〇弥生美術館 漫画家生活60周年記念『青池保子展 Contrail 航跡のかがやき』(2025年2月1日~6月1日)
1963年、15歳でデビューした青池保子(1948-)の漫画家生活60周年を記念する展覧会。緻密なカラー原画とモノクロ原稿、約300点(前後期の合計点数)を展示する。2023年の秋、神戸市立小磯記念美術館で参観した展覧会だが、東京で開催されるのが嬉しくて、また見てきた。
私が少女マンガを熱心に読んでいたのは70年代から80年代前半で、青池先生の作品でいうと「イブの息子たち」「エロイカより愛をこめて」の時代。ただし私は集英社&白泉社びいきだったので、青池先生が執筆していた講談社・秋田書店の雑誌には縁がなかった。けれども、上述の2作品は、マンガ好きの友人の手から手へまわってきたように記憶している。あと「エロイカ」のスピンオフ的な「Z(ツェット)」が愛読誌「LaLa」(白泉社)に掲載されたときは嬉しかった。あれは本当に例外的な執筆だったんだな、というようなことを、作者の年表を見ながらしみじみ思いめぐらせた。
青池作品は、ストーリーも面白いし、登場人物も魅力的なのだが、こうして展覧会で見ると、とにかく絵の巧さが際立つ。色彩の美しさ、デザインの緻密さ。時には中世絵画を模し、時には帆船や戦闘機の硬質な美学を追求する。有名な美術作品のパロディもあって、「エロイカ」の伯爵が、ゴヤの「アルバ侯爵夫人」(黒のドレス)に扮して、地面の「Solo Eberbach」の文字を指さしている図のウィットとセンスには笑ってしまった。
残念ながら会場内は撮影禁止だが、一部撮影可能な作品がある。これは東京会場向けの描き下ろし。
これは下関会場向け。青池先生は下関出身で、デビュー前に同郷の水野英子さんに会いに行っているそうだ。好きな漫画家は水野英子、望月あきら、松本あきら(松本零士)だったというのが、時代と傾向を感じて興味深かった。
併設のカフェ「港や」で展覧会コラボメニューの「いのししカプチーノ」と「カルトフェルトルテ」(ドイツ伝統のイモケーキ)をいただき、特製コースター2種類もGET。ランチタイムの少し前だったので入れたが、展覧会帰りのお客さん(一人ないしグループの女性客)で賑わっていた。
「港や」、この季節は向かいの東大キャンパスの桜が窓いっぱいに見えるのだな。むかしは職場の昼休みにランチに来たこともあるので懐かしかった。