十字軍物語の第二巻が出た。
面白い!
塩野七生が止まらない(東京ガスの宣伝の捩り)といった感じだ。
第一巻では、十字軍が、第一次遠征で、イェルサレムを解放したが、第二巻では、第二次遠征が失敗し、イスラムが、逆にイェルサレムを解放する物語。
ジハードというと、アルカイダのためによくないイメージがあるが、本書を読むと、どっちもどっち。いや、イスラムの方がまともではないかという印象さえ受ける。
イェルサレム奪回を果たした、サラディンの戦法によるところが大きい。言い過ぎかもしれないが、三国志の諸葛孔明みたいなところもある。イェルサレム解放後も、キリスト教徒の巡礼は、認めたという。
一方、キリスト教側の、やり方がひどすぎる。この時期、しっかりした指導者にも恵まれなかった。
この時期、テンプル騎士団、病院騎士団(聖ヨハネ騎士団)が、活躍する。イェルサレムを第一次十字軍が解放した後、イェルサレムへの巡礼者を守るのに活躍した。洋画を見ていると、時々テンプル騎士団が出てくるが、これがスタートだったのだ。イスラム教徒に対しては、かなり過激だったらしい。今のイスラムにおけるアルカイダのようなものか。テンプル騎士団は、そのほとんどがフランス人だっという。宗教感もあるが、お国の事情も大きく影響している。
最近の中東情勢の動きの中で、シリアのダマスカスがよく出るが、イスラム教徒にとって、バグダッドを建設するまでは、ダマスカスがイスラム世界の首都だった。サラディンが、1187年にジハードを宣言したのも、このダマスカスだ。
サラディンの前に、イスラム側のトップは、ヌラディン。戦略を練るために、地図を見ていた時に、地図に、覆いかぶさるように亡くなったという。歴史では、病死となっているが、塩野流解釈では憤死となる。サラディンの台頭に対する怒りによる憤死だ。
マキャベリは、成功するリーダーに必要な条件として、力量、幸運、時代が必要としている資質をあげているが、サラディンは、まさにその条件を満たしていた。
ハッシッシを吸う男たちも登場する。その時代に生まれたカネで動くイスラム系の暗殺集団だ。アサシンの語源になっている。テンプル騎士団が一度壊滅したそうだが、今でも消滅したことは実証できない。過去の話とは言い切れないのだ。
塩野さんファン、戦記もの好きの方に、強くお勧めできる。
今回のリビアへの空爆で、また十字軍発言が出たが、ヨーロッパに住んでいないと、わかりにくいのが正直本音だ。例えば、イラクの時あれだけ渋ったフランスは、今回は、積極的。十字軍の歴史、シーア、スンニの歴史などが、体でわかってないとなかなか理解できない。学がないと言ってしまえばそれまでだが。
アメリカが今回及び腰なのは、イラク、アフガンで、懲りているという単純な理由なのだろうが。中国が反対しているのは、リビアにお金をずいぶん注ぎ込んでしまっているのが理由だろうか。