CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

将棋ウォーズ2級で都成流(2021)をとる

2024-05-31 21:40:30 | 将棋

都成流

後手番戦法でしか出ないと思うのだが、
相手が居飛車でかつ、角道よりも飛車先を優先してあげてくる場合で、
歩交換の時に角の頭を受けずにじっと金を寄って受けると発動
このエフェクト追加は結構遅かったので、
タイトルは「2級でとる」だけど、実際は1級になってた気がする
ともあれ、気に入って、今も使っている戦法である

ご存じの通りあわよくば相手の飛車を捕まえてしまおうという作戦だが、
もうメジャーになりすぎて、流石に飛車もらえることも少ない、
なんなら、飛車くれるけど、と金作って逆襲されるという対策もとられはじめて
使いにくくなっているのだが、とりあえず向かい飛車の力戦になりがちで、
10秒将棋とかで大変楽しい戦法である

個人的には発動後、お約束通りの4四角アガリで飛車捕獲の形を見せて
相手飛車が敵陣戻れば、2六に歩を打ってから向かい飛車に、
後はうまいこと銀があがれたら、棒銀模様で攻めるとかするんだが
だいたい途中で角交換が発生してわけわからんちんになるので、
2六歩のあたりで、相手は銀上がってきて受けてくるので
その時に右へと玉を囲いにいく
個人的に、美濃にすると銀あがった瞬間に角交換になってスキを突かれやすいので
ミレニアム調で玉は3二で左に金、下に銀といった形にすることが多い
とりあえず角交換となった後に、相手の角打ちで左右両方の角成が受からないことが多いので
玉囲いの手順は重要だと思われるが、ここは飛車に近い方でなられないようにした方がいいことが多い(個人の感想です)

攻撃目標は相手の飛車頭の粉砕にあるので、銀で受けられても
角が手に入ったら、相手の飛車頭を押さえている歩の先に角捨てるとか、強引に突破して、
ともかく自分の飛車が相手陣に成り込めば大体勝ちと思って指すのがよいと思う

【読書】蔭の棲みか

2024-05-29 20:55:20 | 読書感想文とか読み物レビウー
蔭の棲みか  作:玄月

結構前の芥川賞受賞作品
なんとなし読んでみたんだが、いわゆる芥川賞っぽさはもちろんだが、
そういった人間性や、社会性みたいなものにも時代というのが色濃く出るんだなと
小説の情景をはっきりと、古い、あるいは、今ではない現代劇だと思い知らされて
小説内容と違うところで驚愕したのであった

内容としては、大坂にある朝鮮人部落の出来事といった感じで
この設定そのものが、すでに現在存在していなそうなのと、
そこでの特殊ともいえる状況や、哲学のような人間の信念が
これまた、古いといっていいのか、独特のそれで、根元的にはみなに備わっていそうなと
そういう感じのようでもあるのだけど、現在、これは無い側の話しになっているのではと
ともかく、社会、人間というのは変化しているんだなというのが
よりそれを純化させた物語だからこそか、とても強く感じたのでありました

戦後から現在に向かってくる途中、
確かにそういった部落があって、アナーキーな世界があって、
そこ特有の臭いというか、風習や怒り、鬱屈としたものが間違いなくあったろうと思うのだが
今はそれの形というか、色が変わったように思えて、
書かれている、ある種の差別などの触れられる何か、抵抗の礎みたいなものが
現在には違うものになっているというように感じられて、
当時読んでいないからこそ、その怒りの明確さというか、はっきりと見えるようになったと
読みながら感じたのでありました

独自の文化といっていいのか、そういう世界観、あるいは集落があったんだろうなと思わされる
昭和異聞、いや、もしかすると平成異聞といえるそれなのか、
間違いなく当時の文化世相が描かれて、切り取られていると思うのだが
今はもうない怒りの残滓みたいなものを読んだと思えて
なんというか、実に不思議な気持ちを抱いて読み終えたのでありました

はっきりと怒りだとわかるのだが、それを支えていたというか、
見えやすくしていた対象が消えたような現在でも、
多分この熾り火は続いているのだが、その違いがないはずの差異がとても不思議だった

【映画】青春18×2 君へと続く道

2024-05-28 21:05:04 | ドラマ映画テレビ感想
少し前に台湾行ったときに映画館でポスター見掛けていたんだが、
現代劇のラブストーリーとか、趣味外なので見送ろうと思っていたけど、
えらい評判よさそうなので、ついつい見に行って号泣、いや、
むせび泣いて帰ってきたのである、いい青春物語だった…

物語上の現代と18年前をいったりきたり、
そしてその間の日本と台湾をいったりきたり、
そういう感じの構成なんだが、複雑さやややこしさはまったくなく
ミステリ的要素というほどでもないが、少しだけ謎はあるものの
それはおいといて、青春の姿を色濃く映したもので
見ていてなんとも感動したのでありました

