先住民族関連ニュース

先住民族関連のニュース

アイヌ文化、料理から学ぶ 白老・ウポポイでアワ収穫し団子作り

2022-09-26 | アイヌ民族関連
北海道新聞09/26 05:00

アイヌ民族文化財団の職員の指導で行われたアワの収穫体験
 【白老】胆振管内白老町のアイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」で24日、伝統料理の団子「シト」の材料となるアワ(アイヌ語名・ムンチロ)の収穫体験が行われた。東京などから来た家族連れ6人が参加し、アイヌ文化に親しんだ。
 自然の恵みに感謝し、五感を使ってアイヌ文化に触れてもらおうと、アイヌ民族文化財団がウポポイ敷地内の畑で開催した。
 作業の際は貝殻でできた道具を使用。6人は財団職員に「貝の刃でちぎるように刈り取りましょう」などと助言を受けながら、アワを収穫した。アワをきねでつき、団子作りも体験し、できあがったシトを味わった。
 シトは神に感謝の気持ちを伝える儀式「カムイノミ」などで供えられる。東京都在住の会社員斉藤敏宏さん(60)は「アワを食べるのは初めてだが、素朴で懐かしい味がした。収穫の仕方など勉強になった」と話した。(竹田菜七)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/736040/

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アイヌ語学者になる夢描く 北見東小が最優秀 きたみ子ども映画祭

2022-09-26 | アイヌ民族関連
北海道新聞09/26 05:00

最優秀賞を受賞した北見市立東小の児童たち
 オホーツク管内の子どもたちが自主制作した映画を上映する「きたみ子ども映画祭」(実行委主催)が25日、北見市民会館で開かれた。「あなたがなりたい職業」をテーマに、小中高校生から11作品が集まり、アイヌ語の言語学者を夢見る児童に迫った北見市立東小の作品が最優秀賞に選ばれた。
 例年開催していたアジア国際子ども映画祭北海道北ブロック大会はコロナ禍で中止したが、作品発表の場を設けるため開かれた。
 最優秀賞に輝いた作品名はアイヌ語で「明日」を意味するという「ニサッタ」で、主役を務めた同小6年の白石心菜さんの実際の夢をストーリーにした。白石さんは長年アイヌ文化を学び続けてきたが、文字が無いアイヌ語の伝承の難しさを知り、アイヌ語の言語学者を志したという。
 表彰式では制作に携わったメンバーが賞状などを受け取った。白石さんは「自分の好きなことを映画にできて良かった」と喜んだ。(樋口雄大)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/736015/

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ウポポイ「積極的に誘客」 岡田アイヌ施策相が初視察

2022-09-26 | アイヌ民族関連
北海道新聞09/26 01:59

ウポポイの国立アイヌ民族博物館を視察する岡田直樹アイヌ施策担当相(右から2人目)
 【白老】岡田直樹アイヌ施策担当相は25日、就任後初めて胆振管内白老町のアイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」を視察した。担当相のポストは8月の内閣改造で新設されたばかり。アイヌ文化の伝承や差別問題の解消など課題が山積する中、岡田氏はアイヌ政策推進に向けた財源確保やウポポイの誘客促進に意欲を語った。
 「アイヌの方々が経験してきたご苦労や受け継いできた文化を改めて知り、施策の重要性を実感した。着実に施策を進めたい」。岡田氏は慰霊施設や国立アイヌ民族博物館を訪れた後、記者会見で強調した。
 かつて大学などが持ち去ったアイヌ民族の遺骨が安置されている慰霊施設では、道アイヌ協会の大川勝理事長らと非公開で面会。大川氏は面会後、岡田氏の来訪に謝意を伝えたとした上で、国に対し「いまだ全国に持ち去られた遺骨があるので、きちんと施設で慰霊させてほしい」と求めた。
 一方、岡田氏と面会した鈴木直道知事はウポポイの誘客強化などを要望。岡田氏は会見で、来月11日から政府が新型コロナ対策で実施してきた入国者数の上限を撤廃することに触れ「ウポポイへも積極的に誘客する。十分な財源を確保し力を尽くしたい」と述べた。
 ただアイヌ施策の推進はこれまで内閣ナンバー2の官房長官が担ってきた。岡田氏は地方創生相、沖縄北方担当相など多くのポストを兼務しており、政府内からは「どうみても格下げだ」との声も上がる。岡田氏はこうした指摘について「担当大臣がいることでよりきめ細かく目配りができる」と強調。「政策が前進することはあっても後退することは決してない」と語った。(松下文音)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/736080/

