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 森法相がカルデロン一家の特別在留許可を、不法入国をした夫婦については認めないと述べたという。
 これについてカルデロン一家の代理人弁護士渡辺彰悟氏の主張の一部を引用する。
 
 「のり子ちゃんの両親は確かに不法入国をしました。
 しかし,その後15年以上の長きに渡り日本の社会の中で懸命に生き,そして子どもを育ててきました。
 父親であるアランさんは会社で信頼される人間であり,仲間に支えられ,そして職長として日本人の人たちに仕事を教えることのできる立場にある人です。
 確かに,ご両親の入国時の行為は正しくなかった,これはそのとおりです。しかし,入国時の過ちのみによって,現在のこの局面で彼らを退去に追い込まなければならないほどのものでしょうか。日本社会の中で定住してきた彼らを日本社会から引き剥がすことは日本の社会にとって必要なこととは思えません。
 非正規滞在者の資格を正規化するという方法はいろいろとあります。個別事案ごとに判断する手法を日本はとっていますが,諸外国には一定の基準を満たせば,在留資格の正規化を認めるというシステムを用意することもあります。例えば,「7年以上滞在している家族で子どものいる家族に在留資格を与える」というような基準を決めている国もあります。このように多くの場合に見られるのは,やはり子どもを抱えている家庭の保護です。そこに子どもの利益という観点があることはもちろんですが,それだけではなく,非正規滞在者の置かれている労働環境や社会環境の健全化ということが意識されています。長期に非正規滞在者が不健全な環境におかれていることを国が回避しようとする考えです。この考えには非正規滞在者であっても一人の人間であって,その人たちも人権の享有主体であるという考えが通っています。」

 この問題は個人の問題ではなく、日本という国のあり方そのものにかかわる。
 不法入国を水際で防ぐことには困難が伴い、テロリストを含む犯罪者の入国は、どの国にとっても深刻な脅威をもたらす。
 たとえ不法入国者であっても日本で子どもが生まれれば退去を免れるということが通例になってしまえば、これを悪用して生活能力がないのに子どもをもうけたり、子どもがいるような偽装工作を企てたりする不届き者が現れることを予期しなければなるまい。
 現にカルデロン一家と同様な境遇にあって、強制送還の対象とされかかっている不法残留者は、相当な数になるはずだ。千葉県東金市にも、同様な一家がいる。
 しかし日本で生まれ、日本語しか話せない子どもを、著しく不利な環境に追いやることが許される理由は、彼らが日本人ではないこと以外にはあり得ない。
 そういう差別を許さないことを国是とするという選択はないのか。
 世界の経済的に優位にある国で、移民問題、難民問題に悩まされていない国はあるまい。
 島国の日本は、そういう悩みが少ない国ではないのか。
 この不平等な世界が天国と地獄に分かれているとすれば、日本が天国に近いことは確かであろう。
 日本国民が、この列島は先祖代々ここに住む我々だけのためにあると主張し、日本で生まれても親が日本人でない子どもにその権利はないと宣言することはできる。
 それでもイスラエルのように、先祖が住んでいた土地を取り返すと称して、他民族が現に住んでいる土地から彼らを追い出し、自民族中心の国を建てて近隣諸国の憎悪を招くよりは、よほどましであるに違いないが、国際的な尊敬を得るためには、日本で生まれた子どもをその出自によって差別しないと決めた方がいい。
 それが国民のどれほどの負担を要することなのか、あまり掘り下げた議論はされていないと思うが、外からの無法な攻撃に対する有効な防御手段が乏しい日本の安全保障のためにも、そういう投資が役に立つのではないか。
 そう考えれば、この問題は、直接には少数者の利害のみに関するとしても、日本の国家像を左右する問題として、各政党が、あるいは政治家の一人一人が、どんな道を選ぶかを明示すべきことではないか。
 現実にはまだ社民党も共産党も、そういう選択を示してはいないと思われるが、それでいいのか。 (守拙堂)




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