男性の俳優さんが30過ぎてるのに18歳役と36歳役を同時にはってて、
それでいて違和感がないというのもすごいなと感心したんだけど、
演技と、なによりも佇まいが素晴らしかった
顔立ちはおとなしいけど、はっきりとかっこいいオーラが、顔ではなく全身から出てるような
見事なシルエットをしてて、そう考えると18歳は無理があるかと思うのだが
そういうのはどうでもよく、話しの面白さもあってか、
物凄く奥手の男子という感じが見事で、そのわざとらしくないコミカルさが
いわゆる可愛いとすら思えるような感じに自然に出てるのがすげぇと
感心して見入ってしまった
あと、ものすごく体のラインが綺麗で、相当作りこまれたからだをしてて
背中からのショットがめっちゃかっこよく映ってたのが印象的だった
そういうシーンは一切ないけど、ちょっと薄手のTシャツで歩いていると
隠し切れない筋肉というか、首から肩、背中にかけての流れが見事でほれぼれとしたのであった
どうやったらあんな体になれるんだろうか、劇中にも出てきたが、まさに師(かっこいい)だった

そして、その俳優さんより年下なのに
4つも年上のお姉さん役として、清原果耶がこれまた見事で、
先週の碁盤斬りの時もよかったけど、今回のこれもまた見事なお姉さんっぷりを演じていて
これがまた見事に、台湾の男の子を手玉にとるでもなく転がしているお姉さんで、
懐かしい姉萌えなるそれを感じたのである
まさかこんな若い女優さんにそれを見ることがあるとは…女優おそるべし
凄い上手かった
どっちも最高にかみ合った演技だったと思うのである

話しは18年前に出会った二人の話し、そこで過ごした話し、
18年後、日本に帰国するからと分かれていた彼女に会いに行く話し
そういう物語で、旅物語のようでもあって、先々で少しずつの出会いと楽しい思い出が作られていき
と、まぁそういう感じなんだが、どのシーンも絵が美しいというか、
思い出を印象的に流しているというただそれだけなんだけど、
その青春密度の高さが見事で、個人的には見たことある台南のあちこちが見られたのもよかったけど
そこの日常の他愛のなさが、まぁ見事に美しい思い出になっていて感動したのでありました

台湾の男性が、昔会った日本人のお姉さんに淡く恋をして18年が過ぎた
そういう物語を男性側の方にものすごく肩入れして見て感動したのだが
日本においては、おそらく日本のお姉さん側に肩入れして感動するのではないか
これは日本で結構当たってるわけだわと納得の出来栄えというか、内容に
物凄く感心、いや、別に興行をどうこうではなく
純粋に映画として、こういうタイプをほとんど見てこなかっただけに
物凄く感動して見終えたのでありました

タイトルの通り青春だった、異邦への憧れみたいなものも含めて
ラブストーリーだけではない青春の物語だったと思うのである

【読書】化学の授業をはじめます。

2024-05-27 21:05:53 | 読書感想文とか読み物レビウー
化学の授業をはじめます。  作:ボニー・ガルマス

風変りな女性科学者が、料理番組のヒロインになる
そういうお話なわけで、
敢えて「女性」とくくったりするのがポイントといえばいいか、
今よりも女性の権利や主張が通らなかった1960年代のアメリカを舞台に
男性をものともせずに、自分の意思と主張を通していく主人公の姿が
清々しく気持ちいい、ちょっと勧善懲悪にすぎるだろうというくらい
すぱっと割り切った潔さで、読んでて非常に楽しい気分になる小説だった

ちょっとさすがに今の基準というか、
女性がここまで主張してというのが今でも尖ってると思うような内容なので
その時代にそれは絶対通らないだろうと思うのだが
まぁ、そこがエンタメであり、小説だなと思いつつ
その強烈さが、前時代的な(まさに)思想や観念を打ち破っていくというのが気持ちいい
あくまで物語だなと思って、あまり深く考えず
ただただ、闘うという気持ちもなく戦っている主人公の姿を見ているだけで
なんだか楽しいというのが、素敵だと思うのでありました

かなりヘビーな過去や背景を背負っている主人公とその周辺なんだが、
それを吹き飛ばしていくというか、ひっくり返していくように
だんだんと活躍していく様がよくて、
仲間といっていいのか、味方が娘であり、近所のおばさんであり、犬でありと
それぞれも基本的にいいやつで、気持ちがいいキャラクタかと思えば
敵役になるのは、しっかりと悪いというか
いかにも当時風といった感じの倫理観をグロテスクにデフォルメしているので
後腐れなく悪い奴と斬って捨てられるのが
読んでいてある意味安心なのでありました

辛い過去と現状とが入り混じっていくので、
まったく平坦な道のりではないのだけども、最終盤で、色々なことが繋がって
ようやく報われるといっていいのか、解決といった方がしっくりくる
いくつかの縁が繋がるのが、大変楽しかった
大団円で、みんな笑顔、そして悪役がしょぼしょぼと退場すると
わかりやすい映画のようなコテコテな終わり方もよくて
はつらつとした気分になるのであった