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鈴木知事 岡田沖縄・北方相にアイヌ文化振興など要請

2022-09-26 | アイヌ民族関連
NHK09月25日 19時20分

アイヌ施策の推進や北方四島との交流事業をめぐり、鈴木知事は25日、胆振の白老町で岡田沖縄・北方担当大臣と会談しアイヌ文化の振興に向けた予算確保や四島との交流事業の早期再開に向けた取り組みを要請しました。
アイヌ施策を担当する岡田沖縄・北方担当大臣は胆振の白老町にあるアイヌ文化の発信拠点「ウポポイ」を就任後初めて訪れ、アイヌ民族の遺骨が安置されている国の慰霊施設や博物館の展示を視察したあと、アイヌ民族の伝統的な家屋、「チセ」で鈴木知事と会談しました。
この中で、岡田大臣は「ウポポイ」について、「アイヌの歴史や伝統、文化、芸術が凝縮されている空間で、大きく育てていけるようともに頑張っていきたい」と述べました。
これに対し、鈴木知事はアイヌの文化振興や生活向上などを推進するための予算確保のほか、「ウポポイ」について全国規模の広報を行うなど来場を促すための働きかけを進めること、それに、北方四島との交流事業の早期再開に向けた取り組みや四島周辺でのいわゆる「安全操業」の安定的な継続に向けた操業機会の確保などを要請しました。
このあと、岡田大臣は記者団に対し「担当大臣としてアイヌの方々に寄り添いながら着実にアイヌ施策を進めていきたい」と述べました。
https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20220925/7000050927.html

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アイヌの過去現在テーマにトークライブ 「ゴールデンカムイ」監修の中川さん参加

2022-09-26 | アイヌ民族関連
十勝毎日新聞2022/09/25 10:07
 アイヌ文化発信プロジェクト「ハポネタイ」は28日午後8時から、アイヌ語学者中川裕さん=千葉大学名誉教授=と、プロジェクト代表のUtaE(本名・惠原詩乃)さんによるオンライントークライブを開催する。27日まで参加を受け付けている。
 中川さんは人気漫画「ゴールデンカムイ」の監修を務めたアイヌ研究の第一人者。一方、UtaEさんは清水町旭山の森を拠点にプロジェクトを進めている他、「ゴ...
●この記事は会員限定です。勝毎電子版に登録すると続きをお読みいただけます。
https://kachimai.jp/article/index.php?no=571989

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【速レポ】<中津川ソーラー>DAY3、OKI DUB AINU BAND、轟音の渦が巻き起こす歓喜のサウンドスケープ

