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ウイルス学者が警鐘、温暖化で解けゆく永久凍土から目覚めた「未知のウイルス」がもたらす脅威

2024-05-26 | 先住民族関連

クーリエジャパン5/25(土) 11:00

フランスのエクス・マルセイユ大学の名誉教授で、ウイルス学者のジャン・ミシェル・クラブリーは10年ほど前に、1グラムの永久凍土(凍結状態が複数年継続する北極圏の土壌)を解かして3万年前のウイルスを復活させ、アメーバに感染させることに成功した。

【画像】ウイルス学者が警鐘、温暖化で解けゆく永久凍土から目覚めた「未知のウイルス」がもたらす脅威

そして最近の研究では、シベリアの7地点で採取した、最も古いものでは4万8500年前までさかのぼる永久凍土のサンプルから、「ゾンビウイルス」とも呼ばれる5グループのウイルスを新たに発見した。

気候変動が進むなか、北極圏では気温上昇が他の地域よりも急速に進んでいる。そのためクラブリーは、こうした種類の発見を珍しい科学の話題ではなく、「永久凍土のウイルスがもたらす公衆衛生上の脅威」として扱うべきときが来たと考えている。スペイン紙エル・パイスが、彼に話を聞いた。

リスクをもたらす「三つの要素」

──永久凍土からウイルスが現れてパンデミックを引き起こすというのは、恐ろしい考えですが、信じがたい気もします。

きちんと研究して、リスクを理解し、それを最小限にとどめる対策をする必要があります。重要な点は三つあります。一つ目は、永久凍土には未知のウイルスが眠っていること。二つ目は、気温の上昇によって永久凍土の融解が進んでいること。そして三つ目は、北極圏での人の移動が増えつつあることです。

──何かが起こる可能性が高まっているんですね?

そうです。そして思い出してほしいのは、アメリカ大陸に病原菌を持ったヨーロッパ人が来たとき、先住民がどうなったかということです。人類が未知の病原菌と遭遇すれば、人口が激減するような大惨事になりかねません。

──新型コロナウイルスのようなパンデミックですね。

それよりはるかにひどいことが起こります。たしかに、新型コロナウイルスは深刻な危機でしたが、コロナウイルス全般については、すでに多くのことがわかっています。これまでの何十年にもわたる研究があるので、きわめて迅速にワクチンを用意できました。

今回わかったのは、既知のウイルスの新しい型でも、非常に深刻なパンデミックが起こりうるということです。そして、そうした過去のウイルスが、いまも永久凍土の中に眠っている可能性があります。

しかし完全に未知のウイルスの場合には、ゼロから研究を始めなければなりません。ワクチン製造までには数年かかるでしょう。

「ウイルスは、ヒトを病気にせずとも大惨事を引き起こせる」

──未知のウイルスが存在するというのは本当ですか?

はい、すでに何種類か発見されています。

──どんな方法で?

私たちの研究チームは、永久凍土を少量解凍して、顕微鏡で観察しました。着目したのは、観察しやすい単細胞生物のアメーバの変化です。多くの場合、アメーバに変化はなく、そうなるとそのサンプルにウイルスはいないことになります。

しかしアメーバが死んだ場合もあって、そのサンプルには、アメーバを攻撃して増殖することに特化したウイルスが存在しているらしいとわかりました。私たちはそのウイルスを培養して、詳しく調べたのです。こうした方法をとったのは、安全のためです。

──安全のため、というと?

ウイルスが感染する相手は決まっていて、アメーバに感染するウイルスは他の生物を攻撃しません。私たち人間への危険はないのです。私たちが扱っていたのが、ヒトやヒトの祖先にあたる生物種の死体が凍ったものだったら、話は違っていたでしょう。

──なるほど、永久凍土には未知のウイルスがいるわけですね。ただ、永久凍土の融解は本当にリスクといえるのでしょうか? 永久凍土は北半球の面積の5分の1という広大な土地を占めていて、そこはほぼ無人の地域です。それに永久凍土の表層は毎年、融解と凍結を繰り返しています。ウイルスは太陽光や熱にさらされると、生き延びられません。

2016年に、シベリアで炭疽症の大流行が起こり、トナカイ牧畜を営むコミュニティに影響が出ました。炭疽症の原因は細菌ですが、これが病気の原因となる芽胞を作ります。そしてこの芽胞は、基本的にはウイルスとそれほど違いません。芽胞は、不活性な粒子の形で何百年あるいは何千年も凍結保存され、その後再活性化しました。

ウイルスも再活性化でき、必要なのはただ宿主を探すことだけです。そして、その宿主はヒトとは限りません。次のパンデミックは、この凍った北極圏の土壌、永久凍土から放出されたウイルスによって引き起こされる可能性があります。

──宿主がヒトとは限らないとは、どういう意味ですか?

永久凍土から放出されたウイルスが川に入り込んで、サケに感染したとします。ウイルスはそのサケを宿主とします。そして増殖して、その地域のサケを死滅させてしまいます。同じことがウシでも起こる可能性があります。人間の生活に不可欠な農作物でもありえます。ウイルスは、ヒトを病気にせずとも大惨事を引き起こせるのです。

永久凍土で起きている変化

──永久凍土には、人間に影響をおよぼすような未知のウイルスがいるのですね。ただ、永久凍土があるのは無人の土地です。

そうとも言えなくなってきています。気温が上昇すれば、居住可能な土地は北に広がっていくでしょう。さらに永久凍土のある地域は、ハイドロカーボンや金属、レアアースの埋蔵量がかなり豊富なので、採掘場が次々と開かれています。地下深くへと掘削が進み、ダストが舞い上がり、大量の土壌が搬出されつつあるのです。

──リスクを減らすにはどうすればよいでしょうか?

そうした採掘作業の従事者が重病になった場合、飛行機でモスクワに運ばれる可能性が最も高いですが、こうした対応は避けるべきです。現場で治療しなければなりません。つまり、充分な医療機器と患者の隔離スペースがあり、検疫手段が整備され、訓練を受けたスタッフがいる施設を用意するということです。

特に重要なのは、どんなに小さくとも、リスクがあるのだという認識を世間に広めることです。そして、地元住人との協力が大事になります。

──それはどうしてでしょうか?

永久凍土のある地域で何か妙なことが起こっているとまず気づくのは、そうした地域を日常的に移動している、地元の人々であることが多いからです。自然の変化や、いろいろな病気を目撃するのは彼らです。地元の人々に、そうした緊急事態を外部へ伝える必要性を理解してもらって、そのサポートをしなければなりません。

Oriol Güell

https://news.yahoo.co.jp/articles/add9dce486de7db11e84a4211a18fc1076257e2d

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