料理番組であるし、料理が化学であるというのがポイントの一つだったのだが
その化学っぽさがあんまり出てこなかったのがちょっと残念かなとも思うのだけど
ボートや神学についての興味深い感覚や蘊蓄も盛り込まれていて
面白く読めたのでありました
娘がグレるんじゃないかと心配したが、そういう朝ドラみたいなことはなくて安心した

光る君へ  旅立ち

2024-05-26 21:05:58 | NHK大河ドラマ感想
NHK大河ドラマ「光る君へ」
視聴完了しました
先週の片付けが主なところで、もっと宋人と揉めるところやるかと思ってたが
それよりも分厚めにしっかりと枕草子のことを描いていて
そういう感じなんだと感心して見終えたのであった
枕草子の春夏秋冬部分は暗記させられて、未だに諳んじているけども、
そういうことじゃなくて、その背景にあった中宮との日々
それをつづっていたとか、その成立について教えてほしかったと
今更ながらに思ったのである
いや、実際は教わっていたかもしれないが、古典として暗記したという
学生の見本的なそれだった俺が悪いのかもしれんな

さておき、言葉遊びというのがこの頃から
まぁ、当たり前ではあるんだけども、ダジャレって案外大切なスキルなのではと
思ったりして見守ったのだが、
枕詞だから枕草子にしたのかとか、あれこれ考えると
まぁそのあたりは創作であろうけども大変楽しかったのである
ダジャレもまた、教養なのか

とりあえず、最後まで伊周が酷いということに尽きたわけだが
それでいて、マザコンも発症してて、惨憺たるものであったわけだが、
それを何というでもなく、真面目そうに見えてたけど
案外そういうわけでもなさそうに、ロバート秋山が仕事してて、
相変わらずおなか揉まれたりしながら、なんというか
貴族ってすごいなと思うばかりであった
まひろのところも、なんだかんだやっぱり貴族だよなと
あの関係性だから、普通の親子というか家族の会話っぽくなってたが、
上流階級のそれなんだよなと、当たり前ながら
思い知ったりするのであった

そして思い出したように挿し込まれる、平安少女漫画展開
別れのシーンとか、これ絶対ないじゃんと思いつつも
物語上実にいいタイミングというか、これしかないという感じでお出しされて
物凄く漫画だけど、ものすごくいいなと
感激して見たのでありました

次週からしばらくは宋人と揉め続けることになりそうで
それはそれで楽しそうだが、
5年が二週くらいで終わるのか、6月いっぱいくらいなのか
楽しみにしていきたいと思う

【読書】私が鳥のときは

2024-05-25 20:55:16 | 読書感想文とか読み物レビウー
私が鳥のときは  作:平戸萌

現代小説
不思議な読み心地だった
サスペンスやミステリではない、ただの現代劇なんだけども
少しばかり特殊な事情が見え隠れして、その姿を切り取ったように描くばかりで
全体として大きな何か、物語としての終結といったものが見えづらい
でも、不思議と面白く読めて、なんとなくしんみりできた
いい物語だったと思うのである

二つの小説が収録されているんだが、多分つづきというか、
同じ登場人物のお話で、一本目がすごく切なく
ああ、それはそれでいいのかという感じで終わったんだが
その前日譚のようなもので、かつ、本当に知りたかった部分ではないところを描いていて
これがまた、幸せといっていいのか、とてもよい話で
青春がよくよく見えるのだけども、
それがあってこそ、また、一本目の味わいが大きく変わってくると
そう思ったんだが、実際に同一人物の話なのか
そのあたりはわからんのである
けど、一本目の切なさがわかっていると、二本目の幸せもまた
なんと切ないことであろうかとしみじみ感じ入ってしまった

何書いてるかさっぱりわからんのだが、
ともかく、普通の現代劇で、ちょっとした人間関係のやりとりがあって
そこの感情、気持ちの揺れみたいなのが、とても素直に表現されてて
そこもまた、幼さと異なる青春ぽさだよなと思って
なんか、やさしい気持ちになって読むのであった

家庭環境や、学校環境の問題があるのだけど
そこの描写はなく、そういう中にいる人の気持ちと暮らし
それが主役といった印象で、事象に憤るとか悔やむということではなく
そんな中どう生きているかという姿が
かっこよくもなく、あきらめているわけでもなく
それぞれに自分の人生を生きているといえるような内容で
なんともよかったとメモっておく

ちゃんと読み取れただろうかな

将棋ウォーズ2級で一間飛車穴熊(2020)をとる

2024-05-24 22:31:58 | 将棋

一間飛車穴熊

ようこんな戦法で勝ったなと自身の棋譜見ても驚いたのだが
4級のポナさんからはぎ取っていたようで、まったく棋理がわからぬまま
強引に勝っておりました
名前の通り、一間飛車と同じ出だしにしておいてから穴熊に囲うと出る
他の人の棋譜をと眺めていたら、低級ばっかりだったので
上手い人とか存在しないというか、対策が完璧になされているんじゃないかと
勘繰ってしまうところである

