っぽい女というところで、お雪さんの扱いも、
絵師になっていたのは、原作とさすがに違いすぎやしないか?と思ったんだが、
そのあたりはさばさばしつつ、「歳三は猫だよう」という姉さんが言ったとおりのところを
上手にくすぐるようなあり方、確かこれは原作にもあった
「これからお雪は乱心いたしまする」
というセリフと、そこからの交合がすごく司馬遼太郎的だと
個人的に満足というか、いいなぁと思ったんだが
重度のファンがどういってるか気になるな、かなうならハコヅメの牧高と話したいくらいだ

六車殺しが結構さっさとしてしまっていたので、
七里とのいわくが違う処理になってたんだけども、
これはこれで新しい解釈として面白かったけど、ちょっと尺というか
説明が足らないかなというラストに繋がってしまったのが心残りながら
それでも、燃えよ剣を見た満足感に満たされたのでありました

だが、惜しいと思うところもある
主演の岡田くんが、すごくよかったし、岡田くんだからこその映画にも仕上がっているので、
これ以上どうしようもないというか、ないものねだりになってしまう話なんだが、
殺陣がうますぎるのと、外見が土方っぽくない、
これが大きく気になったのも確かなのでありました
特に、殺陣がうますぎるというのは、ある意味もったいなくて
流れるような殺陣を見られるのはやたら面白いんだが、
剣はそこまで強くない、我流で悪筋だというのがキャラクタのはずだが、
岡田くんの殺陣はうますぎて、確かに我流で悪筋に見えないこともないが
剣筋が、忍者とは違うんだが、武者格闘と暗殺術をあわせたみたいな感じで
ともかくかっこいいが、土方のそれじゃねぇわとなってしまったのである
田舎者っぽさの証のように、ナンバ走りを多用していたのはこだわりがあって好きなんだが、
行商の時はいいけど、普通の時はそう歩かんやろうとか思うんだが、
あれはあれで、変化の証だから必要なんだが、もうちょっと普通でもよかったんではないかと思うのである

ただ、それでも鴨ともいざこざが、原作にらみ合いだけで終わったシーンに
殺陣突っ込んできてて、ここはすごく見ごたえもあるし、雰囲気あってよかったのも確か、
鴨が神道無念流だったかと思うのだが、ともかく、まっとうな剣筋で圧倒しつつ、
土方があがくように、脛切り、寝転がってからの切り上げとか、
いかにも喧嘩剣法っぽいのを平然と見切っているというのが、
剣における格の違いみたいなのが見られてよかったと思うのでありました
そこを剣が優れる沖田が止めるというのも、理屈にあっててとてもしっくりきた
しかし、函館の山中戦だったかで、刀を受け取ってすぐ抜き打ちに逆手で切って落とすとか
すげーかっこいい殺陣なのに、土方はそれやらないだろうとか思う動きが
映画のアクションとしては満点なのに、土方じゃねぇなとか思ってしまったんだが
ああもう、俺が面倒くさい
なんとなし、あの殺陣の動きは、いかにも映画剣法っぽすぎて、
ラストサムライの渡辺謙のそれを思い出してしまって、違和感があったのである
上手いし、いいんだけど、岡田くんの殺陣はどういう時代劇で発揮してもらったらいいんだろう
早く世の中の作家は、岡田くんの殺陣が生きるキャラクタを作り出すべきだ
新しい時代劇ヒーローが待ち望まれるわ

見た目については、洋装が似合ってないところが残念だったと
そこだけなんだけども、書いておくのである
あと、洋装で洋式の戦争になったとき、殺陣も鳴りを潜めてしまったので
ちょっと残念感が増してしまったのであるが
それを吹っ飛ばすようにラストシーンが小説のそれそのもので
ここはセリフを含めてすごくよかった

なんだかんだ、やっぱりすごく楽しめた映画でありました
慶喜が、現在の大河ですごくいい感じだが、
これを見るとろくでもない男に見えるというのも面白いところだが
司馬史観というものでもあるが、これこそが司馬遼太郎の小説の雰囲気だと
思ったりするのでありました
駆け足なのがちょっと残念な気もするが、これくらいが一番よいというところに
うまく落とし込まれた映画だったようにも思うのである

