気になる議論が浮上しつつある。
元厚生労働省のエリート官僚が「薬価流通政策研究会」(くすり未来塾)を立ち上げ政策提言をしている。
この人は本来なら厚生労働省のトップにのし上がるべき人材だったが、どこかで運命のいたずらにあったエリート官僚である。
厚生労働省を去った後も何かと政策提言を行っている。
その彼が薬価差益についてレポートしている。
それによると中小薬局が加盟する価格交渉のボランタリーチェーンへの「調剤基本料」の見直しである。
以前から、そんな話があったが現実には何も行われていない。
独自の調査から推定薬価差が8~9%で大規模薬局並みでありながら、加盟する薬局は調剤報酬の減額措置がないことへの問題提起である。
余計なお世話だが現実的な話だ。
「調剤基本料」は処方枚数や集中率、さらには企業の規模(300店舗以上)などによって、規模のメリットが考慮されている。
その規模のメリットで最も大きいのが薬価差益ではないだろうか。
従って、それに応じた「調剤基本料」の引き下げがある。
中小薬局は薬価差によるメリットは少ないことから「調剤基本料」である程度保護されている。
ところがボランタリーチェーンは、中小薬局にもかかわらず大規模薬局並みの薬価差益を享受できている。
具体的には大規模薬局の薬価差益は9%台あり、ボランタリーチェーンに加盟する中小薬局は8%台と近似となっている。
実際の中小薬局(加盟していない)は5%台前半まで縮小しているそうだ。
こうなるとボランタリーチェーンに加盟する薬局は中小と言えども大規模薬局並みでもいいのではないかと言う話になってくる。
こんな話が出るとボランタリーチェーンに加盟する薬局は気が気じゃない。
今さら価格交渉など出来ない。
このブログでも言っているが価格交渉に対する”廃用性症候群”に陥っている。
因みに「調剤基本料」が「1」から外れると「地域支援体制加算」もどうなるか分からない。
かなりヤバい話だ。
ここだけの話ではあるが医薬品卸のMSにとっても大変な話である。
ボランタリーチェーンに加盟してくれると価格交渉をしなくて済む。
抜けられると手間が増える。
楽な仕組みはいつまでも続かない。
因みに、元厚生労働省のエリート官僚は岸田政権時に内閣官房健康・医療戦略参与を務めており、石破政権でも続投となっている。
影響力のありや、なしや。