一応穴熊ではあるものの、ハナから香車先の歩がだいぶ突き出ているし
一間飛車にしてから、穴熊にしだすため、手数がともかくかかっているから
相手の急戦とかにまったく対応できない気がする
あきらめてというか、序盤は目をつぶって、ただエフェクト出すことだけを目指して
そのあとはひたすら乱戦に構えていくしかないのではと思うのである
序盤で、相手が4筋に角を動かしてくることが多いように思うので
飛車角交換は挑みやすい気がするが、この変な穴熊が、はたして飛車角交換で有利かどうか
まったくわからんが、そのあたりをきっかけに序盤研究したらどうだろうと
無責任なことを書いておく

なお、一間飛車、一間飛車穴熊、振り飛車穴熊が、一連で獲得できることもあるようで、
エフェクト集めがはかどる戦法でもある

【読書】あまねく届け!光 見えない・見えにくいあなたに贈る31のメッセージ

2024-05-22 20:55:50 | 読書感想文とか読み物レビウー
あまねく届け!光 見えない・見えにくいあなたに贈る31のメッセージ  
著:視覚障害者就労相談人材バンク有志

視覚障害のある人たちの就労支援組織によって、
働くこと、社会につながることができている人たちの生の声を集めたもの
視覚障害の人は、街中でも時折見掛けるわけだが、
そういう人たちがどういった仕事についているか、また、
そもそもどうしてそうなっていて、どういう仕事をしているか、
その実際の声が集まっているので、非常に興味深い内容でありました

大きく、先天性の人と後天性の人の二つに別れそうでもあるのだが、
どちらでも、結局のところは自身の努力と周りのサポートという両輪があって
就労あるいは、貢献といったことになっているとつくづくわかる内容
特に、コミュニケーションの重要さをあげる人が多く
支えられている、また、そこに与することで社会に属していることを
コミュニケーションによって叶えていることや、その使い方にはっきりと言及しているところが
大変よいと思われたのである、これは視覚障害に関係なく
仕事をするということにおいて、どれほど重要かという証左でもあるし、
そこに眼が見えないということによってとても強い気づきを得ているというのが興味深い

語る人も様々で教育関係から、金融、メーカーなどの一般起業もあり、
その場所で目が見えないからとあきらめるのではなく
できること、ないし、だからこそできること
そんなことを自身で開拓しているという強さがあって、
凄いなと素直に感心するのでありました
また、人それぞれで、社会に属していること、だけど世話をかけたくない
そういう葛藤も当然あるけども、そこを乗り越えて、サポートへの感謝と
それが負担ではないものとして認識できるような環境づくりがあってこそ
そこの努力は語られていないのだけども、
大切なことだなと伝わってくるもので大変よかったと思うのである

しかし視覚障害とは、忍び寄るようにやってくるものあるようで、
判定されると随分高級な障害であることも多々のようで
判定診断されるまでは普通に暮らしてて、ちょっと見づらいなとか
そういうこともあるというのが、結構衝撃ではあった
自分にも何かしらあるんじゃないかと思ってしまうし、
また、事故でそうなることもある
だからといって何がということでもないし、
そういうことを言っている本ではないのだが
つと、自分ごととして考えて、そもそも、そうならなくても
ここに書かれているような気持ちと、働き方は
障害に関わらず必要なことだと思って、少し、背筋が伸びるようでもあった

あと、ちょっと変わったタイトルだなと思っていたのだが、
「あまねく」という言葉をどうしても使いたかったのだろうと思わせる記述もあり
これもまた、人のつながりというものの発露だなと
思ったのであった

【映画】碁盤斬り

2024-05-21 20:57:39 | ドラマ映画テレビ感想
時代劇作品が続いていて嬉しい昨今
割と評判よいと聞いて、楽しみにして見てきたのでありました
てっきり藤沢周平の新しい必殺剣だと思っていたんだが、
まったくそういうのではなく、原題は落語の噺だそうで
それをアレンジした作品の映像化
日本的復讐劇と、どっかで紹介されていたが、つまるところ「仇討ち」を描いた作品でありました
昨今、仇討ちというジャンルがそもそも認識されてないということかと
ちょっと驚いたというか、考えてしまったんだが
そんなことないのかあるのか、
でも、作品にはその執念というか、晴らさねばならぬことという思想が
ばりばり感じられて、凄くよかった
こういう話が見たかったとすら思えるくらいで
そう考えると、落語なりの噺を映像化する時代劇というのは
チャンバラとしてもすごく面白いのではと今更ながらに思ったのである
講談はよくしらないから、こういう方面でたくさん見たいかも