色々片付けないといけないから仕方ないけど
原田がいなかったのが残念なのと、山崎がだいぶイメージと違ったのだが
それでも面白く描けているからよかったと思う
なんならもう一回見たいくらいだった

【読書】源氏の白旗

2021-10-27 21:09:16 | 読書感想文とか読み物レビウー
源氏の白旗  作:武内涼

源氏の、とりわけ負けた源氏にクローズアップした
短編5編を集めた小説でした
なかなか面白いというか、源氏と一口にいっても
あれこれあるとは知りつつも、よくわからない
そこを丁寧になぞってくれたような内容でもあり
いわゆる鎌倉以外のそれこれ、
源平の時代に勃興した諸国の源氏武者たちの生き様が描かれていて
ビッグネームばっかりなんだけども
わかりやすくてよかったのでありました

義朝、頼政、義仲、そして義経
これらの源氏武者の主に敗走を描いているわけなんだけども、
源平時代の彼らを描くにあたり、平家と鎌倉との関わりがほとんどない
むしろ、いずれも遠い敵として描かれるというのが面白かった
というか、この時代の源氏武者の難しいところだよなと
改めて思い知る内容でありました

この四人が、それぞれ少しずつ何かしら関わりというか、
因果がめぐっている感じも面白くて、
義朝を追った頼政、頼政がきっかけで生きる義仲、それを追い追われていく義経
大まかに源氏といっても、河内源氏、摂津源氏で
だいぶ違うこともあるようだし、
そのあたりが、さらっとだけども、根深いそれとあるようで面白い
また、話を散らかさないためか、平家は出てきても
平氏は出てこない感じになっているので、これはこれで処理がうまいと感じたのであります
似た名前が多いから、わけわからんのよな

と、思っていたら、本当かどうかわからんが
源義経という武者がもう一人いたんだそうで、
それが醜男だったらしく、その風聞が混同して、義経ブサイク説が根強いとか
本当かどうかわからん話が個人的には興味深かった
ちょっと調べたら本当にいたようで山本冠者は
覚えておくべき名前かもと思ったりする

さて、基本的に敗者の話なので、悲しいというか
振り返ってみると平家物語のようでもあるのかと
感じ入るものがあったんだが、
義仲と巴御前の話とか、未だ創作の余地がありそうな話の
ど定番といえるほど、これという物語になっていて
個人的には凄く満足だったのでありました
義仲という不幸な男もまた、物語になりやすいよなぁ

悪源太は名前のみ、八郎為朝は出てこなかったのが残念だが
源氏の棟梁格をおおよそ覚えるのによい小説だったと思えたのでありました
源平面白いなぁ

【アニメ】キングダム 3期

2021-10-26 21:26:41 | ドラマ映画テレビ感想
NHKがすっかり入れ込んで、次のシーズン放映まで予告するほどになった
キングダムの第3期を見終えたのであります
個人的には、キングダムという漫画において、一番面白いエピソードだと思われる
合従連衡の戦いを描いていて、こんな感じだったけかなと思いつつも
熱くるしい戦いを楽しくアニメで見せてもらったのでありました

それぞれの見所もありながら、
宿敵ホウケンと、信の一騎打ちがクライマックスだったわけだけども、
序盤の函谷関戦が、野戦はさすがの面白さながら、
籠城戦のほうはアニメだと少々退屈に見えてしまうんだなとか
感じたのでありました、やっぱアニメは動いてこそよなぁ

一期については、3DCGみたいな絵で、NHKの実験に付き合わされてんなと思いつつも、
その試みが面白いのかもしれんとみていたんだが、
気づいたら普通のアニメになってて、今回は、キャラデザインもなんか違くね?というくらい、
テンが美少女風になってたりして、違和感を覚えてしまったんだが、
なんだかんだ楽しく見て過ごしたのでありました
あと、何気に、漫画だとこの話要らないんじゃないかと思ってた、
キョウカイの話が、アニメでがぜん面白くて、
おまけ2話みたいな話も結構見られてしまったのでありました
漫画とアニメで、求めるものが違ってしまうもんなんだな

