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「インターネットバンキング詐欺未遂事件の顛末」(その2)

2015年06月13日 | ムサシ
 8 その後,私は残してあるコピーを綴じたファイルをパラパラとめくってみると,「初回だけ手数料が必要です」とか,「納金証明が完了すればお金をお渡しできます」とか,「手数料は返還するものです」などと記載されていることが分かった。とりあえず,一定の金額を振り込むことが要求され、それが返却されず、詐取されるという仕組みなのであろう。また私の「銀行口座の銀行名,支店名,口座番号,名義人を教えてくれれば,その余の手続きは全て代行します」などと記載されているのが見つかった。これは私の預金口座が危険になるということであろう。彼らの詐欺の手法も概ね推測できたということであろうか。
9 それにしても,「今回はあなたの勝ちですよ。」という記載は,正直に,「目的は詐欺であり,目的に失敗したことを犯人が認めた」ということなのであろう。
10 その後,パソコン業者にいろいろと質問する機会があったが,私がメールの添付ファイルを開封すると,ウイルスに感染して,私のパソコンが外部から遠隔操作ができるようになった可能性があるとのことであった。例のパソコン遠隔操作事件と同じ状態が生じるというのである。
11 最近,125万件という大量の年金情報が流出したという事件が報道されている。日本年金機構の複数の職員が,ウイルスに感染したメールの添付ファイルを開封したことが原因だということのようである。しかし,添付ファイルを絶対に開封しないようにと指示でもされていない限り,開封しないことは不可能であったろう。
12 情報が流出した被害者には文書で通知するということであるが,誰かが本人になりすまして年金を受け取るという恐れが発生したということになる。ウイルスへの感染防止の有効な対策はないものなのであろうか。
13 わが国でも,来年1月に「マイナンバー制度」がスタートするそうである。国民1人ひとりに12桁の番号を割り振り,納税,年金,健康保険などの情報を一元管理するというのである。国は安全対策はできていると言っているそうであるが、今回の年金情報流出事件をみていると、甚だ不安である。
14 最近ウイルス添付メールで特定組織を狙う「標的型メール攻撃」が急増しているそうである。新聞報道では,アメリカでは既に「マイナンバー制度」が実施されているが,情報が流出して,「なりすまし事件」が横行しているのだそうである。それも困ったことである。わが国でも,安全対策が不充分なままに実践を急ぐことのないように,慎重な対策の検討が望まれるということであろう。(ムサシ)