と、まぁそんなことを書きつつも
話しの方は、かなり静かなもので、タイトルにもある碁を打つシーンが結構多くて
ちょこちょこ囲碁棋士が出てたそうだが、多分あれが井山さんだよなと
それしかわからなかったわけだけども、町人にしちゃぁ手が綺麗すぎんかと
思ったりしつつ、まぁ、そこはそれとして
碁のルールもわからないまま見ていたので、迫力のそこかしこが理解できなかったのが
少々無念であった、特に最初の萬屋との一局と、終盤の仇との一局がどういう碁だったか
ストーリー上すごく大切な一局だったのだが、いかんせん知識がないので
どうであったか、そこがいまいちわからなかったのが残念だった
映画としてはそれでは話にならないので、
ちゃんと自然に碁の内容がどうであったかを語られているわけだけども
それを碁の盤面から読み取れたら、もっと面白かっただろうなと
少々悔しく思ったのである
こういうのの将棋版ないのかなぁと思ったが、多分俺の棋力では結局わからない気がするな

清廉さというもの、それに関する良し悪しが見える展開がよくて
必ずしも正しいものが正しいとも言い難い、
世の中によくあるそれを丁寧に描いていて、
序盤で萬屋が、凄く嫌な感じの登場から、毒気が抜けたように
いや、実際抜けたんだと思うのだが、見事によろしくなって、
その思いとすれ違いと、せっかくの思いとかが
実にうまく台無しとまでいわないが、折れてしまう、枯れてしまうといった感じで
これが歯がゆくてすごくよかった
当然、演じてる國村さんが抜群に美味いからというところもあるけど
朴訥とした草薙くんの演技も素晴らしくて
後半仇を追う場面になってからの、髭面がいかにも素浪人という感じがぎらぎら出ていて
凄くよかったと思うのである

殺陣シーンもそこそこあるし、見せ方があっさりしてるけど
そこだけに絞っていたのがすごくよかった
だらだらと長丁場のそれではなくて、何度も斬りあいをするのではなく
一発で決まる、それが見事に描かれていて個人的にはいい殺陣だと感激したのでありました

何より、娘役の清原さんがこれまた抜群によくて
時代劇もすごい似合うなと感心したんだが、
物凄く美人になったなと、あどけなさが抜けてきて
妖艶さとでもいおう美しさが伴ってきてて
時代劇のヒロインとして、完璧な町娘に仕上がってたのが
見所の一つにあげられるほどだったと思うのである
武家の娘といわれてもなんら違和感がない、凛とした佇まいも出せるし
でも、長屋暮らしでも違和感がない、子供相手にはお姉ちゃん感が出てるしという
いやー、凄くよかったなとほれぼれするのであった

全体的に地味ではあるんだが、話は人情話のようでもあるが
はっきりと敵討ちのそれを真向から描いていて、
それでありながら、一辺倒に本懐を遂げて終わりなんてこともなく
よいラストが用意されていたところも含めて
大変楽しく見られたと思うのである
渋いけど、いい映画、いや、時代劇だった

【読書】レッド・アロー

2024-05-20 21:05:32 | 読書感想文とか読み物レビウー
レッド・アロー  作:ウィリアム・ブルワー

あかん、読んだのにまったくわからなかった
売れない画家志望だった青年が、たまたま書いた短編小説が大当たりして
というお話なんだけども、終始、この青年がうつ病および精神病に侵されていて、
その意識のはざまとのいったりきたりというか、
どれが本当で、どれが妄想で、かつ、どういうことか
まったく区別がつかないまま読んでしまって、
結局なんかわからんけど、最終的に緩解したなと
そんな感想しか抱けずに終わってしまった
もっと、色々と思うところのある話だったように感じるのだが
なんというか、自分の読解力が情けない

扱っているテーマは、物理学もあったりして
しかもとりわけ難しい時間概念の話で、
さらにそれを認識するということが、他者の記憶をたどることで混同することと
なんかある種の相似を見せるとかうんたらかんたら、
難しすぎてわけわからんと思って、巻末の解説に頼んだら
それがまた、大好きな円城塔だったので、いっそうわけわからんようになって
どうも、半分というか、結構な分量が著者の実体験でもあるそうで
そうならば、これは疑似私小説のようでもあったりして
なんというか、うつ病を乗り越えた人の話で、それを幻覚物質を使ってやったという
体験記でもあったりと、なかなか超神秘的というか、うさんくささもあいまって
面白いという印象になるのでありました

内容として印象的なのは、追い詰められていく様、
たまたま当たった小説の次を書こうとしてうまくいかない、
その部分と、それを先送りにしてしまうところなんかが
凄いリアルというか、あるあるといった感じなのと、
うつ病を患ってから治療にあたっている最中の不安との対峙なんかも
手ごたえというか、そういうものなんだなと思わされる内容になってるところ、
そして、物理学者との会話と、そこに出てくる
不思議と相手の記憶とまざってしまう話
このあたりが、ただ筋として面白いと思えて記憶に残ったのだが
小説として、このあたりがどう成立していたか、そこが思い出せないくらい
うまく読めなかったとメモっておくのである

