人生に空虚感を抱き始めた中年のダメオヤジが、12歳の少年との交流を通して
生きる力を取り戻していく姿を描いたハートウォーミング・コメディです。
アルコールとギャンブルを愛する、嫌われ者の偏屈親父ヴィンセント(ビル・マー
レイ)は、ブルックリンの一軒家に愛猫と暮らしています。
隣に引っ越してきたシングルマザーの看護師マギーから、彼女の仕事中に12歳
の息子オリバー(ジェイデン・リーベラー)の面倒を見て欲しいと頼まれます。
嫌々ながらも時給12ドルで引き受けたヴィンセントは、行きつけのバーや競馬場
にオリバーを連れて行き、バーでの注文方法からいじめっ子の鼻のへし折り方ま
で、ろくでもないことばかりを彼に教え込んで行きます。
オリバーはそんなヴィンセントと反発しあいながらも、一緒に過ごすうちに彼の隠
された優しさや心の傷に子供ながら気づいて行きます・・・。
マーレイは本作でゴールデングローブ賞主演男優賞(コメディ/ミュージカル部
門)にノミネートされましたし、オリバーの母親役に「ブライズメイズ 史上最悪の
ウェディングプラン」のメリッサ・マッカーシーと顔を揃え、ナオミ・ワッツが妊婦の
ストリッパー役で出演するなど楽しみ一杯の顔ぶれです。
何と言ってもビル・マーレイの偏屈親父と少年役の演技が出色ですし、この作品
に出てくる人物は超個性的な役柄ばかりですが、いずれも熱演でこなしています。
各所にありますが、無理に笑わせなくても自然に微笑むに至り、楽しく見ることが
出来ます。
監督はCM出身のセオドア・メルフィで、脚本も彼のオリジナルだそうですが、音楽
のセンスも良く有望な新人監督の出現です。
エンド・クレジットはビル・マーレイが主題歌を調子っ外れで歌うシーンなのですが、
これがまたたまらなく味があっていいのです。このような作品でも好き嫌いがあろ
うとは思いますが、私としてはお薦めの一本です。