とはいえ、全体的に、漫画同様のヤンキーっぽさがいかんなく発揮されていて、
その魅力は維持したまま、面白く見せてくれたシリーズでありました
ただ、全体を通してみると、漫画だとすげぇ苦戦のうえ、ぎりぎり勝利した感じを覚えたんだが
アニメは、割とどこも負けなかったっぽい印象で、
なんだったら、完全勝利すら覚えるようだったのが不思議だった、
やっぱり、最後に城門を破られたあたりの絶望的なクライマックス感が、
展開知ってると楽しめないというそれだったからなんだろうか

ともあれ、なかなか楽しかったので、満足しているわけなんだが、
個人的にはキングダムはここまででよくないかとか思ったりしてしまうところ
終わりが見えない漫画を、延々と続きやるよりは、
新しいのに手をつけてくれないかしらと
ちょっとだけ思ってしまったんだけども
原作ともども、どこまで行くのか、続きがあれば見てしまうんだろうと
思いをメモっておく

【読書】テスカトリポカ

2021-10-25 20:59:43 | 読書感想文とか読み物レビウー
テスカトリポカ  作:佐藤究

直木賞受賞作品であります
SFとどっかで聞きかじって、表紙とか見ていたら
いかにもSFっぽいと読みだしたところ、
全然そうじゃなかった
古代アステカ文明を下地に、メキシコ中米の麻薬カルテルの抗争と、
日本を舞台にした臓器闇売買の興亡を描いた
かなりダークなクライムサスペンスでありました
扱ってる題材というか、基本的にえぐい感じなんだが
面白かった

主人公と呼べる人物が2人おりまして、
一人はメキシコの麻薬カルテルですさまじい勢力を誇った男なんだが、
序盤で、組織とファミリーをメキシコ抗争のそれで失ってしまう
そこに至るまでの極悪非道というか、
もう凄惨きわまる処刑方法と、独特の世界観、
アステカの神を信じ、心臓と神テスカトリポカを信仰する男、通称:調理師

もう一人は、日本でヤクザの子供として生まれた男なんだが、
こちらも母親が、メキシコの麻薬カルテルの抗争に巻き込まれて
様々なものを失った女だったりして、
なかなか因果が深い感じなんだけども、
子供ながら、すさまじい力(腕力)を持ちながらも、
満足な教育を受けていないので子供のまま大きくなっていくというそれ、通称:断頭台

物語としてはこの二人が出会うのはずいぶん後になるんだが、
それぞれの道程がやたらめっぽう面白い、
特に調理師の復讐に燃え、狡猾に闇社会を歩いていく様が面白くて、
利害に伴って、様々な男たちと組んでいくんだが、
また、そいつらもとんでもない暴力を備えていたり、
悪辣極まりない闇医師だったりと、悪党ばっかりごろごろ出てくる
やってることは殺しと、臓器の闇売買なので
まったくよいところはないんだが、一家の長としてのふるまいや、
賢さ、躊躇も恐れもない暴力の行使が
ある種のカタルシスを見せてくれる

そんな男のもとに、もう一人の主人公断頭台が
いつ合流するんだ、合流したらどうなってしまうんだと
やきもきしながら物語は進んでいくのでありました

個人的には、最後はちょっと物足りなくて
もっと違う展開を期待してしまったんだが、
それだと、いかにも漫画的というか、物語的すぎるから無理なんだなと
残念に思うものの、善悪をおいて、ただ、男が復讐のために邁進し
それを達成する姿を見たいとも思ったのは確かでありました
そういう単純な物語だったとしても、相当面白かったろうと
思ってしまうんだが、この物語自体は、
タイトルでもあるテスカトリポカの正体ともいうべきものに出会うというところがミソで
それもまた、結構衝撃的だと思わされたのでありました
神話の理屈が理解できたというべきか、
ああ、そういうことだったのかもしれないなというのが面白かったのである

ふんだんに中南米の神話が出てきて、独特の世界観を提供してくれるのもよかったんだが
話としては、暴力と犯罪のそれなのでありまして、
久しぶりに、ぎらぎらしたものを読んだと、重たい肉を食べたような感触の
読書となったのでありました

青天を衝け  栄一、銀行を作る

2021-10-24 20:44:44 | NHK大河ドラマ感想
NHK大河ドラマ「青天を衝け」
視聴完了しました
井上の非道っぷりがあんまり描かれないまま
さらっと辞めてしまって、
なんか、話によると残酷物語となる銅山のことが
セリフでちょっと出ただけで終わったのか、
あれをきっかけで、ちゃんと拾ってくれるのかわからんが
ともかく、あわただしく転身していく栄一を見るばかりでありました