断片的に理解できるけど、全体はわからないというのが
最近よくあるのは、記憶欠如の問題もありそうだけど
なんとも自分の能力不足を感じるものとなったのだった

光る君へ  望みの先に

2024-05-19 20:45:52 | NHK大河ドラマ感想
NHK大河ドラマ「光る君へ」
視聴完了しました
よい話がまひろの元にはくるけども、内裏はだいぶやばいというか
まぁ、当たり前の結果なんだが、ひどいありさまだなと
しみじみ感じ入る内容でよかったのである
凋落、そして、醜態といっても過言ではないそれに憐憫を覚えるというか
これもまた、貴族よなぁと思ったりして
凄くドラマを楽しんだのでありました

花山天皇がもっと出てくるかと思ったけど、
おどおどしているだけで終わってしまって
凄く残念だったんだが、思った以上に大変な事件で
また、転がるように対応間違って、伊周が凋落していくのが面白い面白い
そして、最終的に嫌って仕方ない道長に頭を下げにきて、
遠くに流されることが決まってのあれこれっぷりも酷くて
本当、何一ついいところないなと驚くほどであった
実際そうだったのか知らないが、まだ若いのに難儀なことだと思うのである
弟は後々活躍すると聞いていたが、
晴明もそう言ってたから、その内出番がありそうで楽しみである

さておいて、まひろ側の方だが
清少納言の噺も引き取りつつもといった感じだが、
とりあえず父上の任官叶うあたりと、さらに転地によって
未曾有の大出世となるのが、父上のとぼけたでもない
あのまんまの演技が実によくて感心してしまった
ああいう父親だからこそという感じが、凄く物語として気持ちがいい
そして、ちゃんと親子で語り合い、はたして
通じ合ったかわからんが、伝わったというのも
ほのぼのしててすごくいいシーンだったと思うのである

半面でもないが、清少納言は事件に巻き添えくって酷いありさまになっていくようで
どうもこの物語では仲良しのまんまになりそうだなと思うのだが
それはそれでよいので、枕草子の憐憫が描かれそうな次回がすごく楽しみなのである
あれが、悲しい話というか、過去の輝かしかった頃をうたったものだったと
最近知ったので、それをどれくらい儚く描いてくれるか楽しみでならんのである

あとは、呪詛のあれこれというのが誰が仕掛けたものだったか
そこはこれ以上掘らない様子なのかわからんが、
アレ、道長の嫁がやってるんじゃなかろうか
それも晴明使ってということを考えたのだけども
晴明がもはやそこは意味がないなどと言い捨てていたので
解決することないままなのか、あるいは、何かの伏線となるのか
わからんけど、もやっとしたものが残るのもまた
平安時代っぽい、魑魅魍魎の暗躍をうかがわせる感じで楽しいのでありました

来週が待ち遠しい

【読書】シナリオ・センター式 物語のつくり方

2024-05-18 21:05:47 | 読書感想文とか読み物レビウー
シナリオ・センター式 物語のつくり方  著:新井一樹

小説だと思ったら、小説書く方法のノウハウ本だった
教科書のようでもあり、シナリオセンターという養成所で教えている内容のようで、
興味深く読んだのであります

物語の勘所、テクニックでどうにかなる部分を補完してくれるというもので、
物語をロジックに分解して、どういうものかと説明しているのだが
そこまで深く、論文めいたものではなく、浅瀬でとどまった内容なので
さくさく読めて、なんとなく、こうしたらいいのかなというのが伝わってきてよかった

実際に使って書くというのも一つだと思うのだが、
読む、見るが多い自分には、むしろ、これによって構成の狙いだとか
そういうのが読み解けるようになりそうで、そっちが楽しみになる本であった
特に、映像系においての手法というか、技術について面白いところが多く、
小道具の在り方で表現しているものとか、
よく聞く映画の見方に近いそれだと思うのだけど
実際に論理として知っていると、違う見方もできそうで楽しいのである
とはいえ、諸刃といってはあれだが、そういう見方をしだすと
素直に物語を楽しめなくなりそうでもあって、こういうのは危険だなと思ったのである
まぁ、そういうのを吹っ飛ばすくらい面白いものを見たらいいわけだが、
なんというか、そういう評論めいた見方で、それを語るようにだけならないように気を付けたい(なんなんだ)

さておき、キャラクタと物語の関係性や、
アイデアの源泉となりそうなヒントも書かれていて
素人が陥り勝ちな、ありていな展開というものの仕組みもわかったりして、
物語はともかく、プレゼンやらなにやら、作るときに生かせそうだとも思ったりして
楽しく読み終えたのである
技術論や基礎というのは大切にしたいものである

最近の流行だからかと囲ってしまっていいものか、
漫画原作としてのシナリオ作りにも言及していて
まぁ、やってることは、漫画だろうと、演劇だろうと同じで
シナリオというものの基本を書いてなるほどなと思わされる一方で、
こういう基本をとりあえず叩き込まれた、何百という人たちが、
世の中のありとあらゆる何かのシナリオ書きになってんだろうかと思うと
凄いことだなと、また、うがったことを思ったりするのである
でもこういう基礎があるから、とりあえず、埋める物語というのを作ることができるなら
エンタメ業界に必須のそれのようにも思うのであった

