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「安全保障関連法の成立に思う」

2015年09月28日 | ムサシ

1 先日、集団的自衛権行使を認める安全保障関連諸法が可決成立した。違憲だという声が強かった法律である。最終的な正確な数字は確認できていないが、途中段階で違憲とする憲法学者が211人だとか、憲法学者の95パーセント以上などと報道された。また私が国会の公聴会やNHKの日曜討論その他の機会に個別的に合憲とする憲法学者や国際法学者の氏名をメモしたところ8人が確認できたが、合憲説の学者はもっと多いということであろう。
2 山口繁元最高裁長官は、「集団的自衛権行使は違憲である。」とされ、安倍内閣は「法治主義とは何か、立憲主義とは何かをわきまえていない。」と厳しく批判された。歴代内閣も違憲だとしてきた内容を、国際情勢が変化し、必要性が強まったという理由で、国会の多数で押し切ったということになる。
3 これらの法律の成立により、今後直接わが国を攻撃することは、これまでよりも困難になるということは理解できるが、自衛隊の海外での活動が活発化することになるようであるので、海外で自衛隊が攻撃される形で戦争に巻き込まれる危険性が増えるのではないかと心配である。
4 私が所属する弁護士会が主催する憲法講演会が平成27年7月末ころ開催された。「戦争法案に反対する市民集会とパレード」と題されており、ある全国紙の論説委員による「日本は戦争をするのかー集団的自衛権と自衛隊」という演題の講演がなされた。その後で約1700人が駅までの約800メートルをデモ行進した。わが夫婦も参加した。当地で行われたデモとしては史上最大規模だということである。
5 また9月中旬には山口二郎法政大学教授の講演会とデモ行進が行われた。私は所要のため、講演会だけに参加した。
6 そして9月中旬には元裁判官75名が法案に反対する意見書を参議院議長に送付したが、わが夫婦もその中に入っている。
7 憲法学者の圧倒的多数が違憲だとしている法案をいくら説明されても理解するのは困難だと考えるのが通常の人の感覚ではあるまいか。憲法学者が指摘しているように、どうしてもこの法律を成立させたいということであれば、憲法違反とならないように、順序としてまず憲法改正をなすべきであったということになるのであろう。国民の立場で思うことは、憲法をしっかり守る政治を行なってほしいということである。私は、各種の問題の意見や結論がどのようであるにせよ、政治家の方々は主権者である国民の声によく耳を傾けて、何が何でも数の力で押し切るということではなく、謙虚な姿勢で政治に取り組んでほしいと思うのである。
8 今後どのような展開になるかは判然としないが、来年7月に予定されている参議院選挙ないし場合によっては平成30年12月に予定されている衆議院選挙が前倒しされて、来年衆参同日選挙になるかも知れないが、国民は一体どのような判断をするのであろうか。期待と不安が相半ばというところであろうか。(ムサシ)
(本稿は裁判官ネットワークの意見ではなく、執筆者の個人的な意見である。)