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「天地明察」

2010年08月10日 | 
 明察という言葉は,この本によれば算術の計算結果が正解であった場合に使うようです。
 天地明察は,天文学についての計算上の推定が実際の観測結果に合致する,という意味と思われます。

 角川書店から刊行されたこの本は,ベストセラーとなっているようですが,読んでがっかりするベストセラーが多い中で,これは大変読み応えのある本でした。

 かなり実話に近い話と思われますが,江戸時代に生きた碁の天才が,数学,天文学に打ち込み,日本における観測結果に基づく正確な大和暦を完成させるというストーリーです。

 感心したのは,作者が江戸の町,人の様子を,あたかもそこに住んで生活しているかのような視線で生き生きと描いていることです。

 江戸時代というとなんとなく科学が遅れていた,という印象ですが,数学や天文学に打ち込み実証的な科学を打ち立てようとした人々がけっこういた,という事実にも驚かされました。
 
 そういえば正確な書名は忘れましたが,山口繁元最高裁長官が江戸時代のの判決を分析された本を書かれ,江戸時代の判決の意外な合理性に感心したことがありました。

 江戸時代は多面的で豊かな社会だったのかも知れません。

                              昔に懲りだした「花」