民間に下野しても、
なんだかんだと財界と呼ばれるそれこれと闘うことになり
三井を敵に回しつつ、三菱がより大きな敵として立ちはだかってきて
あんなに仲良かったように見えた大隈に陥れられるというのが
なんとも政治だなという感じがするばかりでありました
実務担当の官僚頭ともいえる栄一だからこそ
政治家に嫌われて仕方なしということもあるんかしらと思いつつも、
栄一がいなくなったからというきっかけで、
政府と三菱の癒着が描けるというのは
なんか、しっくりこんけども、見たかった部分なので
なんだかんだ楽しみが増してきたのでありました
弥太郎というか、三菱がどうやって政商たりえたかが
ありあり描かれることを望むのである
現行三菱からクレーム入るくらいやってくれんだろうかな
いや、薄汚いとかそういうのじゃないガチのやつでな

ひっそりと母っさまも旅立ってしまい
わずかな中で、妾の微妙な立ち位置と寂しさも描いているのが
よいところだったようにも思うんだが、
喜作が帰ってきて、なんだかんだ物わかりがよいというか、
怒ってるのにすぐ普通にやりとりになる
あの幼馴染感というのがいいなぁと思うのでありました
生糸に手を出すらしいが、盛大につぶすとか聞いてて
それはそれで楽しみなんだが、やるかなぁ

しばらくは三菱との因縁というか激闘になるのか
最終的にどこで終わるのかが見えないけども
岩倉が襲われたり、幕末の決算が近づいている
そんな風に見える物語でありました

【読書】牧師、閉鎖病棟に入る。

2021-10-23 21:09:56 | 読書感想文とか読み物レビウー
牧師、閉鎖病棟に入る。  著:沼田和也

タイトルの通りだったんだが、
牧師さんだった人が、精神病にかかったというお話でありました
教誨じゃないけど、仕事で閉鎖病棟にいった話かと思ったら
もっと切実な、なかなか興味深い内容だったのでありました

日記ではないけども、自伝的ドキュメンタリというべきか、
体験ルポと、ある種の治療の結果のような内容で、
牧師という職業を得て、幼稚園の園長までしていた男が、
発達障害の激しいものだという診断をされて、
精神科の閉鎖病棟に3か月入院したというお話でありました

本人による、本人の手記のため、
一方的というか、主観のみで構成されているから、
実際はどうであるか、そのあたりはわからないのだけども
閉鎖病棟で感じたこと、考えたこと、
それまでに自分と、治療によって得たことというのが、
本人の実感とともに書かれていて
興味深い内容に仕上がっているのでありました

閉鎖病棟で出会った人たちのこと、
その人たちの人生とは何かというものについて、
牧師という職業から、神の説話を含めた
哲学的な内容に踏み込んでいて、
それでいて、そこに実感が伴い、座学的な理解を超えていくというのは
面白いところではあったんだけども、
社会的偏見ともいえるような内容に負けそうになったり、
実際にそうであることを否定しようもできなかったりと
葛藤がつづられていく様は、
治療の効果を読むことができているという
奇妙な読書体験をさせてくれるんだが、
これもまた、不可思議というか、どういう感想を抱くべきなんだろうと
考えさせられたりもしたのでありました

特に、世界や世間を批評するといったことではなく、
ただ、自分の治療を通して、そこにいたという経歴によって苦しむ実情を描いているのは
勝手に忖度でもないが、差別めいたものを自身にも見出してしまえそうで
大変難しいと感じたのでありました

結局本で読んだだけで、この人に会ったわけでもないのだから
どこまでが真実というか、事実なのかもわかるはずもなく、
また、本としても、そういったテーマに沿ったものではなく
あくまで、本人の治療の結果、あるいは経過の日記めいたところから
踏み出してもいないので
メッセージを発信する種のものではないんだが
それでも、考えるきっかけを与えるような内容になっていると
思うのでありました

【読書】黒牢城

2021-10-20 20:47:43 | 読書感想文とか読み物レビウー
黒牢城  作:米澤穂信

戦国時代、有岡城に立てこもった荒木村重を主人公にした、
戦国時代推理小説でありました
面白かった、設定も内容も完全に戦国時代なのに
展開は推理小説のそれというのが、個人的には斬新に感じた
こういう時代小説とも呼べるものがあるのか

