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 将棋ファンであれば説明は不要なのだが,毎年3月の初旬,将棋界で一番長い日といわれる日がある。A級順位線の最終日で,A級に属する棋士10名が,名人位挑戦と残留をかけて,いっせいに対局するのだ。そして,いつのころからか,その模様を衛星放送が実況するようになった。放送は,朝から始まって昼頃までし、その後3時から夕食休憩の6時まで,そして、夜10時45分から明け方2時まで放送するのだ。

 私は,今回,3時から6時からの分を録画しておいて,夕食時,それを早回しにして見たあと,10時45分から,リアルタイムでみた。私がひいきにしている谷川9段は,「勝てば挑戦者決定」の羽生2冠と対決したが,残念ながらいいところなく破れた。谷川の光速流といわれる攻めを封じた羽生の作戦は,見事というほかなく,挑戦者はあっさり羽生と決まった。将棋界の一番長い日で,誰もが注目するのは残留争いで,降級者2名のうち一人は行方8段に決まっていて、あとは久保8段か、佐藤棋聖のどちらかが貧乏くじをひく。但し、佐藤が負け、久保が勝ったときのみ佐藤棋聖の陥落という状況であった。

 米長永世棋聖は、自分にとっては大一番ではなく相手にとって大事な一番のときほど、必死に頑張り、全力投球をしてきたという。今回、佐藤棋聖と対戦した木村8段の戦いがまさにそうであった。角桂交換のコマ損で、解説者の言によれば必敗の形勢から粘りに粘り、一時は逆転したかにみえるところまで、佐藤棋聖を追いつめた。佐藤棋聖の終盤の空ぜきは有名だが、今回はその咳もあまりでないほどで、ゆがんだように見える顔など、およそ佐藤棋聖とは思えないほどであった。結局、指運にめぐまれて、佐藤棋聖の勝利におわったが、まさにこれぞ、プロの勝負というもので、本当に興奮し、感動した。

 私は、子供のころから将棋が好きで、一応有段者だ。20年ほど前、裁判所のレクレーションで、全国大会の予選があり、広島高裁管内の代表となったこともある(残念ながら、本大会直前体調を崩して東京にいけなかった)。そのときに体験したのだが、将棋でも必死に考えると、本当に疲れてしまい、最後は体力勝負になってしまう。プロの真剣勝負をみていると、命を削るような戦いだ。さらに今回は、三浦8段と久保8段の勝負が千日手(同じ手順を繰り返し無勝負となる)指し直しとなり(その時点で、羽生を星一つの差で追っていた三浦は羽生の勝利を知らず、久保は久保で、佐藤が木村相手に大熱戦を演じていることを知らなかった。一種の不文律らしいが、当然とはいえ、なにかすがすがしいものを感じさせる。)、午後11時半、初手からやりなおすという、大変なものであった。

 将棋にしても、碁にしても、勝負ごとを職業にするのは大変で、趣味として楽しめることの幸せをあらためて感じた。           (風船)

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