3月最後の週末は、お別れする職場に休日出勤して最後の片づけ。竹橋の近くだったので、ようやく全て終わってから、近代美術館に寄った。
■国立近代美術館 企画展『イメージコレクター・杉浦非水展』(2019年2月9日~5月26日)
日本のグラフィックデザインの創成期に重要な役割を果たした図案家の杉浦非水(1876-1965)。遺族から寄贈されたポスター、原画、原画やスケッチなどの「非水コレクション」を19年ぶりに一堂に展示する。19年ぶりということは、2000年にも杉浦非水展を開催しているということか。残念ながら私の記憶にはない。
本展の入口には、白黒写真(西洋人の姿が多い)をコラージュしたゲートができていて、え?ここが杉浦非水展の入口?と一瞬、戸惑った。実は、非水は海外の雑誌の切り抜きや写真絵葉書を多数コレクションしているのだ。人物だけでなく、珍しい動物なども。いわばこれがイメージの「インプット」の時代。スケッチブックもいくつか展示されていて、さすが精密で巧い。そして豊かな「アウトプット」の数々。
有名な三越のポスター、そして雑誌『三越』の表紙は、どれも華やかで繊細で高級感がある。でも私はそれ以上に、建造物を大胆にデフォルメして描いたデザインが好き。「新宿三越落成」では建物を上から見下ろす構図、「京城三越(!)」は下から見上げる構図で、その高さ・大きさを強調する。地下鉄のホームに並んだ人々を強い遠近法で縦長の画面に収めたり、ホームに向かう人々を横長の断面図で見せる構図も面白い。
いろいろ関連情報を漁っていたら、三越が2018年のお中元セールで「杉浦非水画限定ギフト」を売り出していることが分かった。いいなあ。どれも欲しくなる。全然、古びてないものなあ。
■同 所蔵作品展『MoMATコレクション』(2019年1月29日~5月26日)
安田靫彦『黄瀬川陣』(3月19日~5月26日展示)を見ることができて、得をした気分。この時期に見ると、義経が新しい職場に配属が決まった新入社員、頼朝がそれを迎える先輩に見えてしまった。10室は春爛漫の花を描いた絵画を特集、川合玉堂『行く春』の青みの強い画面、船田玉樹『花の夕』の紅と白、そして加山又造の『春秋波濤』の黒と金と赤、どれもステキだった。いや贅沢、贅沢。
■同・工芸館 企画展『The 備前-土と炎から生まれる造形美-』(2019年2月22日~5月6日)
実は工芸館は初訪問である。お花見に繰り出した人たちの流れに混じって出かけた。桃山時代の名品から、近現代の備前まで幅広く紹介。やっぱり冒頭に筒形の花入(桃山時代)が4点並んだところは圧巻だった。所蔵者表記がないということは、これらは近美のコレクションなのだろうか? 知らなかった。口は円形だが胴体部分がほぼ三角柱形に潰れた『三角花入』、とてもよい。耳付花入は変形の少ない「銘:深山桜」が、備前にしては軽やかな味わいで好き。
現代作家では、隠埼隆一(1950-)の名前を知ることができてよかった。やっぱりやきものは土なんだなあ。しかし備前のようなやきものを前にして、感触を確かめることができないのはつらい。見ているうちに手がムズムズしてきた。