籠城中に起きる、謎の不審死や、裏切りといったことについて、
村重が解こうとするのだが、どうしてもわからない、
そんなとき、牢に閉じ込めた黒田官兵衛に尋ねに行くといった話で、
そんなわけあるかと思いつつも、
この設定はすごい面白いなと、実際にあったらドラマチックというか
漫画的すぎるだろうという内容がとてもよかったのでありました

城内に、腹を割って、同じレベルで話をすることができるのは、
捕虜の官兵衛しかいない

この設定は、結構ありそうでなかったような気がして
すごくよかったのでありました
その関係性も、最後のオチに向けての前振りであるというのも
よくできてるなーと、感心しきりだったんだが
時代小説ではなく、推理小説を読んだという満足感が非常に高い内容だったと
思うのでありました

作者の得意とするといってしまったら、
失礼なのかもしれないけども、
キャラクタの配置と関係性のうまさが抜群に光ったといえる、
こういう設定の、こんな話を書いてみたと
まさにそれが、すごい高いレベルで適っている感じで、
人間の悲喜こもごもも描きつつ、
頭のよい人が追い詰められる姿、その思考が暗くなっていく様というのが
すごくよいと思えてならんのでありました

毛利の援軍がこない、
その先に待つものが、村重には見えてくるけど見たくない、
それを指摘する官兵衛というのがまたいいわけなんだが、
実際に村重という頭のいい武将が、信長への叛旗を翻し
それがとん挫していく途中というのは
どういう心持で、どんな追い詰められ方だったかというのが
なんとなし、伝わってくるような
追い詰められる知能犯的な楽しみもあったように思うんだが
こういう視点で歴史を見るというのは
面白いものだなと、やっぱり、感心がまさってしまうのだけど
楽しめた小説でありました

【テレビ】明鏡止水~武のKAMIWAZA~

2021-10-19 21:31:31 | ドラマ映画テレビ感想
久しぶりにNHKらしい番組と思いつつ見ました
ケンコバはともかく、岡田くんの趣味に完全に付き合わされている
そんな気すらしてしまう番組で、
前にも西洋甲冑で似たようなことやってたよなと思ったんだが、
より本業に近い、武道にクローズアップした番組でありました

いつもはBSのほうでやってる番組のようで、
唐突に先日総合でやってたので見守っていたんだが、
やっぱり岡田くんがただただ楽しそうな
なかなか素敵な番組でありました
15年くらい前の自分だったら、がっつりあーでもないこーでもないと
香取神道流のそれこれについて熱く語ってしまってたんだろうが
第一回の手探り感すら漂うところが面白くて、
結構、色々な武術の師範級の人たちが
それぞれの流派の型を見せたり、
香取神道流のそれだけではないところも、なかなか興味深かったのでありました

実際にその技のポイントを紹介していくところがツボで、
薙刀の型で、足の形、構がポイントだというあたりとか
すげぇよかったのでありました
ああいうのが武道の神髄だよなと、口伝の可能性もある技、それを支えるたった一つの工夫というのが
いやー、よかった、面白かったと
なんだかんだ、結局語ってしまいたくなった番組でありました

空中で抜きはらい衝きを見せるというのは、
実際すごいのだろうけども、あれよりは、足使いであったり、
引く押すの流れるような所作であったり、
合気道のそれがやりすぎなのか、痛いことがわかってるから、
自分から動いてしまうという解釈だとか
色々と興味深く、ヲタク好みの武道うんちくが披瀝されてよかったのでありました

月一回くらいでいいから、総合でレギュラーとしてやってくれんだろうかと
願ったりしつつ、今回突然やったのは映画公開となんか関係あるのか?と
いらんことを考えたりもしたのでありました
NHKでそれはないかと思うが、
逆に岡田くんの露出が映画で増えるのを見越して
あえてNHKがぶつけたんだろうかとか
つまらぬことを考えたのである

