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北海道の白鳥大橋から考えるインフラツーリズム。公的施設の開放で「稼ぐ広域観光」を

2023-02-22 | アイヌ民族関連
ライフルホームズ2023年02月21日11時05分 更新
国交省がインフラの観光活用を推進。景観や非日常感が価値に
暮らしや産業に欠かせないインフラ。老朽化や人口減少で維持管理の方法がよく問われるが、うまく活用できれば「稼ぎ」を生み出すというポテンシャルもある。そのスケールからダイナミックな景観や非日常感を楽しみつつ、インフラや産業への理解が深まるため、近年は観光資源としても注目されている。
国土交通省は、ダムや橋、港湾などを見学・体験する「インフラツーリズム」を積極的に推進。全国にモデル事例を選定し、インフラの魅力を引き出す工夫を学べる「インフラツーリズム拡大の手引き」を改定するべく、2022年度も検討を進めている。
東日本最大の吊り橋で、日本で初めて積雪寒冷地に建設された北海道室蘭市の「白鳥大橋」もツアーが実施されているインフラの1つ。室蘭市長の提案をきっかけに管理者である同省北海道開発局が検討に乗り出し、地域による実施体制を整え、地元の企業がクルーズ船を運航している。室蘭市を含む周辺の3市4町は「西胆振」地域と呼ばれ、著名な温泉地やアイヌ文化を発信する国立施設、港湾クルーズが人気の室蘭港、室蘭の「工場夜景」などとの周遊観光が期待されている。
同開発局は2023年1月、白鳥大橋の事例を通し、インフラツーリズムの魅力を高める方法を探るシンポジウムを室蘭市内で開いた。観光の専門家、観光庁や北海道開発局の職員、地元首長らによる講演やパネルディスカッションの様子をレポートする。
行政」の取り組みから「地域」の取り組みに深化
観光先進国に向けた政府の「日本の明日を支える観光ビジョン」(2016年)では、魅力ある公的施設を広く国民や世界に開放することを掲げている。
北海道開発局長の石塚宗司さんはシンポジウムの冒頭、「2013年度から公共施設の見学ツアーと銘打ち、インフラをツアーに開放するソフト対策に力を入れています。西胆振は観光ポテンシャルの高い地域。ピンチをチャンスにという発想のもと、観光で稼げる地域を目指してほしい」とあいさつした。
白鳥大橋は2020年、国土交通省の「インフラツーリズム魅力倍増プロジェクト」のモデル地区に選定され、以前はできなかった主塔に登頂できる、地域主体のツアー商品の開催につながった。360度の絶景のパノラマを楽しめるコンテンツとして売り出している。
北海道開発局の室蘭開発建設部長の篠宮章浩さんは、インフラツーリズムについて「非日常を体験するツアーにより、地域に人を呼び込み、地域活性化に寄与することを目指すもの」と紹介。また地元市長の提案をきっかけに、モニタリングツアーやガイド研修などをへて、地元観光協会や経済団体などでつくる「室蘭観光推進連絡会議」で白鳥大橋のインフラツーリズム推進が承認されるまでの経緯に触れ、「行政の取り組みが地域の取り組みに深化した」と語った。また、イルカウオッチングや港湾のナイトクルーズといった船上コンテンツ、地元のグルメと結びつけることで、より幅広い展開が見込めると期待した。
地元市長の提案から動き出したインフラツーリズム
パネリストとして登壇した「鉄のまち」室蘭市の青山剛市長は、室蘭が製鉄業や港湾で栄えてきたことから「かつて観光は遠い存在だった」と話した。10数年前から室蘭の「工場夜景」が注目される中、自ら白鳥大橋の主塔に登ったことをきっかけに、白鳥大橋の開放と活用を思い立ったという。2018年、維持管理する北海道開発局の室蘭開発建設部に観光活用を打診し、検討がスタートしたことを振り返った。
青山市長は登頂した当時の印象を「羊蹄山や室蘭港など360度を見渡せ、最も高いところは高さ140mにもなる。車が豆粒に見えるような迫力でした」と語った。ワイヤーケーブルは市内の製鉄所で製造され、地域ならではの背景も感じられるという。
主塔が建つ人工島まではクルーズ船で向かうため、ツアー開催は気象条件に左右されるが、青山市長によると、参加者からは「普段は入れないので特別感がある」といった感想が寄せられている。2021年度は39件、2022年度は48件の申し込みがあった。
