日本裁判官ネットワークブログ
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 新年も早や3日となり、明日はもう御用始めです。
 今年の年賀状では、やはり裁判員裁判に触れる年賀状が少なからずありました。裁判官では、企業訪問の苦労を訴える方や、当事者主義に徹しようとするものの、まだまだ裁判所の訴訟指揮等に期待する傾向が強い風潮を嘆く感想をもらす方がおられました。職員の方では、模擬裁判の段取りに時間をとられて大変だとか、あるいは裁判員候補者名簿の調整が今から思いやられるとの意見がありました。

 旧ろう29日、NHKが「ザ・判決」と題し、イギリスの実際あった難事件を題材にして、市民裁判官(?)がどのような心証を抱き、評議を行っていくかに焦点をあてた番組を放映しました。私も興味深く拝見しましたが、短時間に証拠を示さなければならないので事件(あるいは事故)の全体像がとらえにくい印象を持ちました。元裁判官の宮本さんが、「モルヒネの注射を受けた患者がどの程度苦しんでいたのか」「治療行為としてモルヒネの大量投与が必要であったかどうか」肝心な点が明らかにされていないと指摘されていましたが、たしかに、裁判(事実認定)としては物足りない一面があったことは否定できません。

 それにもかかわらず、私は、このような難事件を題材にしてでも、「市民(及び裁判官と)の評議」を可能かかどうか、について番組を制作したNHKの意図及び努力を買いたいと思っています。なんでも、イギリスの公文書館にあたって資料を検討したと聞いています。そして評議部分はシナリオがなく自由発話だったそうですが、結構活発に評議されており、市民もやるではないかとの印象を持ちました。もっとも、この点は、「裁判員制度賛成」というバイアスがかかっているので、個人的感想にとどめますが・・・。

 なお、問題のアダムズ事件については、この事件に関与したパトリック・デブリンが「イギリスの陪審裁判」(回想のアダムズ医師事件」という本を書いています(内田一郎訳、早稲田大学出版部。1990年初版発行)。
 それによりますと、実はアダムズ事件より6年後の1956年に起きたハレット夫人死亡事件というのがあり、それもロールスロイスを遺贈されたというものでアダムズ事件と酷似しているのですが、その事件は死因審問で自殺と評決されました。その後、警察は、アダムズ医師を危険薬物の件で捜索した際、以前にモレル夫人に処方した麻薬が彼女に投与したことを同医師自身がいったため、6年も前の事件が告発されるにいたったのです。つまり最初から、少しいわくつきの事件で、とても、ダイジェストでは理解しにくい事件だと思います。 

 裁判員制度は、いろんな問題点があるかもしれませんが、私は、問題点があるゆえに葬り去るのでなく、「理想的な形で」実現すべきものと考えています。
                               (風船) 

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コメント
 
 
 
「ザ・判決」は守秘義務違反!! (高野 善通)
2008-01-04 11:13:57
 12月29日(東海地区では1月2日)に放映されたNHK「ザ・判決」内で番組最後でのダンカン・高木美保両氏の発言は、実際の裁判で同様の行為に及べば「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律108条・守秘義務違反」で逮捕されます!!
 NHKが犯罪行為になりかねない行為を放映したことは断じて許されるものではありません!!
 皆さま、NHKに断固抗議しましょう!!
 
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