それはそうとして、宝蔵院とか見たいなぁ

【読書】カード師

2021-10-18 21:07:31 | 読書感想文とか読み物レビウー
カード師  作:中村文則

掏摸とか、王国とかを彷彿とさせるスリリングなやつを期待したんだが、
あそこまでエンタメに振ったわけではない、
気づけば、哲学思考とも異なる、世界の成り立ちに対する
理解、愚痴、考察、あきらめ、奇妙な期待
様々なものを織り交ぜつつ、
アンダーグラウンドとも異なる、暗い世界がさも当たり前にあるという前提の上に成り立つ
SMともまた違う、上下関係とそこに対する人の情欲であったり、
いいようのない気持ちの悪いものが描かれていたように思うのである

ま、そういう難しいことが唐突に差しはさまれるんだが
おいといて、タイトルの通りカード師としての、
イカサマも交えたカード戦描写が面白かった
合ってるかどうかもわからんが、
ハマることが前提に組まれているような、そこまで複雑ではない駆け引きが
ひりひりと続いてよかった
描写が人物に当たっているので、その人物の考えるそれなんだが、
その緊張感が伝わってくる文章展開がすこぶるよかった
奇をてらいすぎないというか、裏切りの裏切りみたいな、
こねくりまわしたのじゃなくて、一回だけの、一通りだけの罠というのに
どのようにはまるかというところが焦点になってるのがよかった
あれこれ考えすぎるというのではなく、
緊迫感と、そうなってしまうのかというあたり、
多分罠だろうけど、どうだろうかと、悩みつつも判断するというそれこれが
くどくなく、それでいて濃厚に書かれていてすごくよかった
というか、読み応えが素晴らしかった

途中、少々インモラルな雰囲気もいつものように上がってきたんだけども、
割と大人しめで、そういうのではなく、
賭け事の魅力というか、魔力というものを描いていたと思うのでありました
それだけ力の入ったように思う文章だけど、
実際のところ、この本筋というか、語ろうとしていたところとは
あんまり関係がないというのも、不思議なところなんだが、
難しい理屈というか、妄想に近い想像が、
カード賭博の魔力とあいまって
タロット占いとかのからくりと魔力とが混在する世界のようにも見えてと
最終的に、すかっとこれだとならないのが
残念といえば残念だけど、
だからこそのこの物語だったともいえて
なんというか、面白い部分もあったが、全部読むと
ちゃんと理解できなかった
そんな感想を抱いたのでありました

青天を衝け  栄一、最後の変身

2021-10-17 21:28:05 | NHK大河ドラマ感想
NHK大河ドラマ「青天を衝け」
視聴完了しました
妾話をどう片付けるかと思ったら
まさか、冒頭から一気に片付けてしまうとは
夢にも思わず、正妻の貫禄を見て終わったような、
くすぶっているようなというあたり、
もうちょっとそこは見たいような、大河ドラマ的にはどうでもいいから
あんまりやれない内容だなと思ったりしつつ
楽しんだのでありました
面白かったというか、お千代さん大変だな

さらに、するするっと話は進んで、
気づいたらお千代さんにも子供ができていてと
このあたり、すごいスピードで年月が過ぎ去っていってしまうのが
よくわからんと感じたんだけども、
結局、長男はお千代さんが産んでいたのかと
てっきり、唐突に突っ込んできた妾だけに、そっちがと思っていたところ
肩透かしでもないけど、驚いたのでありました

さておいて、喜作も無事出てきて、
悶着があるかと思ったら、河原での男子高校生の喧嘩みたいな決着だったけど
よかったなぁと思わせられるやりとりで、
すっかり大蔵省の人になって、視察かねてさらっと他の場所の紹介役みたいになって、
栄一の恫喝やら、兄ぃの大活躍やらを見守るというのは
いい役どころだなと思わされたのでありました
まさかのイタリア洋行するとは、思いもしなかったけど
そこに抜擢されたということは、
やっぱり有能だったということなんだろうかなと考えたりするのである

そして本筋の銀行立ち上げ、
裏側でもないけど、政府の暴虐と、栄一とは関係のないところで汚職が進みと
このあたりの混沌としたものが見えてきて
なかなか面白いのでありました
もっと、そのあたりしっかりと描いてくれればいいのにと思いつつも、
さらっとセリフ上だけで、江藤か、大隈かが「だからあんたは嫌われてるんだ」とか
さりげなくディスられていたのが面白かった
子供の喧嘩みたいなセリフだけど、実に的を射ている