2022-09-26 | アイヌ民族関連
BARKS2022.9.25 22:44

3日間にわたって開催された<中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2022>も終わりが近づいてきた。RESPECT STAGEの大トリは佐藤タイジも出演を熱望してきたOKI DUB AINU BAND。ワールドワイドな活躍を見せるバンドが登場となった。
彼らはカラフト・アイヌの伝統楽器であるトンコリを現代に復活させたOKI(Tonkori, Vo)が率いるダブバンドであり、アイヌに歌い継がれるウポポ(歌)の伝承曲やリムセ(踊り)にレゲエやロックをかけ合わせ、ダブマスター内田直之(Mixing)が加わり、趣深いサウンドに進化。まさしくハイブリッドな音楽を展開している。この日はOKI、沼澤尚(Dr)、中條卓(B)、HAKASE-SUN(Key)、Rekpo(Vo, Dance, Tonkori)、Manaw(Tonkori, Vo)、内田直之という編成で出演となった。
入念なサウンドチェックの後、オーディエンスから大きな拍手を浴びて、まずは「Topattumi」。柔らかみのあるトンコリのアルペジオに耳をそばだてていると、そこにドラムとキーボードが重なり、ヘヴィなサウンドを響かせると、舞うようなアンサンブルに昇華。OKIのつぶやくような歌も言葉ひとつひとつが刻み込まれ、Rekpoもコーラスもいい。オープニングにふさわしい華やかさもあり、輝きがどんどん増していくのだ。
ビシビシとくる低音に軽やかなキーボードとトンコリが乗り、OKIの野太くしゃがれた歌声もグッときた「Suma Mukar」でさらに熱気が上昇。オーディエンスもそんな音世界を存分に浴びながら自由に踊っていく。すっかり太陽も落ちた時間だが、野外の開放感と非日常感が生まれる暗がりが合わさり、音に没頭するにはいいシチュエーションでもある。
そして、OKIとRekpoが奏でたアイヌの口琴であるムックリの音色を堪能した後、ゲストとしてタイジを呼び込んで「Kon Kon」へ。“ココンココンコンコココン”という複雑なリズムだけどキャッチーで耳に残るフレーズを全員で何度も口ずさむ。その楽しげな空気に誘われたのか、うじきつよしも姿を見せて一緒に連呼。いや、これは楽しい。OKIの人柄がそうさせるのか、おおらかなムードも広がり、みんなで一緒に遊ぶ感じがたまらないのだ。
また、「Ankisma Kaa Ka」の後に披露された、OKI、Rekpo、Manawの3人によるウコウク(輪唱)も他ではなかなか観れないであろう、貴重な場面。Rekpoが高音と低音を巧みに使い分けながら主線を、OKIがコーラス、Manawがリズム的な役割を果たし、客席からのクラップも鳴り止まない。
そこから代表曲「Sakhalin rock」へ続くのだから盛り上がりも最高潮へ。アップテンポながら、トンコリの音色がそう感じさせるのか、どこか安らぐようなニュアンスもあり、大人も子供も踊る、踊る。決まった流儀などない。音に導かれるよう、思うがままに踊るだけだ。客席にはComplianSの際にも登場した大型傀儡師集団GIANT STEPSによる大きなあやつり人形が姿を見せれば、ステージ上はカオティックだけど決して破綻しない強者たちによるアンサンブルが繰り広げられる。タイジも吸い込まれるように再び登場し、こんな空間がずっと続けばいいなと素直に思う時間となっていく。
RESPECT STAGEで最後に鳴らされる曲となったのは「East of Kunashiri」。ミニマムなフレーズがリピートされていき、リバーブがかかったり、ニュアンスが変化したりと、徐々に広がっていくサウンドスケープ。ラストにかけては轟音の渦が巻き起こり、オーディエンスの歓喜も止まらない。RESPECT STAGEを締めくくるにふさわしい大熱演となった。
取材・文◎ヤコウリュウジ
撮影◎俵 和彦
【RESPECT STAGE】セットリスト
1. Topattumi
2. Suma Mukar
3. Kon Kon
4. 'ANKISMA KAA KA
5. Sakhalin rock
6. East of Kunashiri
■<中津川THE SOLAR BUDOKAN 2022>
日程:2022年9月23日(金・祝) 、24日(土)、25日(日)
会場:岐阜県中津川公園内特設ステージ
https://www.barks.jp/news/?id=1000224896

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ロシア、占領地域でも動員か ウクライナ侵攻開始7カ月

2022-09-26 | 先住民族関連
時事通信9/25(日) 7:19配信

ウクライナのゼレンスキー大統領=15日、キーウ(キエフ)(EPA時事)
 【ワシントン時事】ウクライナのゼレンスキー大統領は23日のビデオ演説で、ロシアがウクライナの占領地域でも動員の準備を進めていると主張した。
 ロシアのウクライナ侵攻開始から24日で7カ月。占領地域の編入に向けた「住民投票」など強硬手段に打って出たロシアに対し、国際社会からの反発が一段と強まっている。
 ロシアのプーチン大統領はウクライナ侵攻のてこ入れのため、一部の予備役を招集する部分動員令に署名。独立系メディアは、100万人の動員を計画していると伝えた。
 ゼレンスキー氏は、ロシアが自国内だけでなく、「現在支配している(ウクライナ南部)クリミア半島や他の地域でも、犯罪的な動員を行おうとしている」と指摘。「クリミアでは(先住民族)タタール人が密集して住む地域で、多数の男性を動員しようとしている」と述べた。
 その上で、プーチン政権が「侵略した土地の住民の命をできる限り多く奪おうとしている」と批判。占領地域の住民に、動員への徹底抗戦を呼び掛けた。
 一方、ウクライナ東部・南部の占領地域で親ロシア派が開始した「住民投票」をめぐる非難も相次いでいる。先進7カ国(G7)は首脳声明で、「われわれは『住民投票』を決して認めず、仮に併合しても決して認めない」と表明した。
 バイデン米大統領は23日の声明で、ウクライナでの「偽の住民投票」が国連憲章など国際法に違反しているとして、対ロ追加制裁を検討すると宣言。欧州連合(EU)も追加制裁を検討しており、米欧が足並みをそろえた格好だ。
https://news.yahoo.co.jp/articles/621426375d0e5f305fa650482436e3380f8d8489

