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見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。
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中国の石仏/永青文庫

2005-01-15 20:53:27 | 行ったもの(美術館・見仏)
○永青文庫美術館 平成16年度冬季展『中国の石仏』

http://www.eiseibunko.com/

 雨の土曜日、小さな美術館には人影がなく、クラシックな木枠の展示ケースが置かれた部屋で、30点ほどの中国の石仏を、まるで自分のコレクションのように眺め渡すことができた。

 日本の石仏は、一般に木像や塑像ほど造型が緻密でなく、素朴で民芸的な味わいが魅力とされることが多いと思う。それに比べると、中国の石仏は芸術性が高い。ただし、現在、中国各地で見ることができる野外の石仏は、無残にも破壊や風化が進んでいるし、逆に博物館に保護されているものは、時に興ざめなほど修復の手が入っている。それを思うと、これらのコレクションは、日本人によって、ある種「収奪」されたものかも知れないが、蒐集家の愛情に守られた幸福が感じられた。

 私の好みは、ホームページに写真のある菩薩半跏像(北魏)。俯き加減の面差しは天女のように優しい。スカートの襞の刻み方がパイプオルガンのようにリズミカルである。

 石造如来三尊像(北周)も好きだ。ところどころに朱や緑の彩色が残っている。三尊とも童子のように丸みを帯びた姿で愛らしい。前代のスマートな北魏式に対して、この「頭部の大きい、童子のような姿」が、西魏~北周様式の特徴だという。なるほど、と思った。さらに、この童子っぽさが取れて、大人びて「人間化」していく過程が、隋→初唐に起こる。中唐に至ると、人間化が進行し過ぎて、卑俗な人間の表情を写したような仏像が現れる。数は少ないが、北魏~中唐の仏教美術の要諦を一望できる、いい展示会だった。

 なお、1点だけ、ぐっと古い南北朝初期の金銅仏が出品されている。内心を見つめるように俯いた表情といい、腹の前で両手を合わせる禅定印といい、一点に収斂しようとする造型感覚が、信仰心の深さを感じさせる。火炎のような光背も美しく、布目の大きな衝立がこれを引き立たせていた。
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