漫画については、絵もシナリオも両方できるというのは非常にまれだからと、
はっきりと言及していて、最近流行のなろう小説の漫画化とも
何かしら影響というか、どっちが先かわからんが、
こういう流れというものが、物語を作る業界にあるんじゃなかろうか
だんだんと、この本の主旨からまるで離れたことを考えつつ
楽しく読み終えたのでありました

【読書】半暮刻

2024-05-15 20:55:26 | 読書感想文とか読み物レビウー
半暮刻  作:月村了衛

半グレを扱った話なんだが、
結構直接的な批判というか、なんとなくありそうな不穏、不平を扱っていて
ぐいぐい読まされてしまった、どうなるんだと思いつつ、
その不穏さが二手に分かれて、希望とそうではないもの、
あるいはどちらもそうであったみたいな感じになっていくのが
辞められないくらい面白く読まされてしまった

生まれの良し悪しという背景と、能力の多寡、
これがある種の善悪と結びついていく様が、対極となる二人の男を中心に話が進むのだが、
善悪というものをどう捉えるか、捉えることができるかというのが
人間の性質によるものなのか、色々なものが似ているようで
まったく異なる、そういう人は相容れることが決してない
没交渉という残酷を描いた作品のようでもあったけど、
これもまたリアルというか、この物語としては、そこに嫌悪が残るけど
解決はしない問題を扱っていてすごくよかったと思うのである
読んでいて、なんとなく、情緒にふれて判断してしまった結果が、
海斗の不幸を悲しむ気持ちになっているようでもあって、
だからといって、海斗がやってきた前時代的なものを否定できるだろうかとも
思わされたりするのである

モチーフが結構先鋭的というか、昨今問題になったそれこれのイベントを当てていて
かつ、その根幹に人の問題、とりわけ倫理を含めた人格の問題じゃないかと
能力とは別のものについて考えさせられるところがよいと思うのだが、
はたして、それを良いという判断は、善意からくるのかやっかみなのか
はたまた、そういう時代ではないということなのかとか
色々と考えてしまう模様をもっていて、凄く面白いと感じたのである

物語はわりとすんなりというか、複雑ではないわかりやすい展開で、
さくさくと読めるし、そこで想起する感情は、期待通りというか、
わかりやすく抱けるものとなっているのだけど、
本当にその感情のまま読んでいいのか、そうではない不気味さというか
それに対する反応というものが、何か、その悪意とも異なる悪に似たものじゃないかと
思ったりしてしまう読書となったのである

何書いてんだか、よくわからなくなったが、
いわゆるやり手という手口を努力と呼ぶのか、
そういう倫理観と対峙することが最近増えてるのか、
それにノれないから、そう思うのか
わからんけども、描かれていた悪のようなものに対して、悪感情を抱いたのは確かで
ある種の悲しさというか、諦めみたいなものを覚える物語であった

しかし扱ってる物がアレすぎて、映像化できなそうなのが残念だ

【映画】鬼平犯科帳 血闘

2024-05-14 21:05:22 | ドラマ映画テレビ感想
封切初日にさっそく見てきたのである
前回ではないけど、昨年見た梅安先生から待ちわびた作品で
新しい鬼平が見られるというだけで心躍らせていたわけで
見た感想としても、そうか、これが新しい鬼平なんだなと
堪能しきって帰ってきたのであった

鬼平については、テレビ版をたまに見ていたというくらいなので、
正直、メインの話とか知らないままだったのがよかったのか
今回は「おまさ」が密偵(いぬ)になる話だったわけで、
そのあたりのやりとり、世界観というのが当たり前であって、
それを前提にの会話やりとりなんかがいいなぁ、時代劇だなぁと
前時代的なそれを感じつつも、楽しく見ていたのでありました

流石に血族といってしまうと、不用意とも思うのだが、
現在の幸四郎さんの声が、時折、先代鬼平そっくりの時があって、
また、佇まいもふとしたところが似ていたりするのが驚きなんだが、
そこはそれ、もはやいるだけで鬼平とまで一体化していた先代と異なり
これから作っていくというところもあろう、独特の色気みたいなのも
ちらちら感じられて、もっと数を重ねて新しい鬼平となっていく様を見たいと
強く願うような感じになったのである

鬼平として見た時に、ちょっと久栄さんに遠慮しすぎな感じになってるのが
現代調ではあるんだろうが、なんか鬼平っぽくないというか、
ちょっと三枚目がききすぎてて、ややもすると主水みたいに見えてしまいそうだと
不安に思っていたんだが、流石に殺陣というか見栄がよくて、
今回は結構ピンチになるシーンが多かったんだが、
そこでの立ち回りが、そういう歌舞伎演目もあるんだろうけど、松を背負って、
くるくるとまわりながら敵を捌くというシーンが、凄く流麗で印象的だった
殺陣というよりは、やはり、歌舞伎を見ているといってもいいような
そういう独特の魅力があったと思うのである

