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「コンビニの店主は使用者か労働者か」

2015年04月23日 | ムサシ

1 コンビニのファミリーマートが,フランチャイズ店主で作る労働組合との団体交渉に応じないのは不当労働行為に当たるとして,平成27年4月16日,東京都労働委員会は,ファミリーマートに対し,団体交渉に応じるように命じた。
2 会社側は,「店主は独立した事業者であり,労働者ではない。」と主張して,平成24年に労働組合が求めた団体交渉に応じなかったという件についてである。
3 都労委は,会社側が店主に就労時間を示したり,その他のマニュアルを提示していることなどから,店主が「労務」を提供していたと判断し,「店主は顕著な事業者性を備えているとは言えない。」と判断して,労働組合法上の労働者であると判断したものである。
4 コンビニの店主を労働者と判断したのは,平成26年3月13日岡山県労委がセブンイレブンに対して,都労委とほぼ同様の理由で団体交渉に応ずるように命じたのが最初であり,現在中央労働委員会で再審査中である。2例目の都労委の命令に対しても,今後同様の展開が予想されるが,今回の都労委の判断は中労委の判断にも影響を与えることになるかも知れない。なお同種の内容の紛争で,事件となっているのは今のところこの2件だけのようである。
5 私は第1例目の命令について,身近な者が県労委に関与しているという特殊な立場で深い関心を持って見守ってきたが,都労委の判断内容を知り,多少ホッとしたということである。そして中労委も同様の判断をされるよう期待したい。
6 コンビニは約40年前に最初の店舗がオープンし,現在業界全体で5万店を超えているとのことである。そしてその実態としては,コンビニによって多少の違いはあるのであろうが,仕入れなど店の運営について店主には殆ど裁量権はないようであるし,次のような問題点が指摘されている。
(1)まず販売期限が迫った弁当類の値引きも自由にできず,安く売れないことによる廃棄費用の大半が店主側の負担になっているそうである。値引き制限については平成21年に公正取引委員会が独禁法違反だとしてセブンイレブンに排除命令を出したところ,セブン本部は廃棄損失の一部を負担するとともに,販売期限の1時間前からの値引きを認めたが,販売期限を夜明け前に設定したり,セブンの社員が各店を監視しているとの指摘があるそうである。
(2)また店主は長時間労働を強いられているが,その原因はアルバイト人件費が売上高の一定比率を超えると店主の収入が減る契約になっているというのである。労働基準法では,「使用者」は,労働時間に関する規制の対象外とされており,店主が「労働者」であると認めることにより,店主の健康に対する配慮がなされることが必要であるとの指摘もある。
7 コンビニはいろいろと問題を抱えているようであり,「職場としてのコンビニの改革」が必要であるとの声が強い。
8 中労委によって,「コンビニ店主は使用者か労働者か」について,どのような判断がなされるのか,期待しながら見守ることにしたい。(ムサシ)「