三井組の苦難も描かれていたけど、
それはそれとして甘い汁も吸っていたのであろう、
そのあたりはそれこそ描けないんだろうけども、
ふまえておきつつも、栄一に刺さる言葉というのがいい話というか、
よくできた構成だとうなったのでありましたとさ

なんだかんだ、流れの中で銀行もできるし
公からひくようだし、まだまだこれからといったところ
いや、いよいよ栄一の大成が見られるのかと
思ったりして、また次週を楽しみにするのでありました

【ドラマ】オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ

2021-10-15 20:54:40 | ドラマ映画テレビ感想
NHKの土曜ドラマでした
番宣で、えらい豪華俳優陣だなと期待してみたんだが、
いや、確かにすげぇ豪華メンバーだし、なんというか
本当、ものすごいんだけども
たった3話で、しかも、話としてこれで終わりなの?という
とんでもない出来栄えでお出しされて
驚いたというか、おののいたのでありました
まぁ、確かに終わったというか、
だいたいわかったっぽくまとまっているんだけど、
もっといろいろあっただろう、
というか、もはやイメージ映像でしか出番がなかった部分に、高良健吾使ってたりとか
本当に無駄遣い甚だしいところが、
ドラマとかおいといて、衝撃的すぎてすごかったのでありました

とっ散らかすだけ、散らかして、
まったく悪びれもしないといった感じすらあって、
すがすがしいとも違うんだが、すげぇな、
これもある種、コロナのおかげなんだろうか(みんな暇だったんじゃないか説)

正直、話の筋がどうだったとか
語る必要すらないものだったというか、
解き明かされなかった部分が、最後にダイジェストで流されて終わりと
まぁ、なんとなくそうだろうなと、
オリバーの父親のルドルフが、スーパーボランティアの小西さんなんだろうなとか、
黒幕は橋爪功なんだろうなとか、まぁ、わからんでもないところもあるんだが、
ちゃんと見てなかったせいか、本当に語られてなかったのかわからんが、
柄本明は結局、誰のなんだったんだ、
ラジカセ持ってたのはいいが、最後踊るためだけにもってきたのか、
橋爪功の使い走りをして、極道と半グレの間でなんかしてたのか
もうちょっと説明してほしかったと思うのでありました

まぁ、投げっぱなしになっているところをいちいち
あげ連ねていっても仕方ない物語だったわけなんだが、
個人的には、松重さんがヤクザやってることと、しかも親分やるんだなぁという
下っ端ヤクザではない貫禄を得ていることと、
それなのにゴロー味をねじ込んできたりするのが
とても楽しかったというか、うれしかったという感じでありました
相手方でもあった、瑛太の半グレ演技も結構好きだったんだが、
唐突なラップバトルからのダンスというクライマックスが
もう、なんでもいいやという気分で一掃してくれていたので
大変楽しめたと書き留めておくのである

一応、こういうことかというのをメモがてら書いておくと
橋爪功が、売春組織の黒幕をやっていて、
その実行を松重さんところの組がやっていた
行方不明だった女の子が、そこから逃げ出したことでその口封じを半グレがやっていたのか、
高良健吾は、想像するなら女の子と恋仲になったか、どうにかして、
組織を裏切って逃がしたとか、そういう悲しいお話がありーの、
殺し屋の染谷も、あの後、橋爪功にしっぽ切されて
罠にはめられたりとかしながら、
結局追い詰められたのか、そうでもないのか
そのあたりはさっぱりわからないという物語だったんだろうかしら

あんだけ絵があるということは、
結構撮ってたんだろうけど、コロナの影響で取れなくなったりしたのか、
そもそも取る気がなかったのか
わからんけども、とりあえずあれで終わりということで
蔵出しもないんだろうなと思うと残念だが、
それでこそ、この作品として完成したといえるのかもと
だまされたりする内容でありました

まぁ、楽しかったからいいや

【読書】俺と師匠とブルーボーイとストリッパー

2021-10-13 20:46:45 | 読書感想文とか読み物レビウー
俺と師匠とブルーボーイとストリッパー  作:桜木紫乃

昭和末の北海道、場末のキャバレーを舞台にした物語でした
ものすごいしっとりした、舞台装置は確かに昭和のそれこれなんだけども、
人情味あふれる話は、昭和のそれだと自覚できるのに
現代の小説として、みずみずしさがあるといった感想を抱いた
よくある昭和人情話でまとめたいところなのに
なんというか、古臭さや、鼻につくほどの昭和を明らかにした感じではない
なんとも不思議な読み応えなのでありました

