goo blog サービス終了のお知らせ 

見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。
【はてなブログサービスへ移行準備中】

2025年5月関西旅行:MIHOミュージアム、細見美術館

2025-06-08 23:11:02 | 行ったもの(美術館・見仏)

MIHOミュージアム 春季特別展『うつくしきかな-平安の美と王朝文化へのあこがれ-』(2025年3月15日~6月8日)

 先週末の関西旅行の記録、ようやく最終日に到達である。日曜は朝イチ、石山駅から路線バスに乗ってMIHOミュージアムに向かった。本展は、古筆をはじめ、工芸品や仏教美術、琳派の源氏物語図屏風、歌仙絵など、貴族文化の誕生から桃山初期に興る王朝文化への憧れがこめられた作品を織り交ぜて展観する。

 冒頭は二月堂焼経、賢愚経断簡(大聖武)などの古経と小さな誕生仏(飛鳥時代)、迦楼羅の伎楽面(奈良時代)など、大陸文化の香り高い「王朝前史」から始まる。そして王朝文化のあゆみが始まるのだが、『宝相華鳳凰文平胡籙』は初めて見たような気がする。ニワトリのような鳳凰が2羽ずつ対面で4羽、螺鈿で描かれている。宝相華には青い石が嵌め込まれていた。美麗このうえなし。あと、透かし模様の入った『球形香炉』は、あ、中国の古装ドラマで見るやつ、と思ったら、これは中国・唐時代のものだった。定朝様の立派な阿弥陀如来坐像を眺めて、次の展示室に進むと、赤い衣の『阿弥陀仏』(原三渓旧蔵、鎌倉時代)が掛かっていた。MIHOミュージアムのコレクションのページに写真があるが、薄暗い展示室で見るほうが、趣きありげだったように思う。

 続いて「名帖『ひぐらし帖』を中心として」と題した古筆切のセクションに入る。実は、全く予習をしてこなかったのだが、本展は、MIHOミュージアム所蔵の『ひぐらし帖』の初公開をうたっている。『ひぐらし帖』は吉田丹左衛門によって手鑑として作られ、安田善次郎を経て、菅原通済(1894-1981)が再編・軸装したものだという。私はパネルの説明を何度か読み直して、「手鑑」としての『ひぐらし帖』は存在しないことを理解した。展示室に掛けめぐらされた古筆切の軸の多くに「『ひぐらし帖』収載」のキャプションがついている。この展示空間そのものが、いわば『ひぐらし帖』なのだ。展示替えがあって、一度に全件を見ることができなかったのは、残念だがやむをえないところ。

 高野切第1種は『ひぐらし帖』収載分ではなく、別の「個人蔵」(としのうちにはるはきにけり) だった。第1種には、私の好みに合うものと合わないものがあるのだが、これは気に入った。石山切は、伊勢集2件、貫之集2件を見ることができたが、料紙のデザインがあまり派手でなく、筆跡の美しさを堪能できてありがたかった(特に貫之集、定信筆)。表具の魅力的なものが多かったので、図録に軸の全体像の写真が掲載されているのには感心した。私が特に好きだったのは『ひぐらし帖』収載の『香紙切』(大きな青い鳥)、個人蔵『紙撚切』の花と市松模様の裂もよかった。

 その後、茶の湯と古筆のセクションで、膳所焼美術館所蔵という茶道具がいくつか展示されていた。膳所焼の名前は知っていたが、美術館があるのは知らなかった。今度行ってみよう。

 ミュージアムショップで、格安のおみやげ、古筆のしおり(1枚90円)を購入。裏面は表具の写真が使われている。左が伊勢集、右が貫之集。なお、展覧会タイトル「うつくしきかな」が「仮名」に掛かっていることには、帰りのバスの中で気づいた。

細見美術館 『広がる屏風、語る絵巻』(2025年5月24日~8月3日)

 もう1か所行けそうだったので、石山→山科乗り換え(地下鉄)→東山経由で同館へ。空間に広げて鑑賞した屛風と、手許で展開して楽しんだ絵巻を紹介する。細見コレクションの『豊公吉野花見図屏風』と『祇園祭礼図屏風』は何度か見た記憶があった。個人蔵の『洛中洛外図屏風』は初見だろうか。近年確認されたものとあり、エンボス加工強めの金雲が目立つ。左隻は将軍参内の図で、直垂の従者たちが仲良く手をつないでいるように見えた。『観馬図屏風』は、右隻に11頭、左隻に10頭、さまざまな毛色の馬を描く。乗馬しているのは直垂姿の武士たち。白衣に黒烏帽子で馬の世話をしているのは、もっと下っ端の従者なのかな。

 がらりと雰囲気を変えて、鈴木其一『水辺家鴨図屏風』は、媚びない写実なのにひたすら可愛い。『撫子図屏風』も美しかった。和歌の歌枕である「常夏(とこなつ)」を思い出した。『源氏物語図屏風・総角』は岩佐又兵衛筆とされる。大勢の男たちを乗せた2艘の舟が宇治の八の宮の屋敷に向かっていく。吹き抜け屋台の手法で、屋敷の中から様子をうかがう女性たちの様子も描かれる。すれ違うのは柴を積んだ小舟。

 絵巻では『狭衣物語絵巻』に「藤」「山吹」という2件の断簡(軸装)が伝わっていることを知る。『硯破草紙絵巻』は室町幕府第11代将軍足利義澄が愛蔵していた作品だというが、荒唐無稽な筋立てで苦笑してしまった。


コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 2025年5月関西旅行:悠久なる... | トップ | マンガ原作の武侠SF/中華ド... »
最新の画像もっと見る

1 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

コメント日が  古い順  |   新しい順
素晴らしい展覧会でしたね (鴨脚)
2025-07-20 09:01:23
いつも面白く読ませていただいております。
この展覧会、展示替えが多く会場がとにかく遠くてどうしても行くことができず残念でした。何とか図録だけは取り寄せができたので、概要を知ることができました。
「ひぐらし帖」は菅原通済さんのもとで掛軸に改装されたものが、そっくりMIHOへ移動したのは良かったと思います。近年刊行された図録から、もう常盤山文庫の所蔵品ではなさそうだったと気が付いた時から、散逸してしまったのではないか?と案じていたのでなおさらでした。ほかにも個人所蔵のものが多く、めったに見ることができない関戸家伝来の作品(特に二十巻本歌合)が結構展示されていたので、無理してでも行けばよかったととても後悔しています。会期に間に合って良いものをたくさんみることができたのは、とても良かったですね。
返信する

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

行ったもの(美術館・見仏)」カテゴリの最新記事