見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

華やかなうつわたち /根津美術館

2005-01-22 20:57:21 | 行ったもの(美術館・見仏)
○根津美術館『華やかなうつわたち -伊万里・柿右衛門・鍋島-』

http://www.nezu-muse.or.jp/

 「陶磁器を愛でる」というのは、育ちがよくて、高級品に囲まれてセレブな毎日を過ごしてしている人の趣味、という先入観があって、ずっと敬遠してきたが、ようやく最近、高いと思っていた敷居をまたいでみた。いくつかの素晴らしい展示会に出会ったことと、それから中国のTVドラマで”古玩(骨董趣味)”を味付けにした作品にハマったことが相乗効果を成している。

 ひとくちに陶磁器と言ってもさまざまだが、自分の趣味にぴたりと合うのは、この「伊万里・柿右衛門・鍋島」に他ならないということも分かってきた。

 私は、この「IMARI」と呼ばれた肥前磁器の華やかさに、「近世」という時代性を強く感じる。日本の近世だけではない。17世紀初頭、伊万里焼は中国の焼き物と張り合い、ヨーロッパでも絶大な人気を獲得した。当時は、地球上の諸地域で、程度の差はあれ、豊かな富を蓄積した市民層が形成されてきた時代であると思う。そして、伊万里焼の、現世的で明快、かつ冒険的で斬新な美しさは、地域を超えて新興階級の趣味に合っていたのだと思う。

 もちろん現実の近世には、明と暗があるのだけど。伊万里焼が象徴するのは、見晴らしのいい、カラリと晴れた空のような、近世の「明」の部分である。

 展示品では「さすが」と思って感じ入った2作品がホームページに掲載されている。1つは「色絵唐花文変形皿」。黒地に白と青の花を浮き上がらせた変形皿である。濃緑の葉っぱと黄色いドット模様の帯も効いている。この、和風でも中国風でもない(あえて言えば西洋風か?)色彩感覚に脱帽。会場では、この隣に並んでいた同名の作品もよかった。ドーナツ型に緑の地釉を配して、隅に白いくちなしのような花が描かれている(画像なし)。

 「青磁染付雪輪文皿」は鍋島の名品である。私は、西陣織のように華やかな伊万里の「染織手」も好きだが、浴衣のような淡白な風合いの鍋島はもっと好きだ。淡い青と緑だけ、またはごく少量の赤を加えた文様もいい。精緻に計算しつくされた図様に、計算外(なのかなぁ)の滲みやぼかしが加えられた姿は、本当に息を呑むばかりである。

 なお、別室では「近世諸派-賀頌の絵画-」を展示中。めでたくて、おおらかな気分になれる。

コメント (1)
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