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英グラスゴー、植民地由来の文化財返還 美術館・博物館責任者にその背景を聞く 「平等の立場で」向き合う

2022-09-26 | 先住民族関連
GlasgowLife9/25(日) 20:50小林恭子ジャーナリスト
 近年、欧州各国では過去の奴隷制・植民地支配の負の遺産を見直す動きが広がっている。
 フランスでは昨年秋、19世紀に西アフリカの旧ベナン王国から略奪した26の美術品129年ぶりに現ベナンに返還した。エマニュエル・マクロン仏大統領は2017年、アフリカの文化財を返却する方針を表明し、法整備を進めてきた。
 ドイツ政府も、ナイジェリア南部沿岸にあった旧ベニン王国から19世紀に英軍によって持ち去られた「ベニン・ブロンズ」と呼ばれる美術品の返還を決めている。
 ベニン・ブロンズについては、英国でも、ケンブリッジ大学ジーザス・カレッジ、スコットランド・アバディーン大学、ロンドンのホーニマン博物館が返還を発表している。
インドの文化財返還へ
 今年8月19日、スコットランド・グラスゴー市が所有する文化財を保管・展示する美術館・博物館の代表者とインド政府代表者が植民地時代の美術品をインドに返還することで正式合意した。
 英国の美術館・博物館がインドに当時の文化財を返還するのは、これが初だ。
 所有権の移管は、4月、グラスゴー市の返還査定委員会の決定を受けたもの。委員会はグラスゴー市議と同市の美術館・博物館を運営する「グラスゴー・ライフ」の代表者らで構成され、インド、ナイジェリア、北米の先住民族への美術品・工芸品の返還を推薦した。
 グラスゴー市の美術館・博物館を運営する「グラスゴーライフ」は、昨年1月から、インドへの工芸品返還を巡って、ロンドンの駐英インド高等弁務官事務所と交渉を続けてきた。返還対象となったのは、14世紀のものと見られる剣、11世紀頃の石製のドア枠を含む7点。
 そのうちの6点は19世紀、インド北部の複数の州にあった寺院や神殿などから持ち去られ、残りの1点は元の所有者から窃盗した人物から購入したものだった。全7点はグラスゴー市に寄贈されていた。
 グラスゴー市が元の所有者に文化財を返還したのは、1998年が初めてだった。19世紀末の米国で先住民による宗教運動「ゴーストダンス(幽霊踊り)」に使われたシャツのウーンデット・ニー生存者協会への返還である。特別のシャツを着ることで、危険から身を守ることができると考えられた。
 現在ではケルビングローブ美術館・博物館に寄贈されたレプリカのシャツが展示されている。
 ちなみにウーンデッド・ニーとは米サウスダコタ州南西部にある地域。
 1890年、ウーンデット・ニー・クリーク湖畔で米騎兵隊が移動中の先住民ラコタ族を無差別に銃撃し、多くの人が命を落とした。この中にはゴースト・ダンサーたちも含まれていた。ウーンデッド・ニー事件は、米先住民の抵抗の歴史を象徴する。
 グラスゴー市は、1892年、「バッファロービル・ワイルド・ウェスト・ショー」の興行で使われたシャツを購入したが、このシャツはウーンデット・ニーの戦場で遺体となったラコタ族の人物から取り去れたものだった。
 約100年後、ラコタ族の子孫からシャツの返還を求められ、1998年の返還につながった。
 グラスゴー市ではこれまでに50以上の文化財を正当な所有者に返還してきたという。
 現在、返還予定の文化財にはナイジェリアのベニン・ブロンズ19点も含まれていいる。
ベニン・ブロンズとは
 現在のナイジェリア南部沿岸にあった旧ベニン王国由来の数千点の美術品で、青銅、真ちゅう、象牙などのレリーフや像などを指す。1897年、英国外交官殺害事件をきっかけに英軍の報復侵攻を受け、聖地や礼拝所などから持ち去られた。王国は英領ナイジェリア植民地に併合されて、姿を消した。
 グラスゴー市は寄贈や競売サービスによって入手した。
 6月、グラスゴーライフはナイジェリア政府の代表者とケルビングローブ美術館で会合を開き、所有権の移管、移管時期などについて話し合った。

