早くも11月。
かつては、木枯らしイメージだったが、やはり温暖化かな。
本書は、出たばかり。
興味のあるテーマだったこともあり、あっという間に読めた。
最初は、安本氏の初期の研究の話だが、文章の句読点や、単語の使い方などを、機械的にデータ化することにより、作者の個性や、同一性などを、分析してきたという。
この手法は、西洋には、昔からある手法で、一つの物語でも、途中で、作者が変わったことなど、見事に分析できるらしい。
そこから、邪馬台国論争に参戦し、邪馬台国の会を長年主催していらっしゃる。
80代後半の方だが、お母上が、109歳の天寿を全うされたというから、これからも活躍されるだろう。
その、これまでの、集大成的な本が、本書だ。
私も、高校の日本史で、長々と邪馬台国論争の講義を聞き、興味を持っていたが、その頃は、魏志倭人伝に描かれた行程を、どう解釈するかに焦点が当たっていた。
永遠に解けないなぞなぞのようなものだったかもしれない。
その後、纏向遺跡の発掘で、近畿説勢が、勝利の雄叫びを上げたが、九州説勢が、反撃の狼煙をあげという展開は、オンタイムで見てきた。
その時も、私自身は、どちらが正しいのかよくわからなかったのだが遺跡巡りをするようになって、大きく九州説に傾いた。
まず、時代が、やはり奈良より、九州の方があっているのではないかということと、発掘された鉄器の多さが、圧倒的だったからだ。
本書は、まさに、全国各県で発掘された、魏志倭人伝に出てくるツールの分布を、徹底的に、データ解析した。
徹底的と言っても、何万もあるわけではないので、AIなど、必要ない。
そして、99.9%九州説と結論づける。
この99.9%という数字は、当てずっぽではなく、この分析手法から、編み出された数字だという。
誰が見ても、説得力があると思うのだが。
さらに、日本、中国で発見された銅鏡の分析。
これは、私は、銅鏡もかなり見ているにもかかわらず、よくわからなかったのだが、圧倒的に、九州説を支持する結果となった。
我田引水ではなく、客観的に説明されている(文調は、やや感情的だが)。
江戸時代から続いているこの論争は、ここ半世紀の発掘、研究の成果で、ほぼ決着がついたように見えるのだが、どうか。
著者は、東遷説なのだが、これはいろんな本を読むと、旗色が悪いかもしれない。
ただ、邪馬台国が、大和政権に繋がったと考えた方が、都合がいい面もあり、今後の議論の発展に期待。
とにかく古代史は、面白い。