殺陣シーンは結構ふんだんにあったし面白かったけども、
ぎらぎらとした殺陣そのものが迫力を押し出してくるというよりは
さらっと流しているけど、かっこいい喧嘩シーンといった感じに仕上がっていて
これもまた新しい殺陣っぽくていいなと感心したのである
剣劇的にはちょっと、違和感というか、軽いと感じるところもあったけど
もうちょっと慣れてきたら変わるかもしれないし、
むしろこれが味のようにも見えたので、まぁともかく次が見たい(なんだかな)
途中、相手の強い奴を切るシーンで、一度切って再度向かってくるという
お決まりシーンがあったんだが、その時にどっちも、下からの切り上げを使ってて、
そこは、一回目が切り上げだったら、次は切り下ろしの方がよくないか?とか
素人だてらに思ったのだけど、ともあれ、全体的には
迫力あるシーン多めで楽しかったのであった

役者としては、敵役の北村有起哉さんが抜群によくて、
殺陣とかじゃなく、啖呵と演技で見事に悪役を演じきっていたのが
凄い印象的でとてつもなくよかった、
あの悪辣さを細い体から発することで、無頼の感じがよくでてて、
むきむきのやつが必ずしも怖いわけではないということ、
そして、卑怯に逃げ隠れするというところがすごくしっくりときてて
最高にいい悪役だったと思うのである
一回きりの敵というのが惜しいのだが、素晴らしかった

あとは、ちょっとだけ出てた京極様が、まさかの雲霧(違う)で、
もうそれはそれで騙されてんじゃないか鬼平とか思ってみてしまったんだけども
時代劇をやれる人材が減っているということなのか、
いや、これはこれで面白いとみるべきか
中井貴一さんの演技の見事さが、わずかなシーンしか出番がなかったのに
こちらも印象が強く残ってすごかったと思ったのでありました

あとは、柄本親子が出ていて、こちらはネタバレになりそうなので
あまりあれこれ書けないところだが、流石にこの親子を出しておいて
役どころはなるほどなと思ったりして、
何かしら次回作を作る種はまかれていそうなので、
そっちも楽しみだと思ったのである

と、まぁ、長くつらつら書いてしまったが
これ見た時、遅い回だったとはいえ、ほぼ貸し切り状態で見てしまったので
ちょっと時代劇大丈夫かしらと心配で仕方ないのだが
なんとか、次のをやってもらいたいと、強く願って
感想を書いておくのである
凄く楽しみなシリーズが始まったと思っているんだが、なんとかならぬだろうか

【読書】フェスタ

2024-05-13 21:05:00 | 読書感想文とか読み物レビウー
フェスタ  作:馳星周

今回は徹頭徹尾競馬の物語だった
色々と黒いものが出てくるというわけではなく、ただ、
産駒がG1で勝つか、凱旋門賞で勝つかと、そこに血道をあげる男たち
あるいはその周辺の家族たちの物語で
聞かん坊の馬「カムナビ」をなんとか勝たせようとまわりの人間が
苦闘しながらも、その夢に飲まれていくように、
輝かしいその瞬間を生きていくという感じで、
小難しいというか、様々な問題は最小限で、ただ、馬が競馬で勝つ
そのために一喜一憂する人々の姿が描かれていて、
純度の高い競馬小説になってて、凄い楽しかった

スポーツもの、それも、ボクシングものに近い感覚だなと、
追い込んでいく姿や、その努力に四苦八苦するというストイックな内容がよくて、
ぐいぐい読まされてしまったのだが、負けるときは負ける、
勝つときは勝つ、そのメリハリがまた読んでて気持ちがいいし
ともかく楽しいのであった

悪役が出てきてという人間のいざこざというのはなくて
馬と対決しているといっても過言ではない、
この気難しい馬をどうやって調教して勝たせるか、
物凄いポテンシャルがあることを皆が認めていながらも、
それを出し切れない、出す気がないといった風すらある馬、
その狡猾さも含めて、魅力的に見えるというのが、実在の馬のそれと一緒なんだろうと
よく知らないけど、わくわくさせられてすごくよかった

物語としては、馬主に不幸があったり、
少なからずの辛い場面はあるのだけども
真剣勝負のまま、そこに横やりが入らないでというところが気持ちよく
最後いったいどうなるんだと、期待を持たせたまま進むのがまた、よかったと思うのである
登場人物に感情移入ではなく、読み手も同じように揺さぶられるというか
この馬なんとかなりそうと夢を見させてくれるのがたまらない

カムナビという馬が、あらゆることに影響を及ぼし、
それに触れた人たちがみんな何かをつかんでいくという
ご都合といってしまえばそれまでなのだが、それこそがとてもよい、
そうなって然るべきといった魅力を描き切っていて
競馬に取りつかれる、そのロマンが詰まっていたと
メモっておきたい小説だった