ケルビングローブ美術館にあるベニン・ブロンズの1つ(筆者撮影)
 米先住民由来の25点の文化財はラコタ族及びスー族に所属する品物で、米サウスダコタ州の先住民の子孫に引き渡される予定だ。
 この文化財は、先住民の「信仰、歴史、価値観を象徴するもの」だった(グラスゴーライフのプレスリリースより)。
コレクション責任者のインタビュー
 筆者は、8月末、グラスゴーを訪ね、グラスゴーライフの博物館コレクションの責任者に今回の文化財返還の背景を聞いた。
ーグラスゴーの試みが英国全体に広がると思いますか。
ダンカン・ドーナン氏:それは良い質問ですね。確かに、グラスゴーの動きは大きく報道されましたが。でも、グラスゴーが返還を行い始めたのは、1998年なので、ずいぶん前から手掛けてきたのです。
―どのような判断で返還すると決めているのでしょう。ウェブサイトには、返還についての考え方を記す文書が掲載されていましたが。(GLASGOW LIFE MUSEUMS: POLICY ON REPATRITION AND SPOLIATION)
ドーナン氏:返還の求めがあった時、いくつかの判断条件を考慮しています。
 1つ目は、返還を求めている人が、その品目(オブジェクト)について倫理的及び法的権限があるかどうかを見極めなければなりません。そのオブジェクトの元々のクリエイターの代表として話しているのかどうか。
 2つ目は、そのオブジェクトを作った当時のコミュニティと返還要求をしている現在のコミュニティとの間に連続性があるかどうか。
 3つ目はそのオブジェクトの文化的、歴史的、あるいは宗教上の意味合い。
 4つ目はこちらの美術館・博物館が合法的に取得したものなのかどうか。
ー国レベルではなく、グラスゴー市のレベルで返還するかしないかが決定できるのですか。
 コレクションはグラスゴー市の所有なので、ここでできます。
 また、返還が要請が増えているというわけではなく、それぞれ個々の理由で返還するかしないかのプロセスが始まっていきます。
-かなり時間がかかりそうですね。
 そうですね。返還までのプロセスは複雑です。最初の段階の「倫理的及び法的権限があるかどうかを見極める」ことが大仕事で、そのオブジェクトの元々のクリエイターの代表として話しているのかどうかを確立するまでが大変です。その間に、相手方との信頼感を作ることも大切です。
―博物館側のスタッフが現地に行くことも?
 ナイジェリアに出かけるスタッフが一人いますが、(いつも行くわけにもいかないので)だからこそ、信頼感が大切です。原産国と英国にいる側との間に本当に信頼感が確立していることが必要です。信頼感と前向きの印象を互いに築くことです。何を相手が欲しているのか。全てが返還を望んでいるわけではなく、所有権をもっと明確にしてほしい、という場合もあります。その上で、オブジェクト自体は博物館に置いておく、という選択になることがあります。
ー返還交渉に応じようとしない美術館・博物館もあるのではないでしょうか。なぜグラスゴー市では積極的なのでしょうか。
 オブジェクトが違法に取得したものであるということが確立されたら、私たちはこれに対応するべきと考えています。正統な所有者に連絡するべきである、と。これが1998年に確立された考えで、変化はありません。
平等に向き合う
 グラスゴー市としては、返還を要求する、所有権を持つ人と平等な関係から話し合います。返還要求が出たら、これに対応することで、互いによりよい関係を築くことができます。
 グラスゴーは(スコットランドの中でも)最も多様性がある都市です(注:スコットランドの中でグラスゴーは移民出身者の比率が12%と最も高い)。様々な移民出身者のコミュニティとの関係性を重視しています。そのコミュニティにとって、歴史的に重要なつながりがオブジェクトである場合、対応する必要が出てきます。
ーオブジェクトの取得が合法か違法かを見極めるのは非常に難しいのではないでしょうか。例えば、古代ギリシャのパルテノン神殿にあった大理石彫刻「エルギン・マーブル」をギリシャ政府側は英国に「略奪された」と言って、返還を求めています。英国側は、19世紀初頭当時、ギリシャを支配していたオスマン帝国との合法な契約の下に取得したといっています。
 どこまでが許容される行為なのかということについての認識は、時代が変わるとともに変わってきます。
 でも、本人の同意なしに取得する行為は、21世紀の現在では通用しなくなっています。
 今回の返還対象になったオブジェクトについては、当時の文化、歴史的文脈、該当するコミュニティへの重要性などについて調査を行っており、いかなる状況でも、取得されるべきではなかった、という結論が出たのです。
―今回は、インドへの返還がニュースになりました。でも、ビクトリア女王時代、インドは大英帝国の植民地であり、当時獲得されたものは、結局は、英国のオブジェクトである、という解釈もできますよね。
