〇深川江戸資料館 『お化けの棲家』(2025年8月15日~8月17日)
写真を主にしたイベント報告が続く。「お化けの棲家」は、毎年お盆の3日間に行われる深川江戸資料館の夏の風物詩らしいが、私は初めて行ってみた。
江戸末期の深川の町並みをリアルに再現した常設展示室は、いつもより暗めの照明。入口に用意された「お化けマップ」によると、全部で24体のお化けが隠れているという。たとえば大店の門口には傘お化け。
川岸の柳の下には、女性ののっぺらぼう。
米蔵を覗くと「蔵の大足」。あとで調べたら「本所七不思議」に、毎晩「足を洗え」という声とともに、天井から巨大な足が降りてくる話があるそうだ。迷惑な妖怪である。「稲生物怪録」にもなかったかしら?
これは「五徳猫」。人がいない間に火吹竹を使って囲炉裏に火を起こす猫の妖怪だそうで、いいやつなのか悪いやつなのか、よく分からない。鳥山石燕の『百器徒然袋』に登場するのだという。さすが石燕先生。
床下や屋根の上や、トイレの中に潜んでいる妖怪もいる。しかし大人も子供も「ケウケゲンだ、ケウケゲン!」とか「トイレにはがんばり入道が出るぞ」とか、お化け・妖怪に詳しすぎるのは、私が全力で「日本文化スゴイ」と思うところ。
このほか、生身の人間が扮したお化けも3~4体うろうろしていた。頼めば一緒に写真を撮ってくれたり、フレンドリーなお化けだが、怖がって泣き出す子供もいた。私も産女のお姉さんにはドキドキしてしまってあまり近寄れなかった。
展示コーナーには「深川七不思議」の浮世絵風新作版画が展示されていた。私は、母親が深川、父親が本所の生まれだったので、幼いことから「本所の七不思議」の話はよく聞いたが、こちらは初耳だった。「深川七不思議」は、「永代の落橋」「高橋の息杖(いきづえ)」「閻魔堂橋恨みの縄」「仙台堀血染めの下駄」「八幡山の破れ障子」「六万坪の怪火」「万年橋の主」の7つで、全体に血なまぐさくて、「本所」の「置いてけ堀」のようなユーモアが薄い。なお、ほかに「木場の錆鎗(さびやり)」という、どういう内容か伝わらない不思議が1つあるそうだ。
実は、千住や馬喰町、八丁堀など、「七不思議」は江戸の各地にあったそうで、たまたま見つけた「霊岸島の七不思議」に笑ってしまった。「蕎麦屋だが米屋三左衛門という店がある」って、「深川七不思議」とは、ずいぶんテイストが違う…。