ロクデナシの父親に売られるようにして、
キャバレーで住み込みのバイトをしている青年のもとに、
というか、そのキャバレーに年末年始の興行で
風変りな三人の芸人がやってきたと
そういうお話であります

マジシャン、シャンソン歌手、ストリッパーと
三人は、たまたまこの場所での興行に呼ばれたというだけなんだが、
渡世人でもないが、そういう仕事がら、
見事なチームワークというか、プロの仕事をしていく
その姿に、若い主人公があっけに取られたり、
その人たちと触れ合っていくことで、
だんだんと大人にというか、人生が動き出す、
そういう若者の機微がみずみずしく描かれていて、
いやー、青春小説とはちょっと趣が違うけど、
いい話だったと、ほのぼのとしたのでありました

とんでもない事件が起きたり、
しょってる人生の悲しさを押し付けられたりしない、
それぞれが、それぞれの人生を歩んでいて、
また、それぞれに何かがあるんだというのがわかり、
それを見守るような、そこで生きている人というのが描かれていて
なんともしんみりしてしまうのでありました

ヒモになる才能についての言及があって、
これについてはなるほどというか、
それもまた生き方なんだな、
男の職業の一つなんだというのに、
なんというか、ものすごく納得したのでありました

場末ならではの、悲喜こもごもというか、
男と女の色恋もあるんだが、
その寂しいとすら思える結末も、
それでいいんだと思えるような、
不思議な魅力が、ああ、昭和だなぁと
なんか感じ入るものを覚えたのでありました

多分昭和じゃなくて、今でもきっと存在する感傷なんだろう
あってほしいと願ってしまうような、
絶妙な人間関係が描かれていた小説でありました
すごいよかった
また、ラストシーンが素敵なんだこれが

【読書】台北プライベートアイ

2021-10-11 20:55:40 | 読書感想文とか読み物レビウー
台北プライベートアイ  作:紀蔚然

台北を舞台にした、世捨て人探偵の事件簿
主人公の鬱屈とした状況と考え方、
それを包含して、がやがやと騒がしくて楽しい仲間たち
登場人物それぞれが生き生きとしてて、
ミステリも味わいつつ、哲学的な思考といったりきたり
大変楽しく読める小説でありました

正直、犯人の正体については、
そういう感じかぁと思ってしまったので、
ミステリとしては、どうなんだという感じもあるのだけども、
ミスリードされたというか、あれとこれが怪しいと思っていた人物たちが
わざとだったのか、そうでもないのか、
するっとフェードアウトしていたようなのが、なんとももやっとしたんだけども
そこが主題と考えるよりも、主人公を含めたキャラクタたちの考え方と
所作、行動それぞれがすごく自然な、それでいてコミカルなのがとてもよかった
ミステリというより、人間を描いた小説だと思って、
そこを楽しむのが正しいと思えたのでありました

詳細な台北の街並み、でも、限られた範囲内だけども、
そこに息づく生活と人々の描写がすごくよくて、
台湾ってこんな感じだよなぁと思わせられて、思い入れがあるせいでもあるが
ありありと浮かぶようでとても楽しかったのでありました

宗教的哲学も織り交ぜられるけども、
この感覚も台湾ぽい、俗物っぽいというか、
迷信は息づいているけども、それは宗教色というのとは
また異なる何かだなと思わされる感じで、
圧倒的な生活感みたいなのを浴びる感じで読み進められた
悪いことがあった後に、火をまたいで、豚足入りの麺線を食べるというのは
ちょっとした豆知識というか、こういうところがいいなぁと
映像が浮かぶようですごくよかったのである
絶妙に中華的任侠を感じさせるところもまたいい、とても楽しい

実際に、台湾で事件が起きたとき
こんな感じの喧騒になるのかなぁと、住んでいる人たちからすると
より笑いが増すような内容に読めて、想像するだけで二度楽しい
そんな小説であったのでした

続編もあるらしいが、翻訳されるといいなぁ
かなり楽しめた小説でありました