稼ぐ観光に向けては、「手ぶらフィッシング」や「スイーツ作り」など複数のコンテンツと連携させる他、道の駅での地元作家の作品販売などを進めているという。西胆振の広域観光については、アイヌ文化の発信拠点「ウポポイ(民族共生象徴空間)」、世界遺産となった縄文遺跡群などとの相乗効果を深める考えを示した。
室蘭市に隣接する登別市の小笠原春一市長や伊達市の菊谷秀吉市長は、バスツアーなどを通じた西胆振地域の連携の現状を紹介した。北海道新幹線の札幌延伸を2030年度末に控えていることから、いっそうの関係強化を図るとした。
消費者は「本物」を求めている。民間の力で稼ぐには
国交省「インフラツーリズム有識者懇談会」の委員を務める、跡見学園女子大学・観光コミュニティ学部の篠原靖准教授は専門家として講演した。
篠原准教授によると、これまで日本経済をけん引してきたモノづくりの競争力が低下したことで、成長産業として観光が注目されている。観光の主眼を「稼ぐこと」と捉え直すことや、観光客の地方分散と消費の底上げが求められていると指摘した。
そのためには、行政主導に依存し過ぎず、民間の力を引き出した「稼ぐ観光」の仕組みづくりが急務だとした。観光客の人数を成果目標として求めるだけでなく、いかに消費額を伸ばすかを意識すべきだと強調した。
篠原准教授によると観光客が求めるものも変化していて、従来は「コンビニ型」だったが、今後は「寿司屋のカウンター型」になる。「いつでも・どこでも・誰でも」ではなく、「今だけ・ここだけ・あなただけ」という価値がますます大切になり、それを体験や滞在、交流を通して感じられる「本物」こそが消費者に求めているという。
白鳥大橋のインフラツーリズムについては、「市長の熱い思いを開発局が受け止めて形になった、全国に知られるモデルの1つ」と評価。その上で、白鳥大橋の取り組みをきっかけに、西胆振という広域で「稼ぐ観光」に発展させるよう提案した。広域連携を進める上では、まずテーマ別のコンテンツを開発し、次に市民に「観光で稼ぐ」という意識を持ってもらい、最後にビジネスモデルを構築する―という手順を示した。
付加価値の高い持続可能な観光へ。人材確保への処方せんは
ウィズコロナ、アフターコロナの時代、広域で稼ぐ観光地域づくりには、持続可能な観光を可能にする仕組みづくりが必要になる。その具体的な方法について、会場からの質問を受けて意見交換がなされた。
シンポジウムでは、観光庁・観光地域振興課長の河南正幸さんも講演し、コロナ禍をへて旅行者のニーズとしても、観光関係者の意識すべき視点としても、付加価値を高めた「持続可能な観光」がますます重視されていることを伝えた。
その上で、どんな属性の観光客に訴求し、何を求めているのかを分析するマーケティングの大切さに触れた。「まずターゲットを絞り込まないと、観光資源を磨くことや地域連携、効果的なプロモーションができない」と強調。そのためには、マーケティングや本質的なガイドができる人材、地域内の多様な関係者をまとめるマネジメント体制が求められるという。観光におけるマネジメントは、上長からの指示で動く企業のような組織と違って難しいため、専門家の国費派遣も検討するよう呼びかけた。
篠原准教授は「これまで日本の観光のマーケティングは欧米から幼いと言われてきた。われわれは勘でターゲットをイメージしていた」と指摘した。
一方で、シンポジウムに参加した観光関係者からは、インバウンド(訪日外国人観光客)がコロナ禍から回復していて増加に転じると、観光に携わる人材がさらに不足するという懸念が寄せられた。
これに対し篠原准教授は、当初は観光業界を志望しながらも、休日の少なさや労働負荷、給与などの実態を知って他業種にシフトする学生が多いと明かした。「労働生産性が低く、働いても儲からない。観光人材の不足という、日本の大きな弱点が顕在化している」と話した。
河南さんは「安い料金設定で多くの『数』に頼るという発想ではなく、働く人たちの価値を上げて対価に反映され、それを認めてくれるような顧客を呼び込むシステムに変えないと、持続可能な観光は実現できない」と強調した。
https://www.homes.co.jp/cont/press/buy/buy_01473/
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