 私たちはそのようには考えていません。大英帝国の一部であったということで、そのオブジェクトの所有権があると主張することもできますが、オブジェクトにはスピリチュアルな面もありますので、所有していた個人にとって、重要なものかもしれません。当時の状況から言って、合法だったと考える人もいれば、盗まれたと考える人もいるでしょう。
 私たちは21世紀の考え方の基準で、物事を見て行かなければなりません。
-返還について、これに反対するような意見が英国のアート界ではないのでしょうか。
 特に(問題視するような)論争が起きた、ということはないと思います。
 コレクションの価値というのは所有権があるかどうかではなくて、そのオブジェクトを使っていかに来訪者に情報を与え、楽しませ、教育できるかということです。返還のプロセスはこの部分を妨げることになるかもしれませんが、関連する文化の解釈を深めることになるのです。
 返還によって、グラスゴー市からそのオブジェクトを奪うのではなく、より深い理解につながりますので、最終的はよりよい結果になると思います。
―ベニン・ブロンズについては、ロンドンの博物館が返還を決め、フランスやドイツでは国策として返還することにしています。グラスゴーの動きは、英国の中では少数派なのでしょうか。それとも、英国のアート界全体が返還や見直しに動いているのでしょうか。
 全体の動きについては何とも言えませんが、アバディーンが返還を決めています。複数の返還が英国内で発生していますし、大規模な返還がドイツで発生しています。
―ここ何十年間で、返還についての考え方は変わってきたのでしょうか。
 私たちの場合は1998年が最初でしたので、それ以前は却下されてきたということです。ですから、変化はありました。
 それに、世界が変わってきましたね。今やどことでも(より簡易に)より広い世界と連絡が取れるようになってきました。広い世界についての、人々の認識も変わってきました。
 美術館の運営の仕方も大分変ってきました。グラスゴーでは企画を立てるときに、コミュニティの人とともに作っていくことが多いです。あるオブジェクトや出来事に対する運営側の見方とコミュニティの見方を統合して、展示を作っていく、と。
ー2年前、反人種差別の「ブラック・ライブズ・マター運動」がありました。一部の美術館、博物館では展示内容を変えていきました。グラスゴーではどうだったのでしょうか。
 ブラック・ライブズ・マター運動の前から、大英帝国時代をどう扱うべきかと考えてきました。2020年初頭、そのために予算をあてて、同年9月にはキュレーターを配置しました。彼を中心に、グラスゴー市民との対話を行ってきました。
 最初の試みをケルビングローブ美術館で開始したばかりです。入り口を入ってすぐの場所に展示パネル(「大英帝国の美術館」)を並べてあります。公の会話を生み出したい、という狙いがあります。これは継続したプロジェクトで、社会を大きく変えるには時間がかかるでしょう。(インタビュー終)
 上記パネルの1つにはこう書かれていた。
「ケルビングローブ美術館・博物館は帝国の博物館です。もともとの建物はグラスゴー市議会の議長パトリック・クフーンの自宅でした。クフーンはアフリカ住民の奴隷化に関与していたタバコ商人でした。英国の植民地主義の帰結として富を蓄えた富裕な個人が芸術作品をコレクションに寄贈したのです」。陳列作品は複数あるものの「黒人、アジア人、そのほかの少数住民を表現するオブジェクトや美術品はほとんどありません」。
「ケルビングローブ美術館・博物館において、大西洋奴隷貿易と大英帝国の遺産についてよりよい説明する道を模索しています」。ケルビングローブでの将来の展示に向けて、「こうした遺産についての議論を巻き起こしたいと考えています」。
 別のパネルでは、意見募集の呼びかけがあった。
小林恭子ジャーナリスト
英国を中心に欧州各国の社会・経済・政治事情を執筆。最新刊は中公新書ラクレ「英国公文書の世界史 -一次資料の宝石箱」。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 連載「英国メディアを読み解く」(「英国ニュースダイジェスト」)、「欧州事情」(「メディア展望」)、「最新メディア事情」(「GALAC])ほか多数。著書『フィナンシャル・タイムズの実力』(洋泉社)、『英国メディア史』(中央公論新社)、『日本人が知らないウィキリークス』(洋泉社)、共訳書『チャーチル・ファクター』(プレジデント社)。
https://news.yahoo.co.jp/byline/kobayashiginko/20220925-00316707

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