先住民族関連ニュース

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ポンチセ建て替えへ地鎮祭 札幌市アイヌ文化交流センター

2022-07-21 | アイヌ民族関連
北海道新聞07/20 22:27

ポンチセを建て替えるために行われた地鎮祭
 札幌市アイヌ文化交流センター「サッポロピリカコタン」(南区小金湯)で20日、建て替え作業が進む伝統家屋チセの地鎮祭が伝統儀式に従って行われた。
 屋外展示しているチセ2棟のうち、ポンチセ(小さい・家)が対象。柱の腐食などが理由で、建て替えは2003年12月にセンターが開館して以来初めてで、市から委託を受けた札幌アイヌ協会が行う。既に古いポンチセを解体し、跡地に新しいポンチセ(約49平方メートル)を建てる。
 地鎮祭には札幌アイヌ協会のメンバーら4人が参加。イナウ(木幣)を飾り、トノト(神酒)を自然界の神々にささげ、魔よけの儀式としてイナウを囲んで掛け声とともクマザサを力強く上下に振った。
 ポンチセの完成は9月を予定。建て替え作業の現場監督を務める彫刻家早坂雅賀(まさよし)さん(54)は「生まれ変わったチセを見てほしい。チセ建築の技術も伝えたい」と話していた。(五十嵐俊介)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/708156

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札幌市のアイヌ文化交流センター 19年ぶりにチセの建て替え

2022-07-21 | アイヌ民族関連
NHK07月20日 18時49分

札幌市南区にあるアイヌ文化交流センターで、19年ぶりにアイヌ民族の伝統的な家屋の建て替えが進められていて、20日は地鎮祭が行われました。
札幌市南区にあるアイヌ文化交流センター「サッポロピリカコタン」には、アイヌ民族の伝統的な家屋「チセ」が2棟展示されていて、このうちの1棟が老朽化のため19年ぶりに建て替えられることになりました。
20日は地元のアイヌ協会のメンバーなど4人が参加し、アイヌ伝統の地鎮祭「チセコテノミ」を行いました。
参加者たちは、火の神を通じて土地にまつわる神々に祈りをささげ、「フッサ、フッサ」とかけ声をかけながら、笹ではらい清めました。
新しいチセは、木の骨組みに2000以上のかやの束をふいてことし9月の完成を目指していて、さっそくメンバーたちがかやを束ねる作業をしていました。
チセの建て替えは技術の伝承も目的としていて、19年前にも参加し、今回の監督を務める早坂雅賀さんは、「次の建て替えに私が参加するのは体力的に厳しいです。いま頑張ってくれている若いメンバーが将来、中心となってくれればと思います」と話していました。
https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20220720/7000048767.html

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「ゴールデンカムイ」の世界で謎解きを 平取で23日からコラボイベント

2022-07-21 | アイヌ民族関連
北海道新聞07/20 05:00

ゴールデンカムイの世界観を生かした謎解きイベントのポスター
 【平取】びらとり観光協会は、アイヌ民族の少女らが活躍するテレビアニメ「ゴールデンカムイ」の世界観を生かした謎解きイベント「消えた少女の謎」を23日から行う。町二風谷の施設を回って問題を解き、全問正解者は記念品がもらえる。
 町内の施設に足を運び、平取町について興味を持ってもらう狙い。
 昨年は新型コロナウイルス対策として、各施設にあるQRコードをスマホなどで読み取って問題を解く形式だったが、今年は最初に町アイヌ工芸伝承館ウレシパで解答用紙をもらう。
 萱野茂二風谷アイヌ資料館や二風谷工芸館など5施設を訪問。掲示されているアイヌ文化に関する問題を解き、ウレシパに戻る。全問正解者には記念品が贈られる。期間は10月2日までの午前9時~午後4時半。参加無料だが、一部施設では入館料がかかる。(杉崎萌)
◆「ウレシパ」のシは小さい字
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/707572

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『伝え守るアイヌ三世代の物語』出版記念作品展

2022-07-21 | アイヌ民族関連
人民新聞 2022年7月23 – 28日

7月23日(土)~28日(木)11:00~18:00
会場:スペースふうら(大阪市東成区深江北3-4-11)
入場無料
主催:スペースふうら
連絡TEL090-1223-7120
http://jimmin.com/events/event/『伝え守るアイヌ三世代の物語』出版記念作品展/

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台風で流された先住民勇士の像 10年ぶりに再建/台湾・新竹

2022-07-21 | 先住民族関連
中央フォーカス台湾2022年7月20日 18:58

再建されたタイヤル族の勇士の像=新竹県政府提供
(新竹中央社)台湾原住民(先住民)族、タイヤル族が多く暮らす北部・新竹県尖石郷で19日、約10年前の台風被害で流され、新たに再建された勇士の像がお披露目された。
県原住民族行政処によると、元の像は1997年に設置。高さ約18メートルで、タイヤル族の頭目の化身とされ、前に差し出した右手が、人々を率いて前へ進むイメージを表現していた。だが、2012年8月、台風に伴う大雨と強風により崩落し、川に流されたという。
新竹県出身の彫刻家、王淇郎さんがデザインした新しい像は台座を含めて高さ約9メートル。タイヤル族の伝説に登場する鳥や犬も表現された。前をさした指は勇敢に前進することを、片手に持つ種火は命の源と新たな命をイメージし、伝承の精神を忘れないよう訴えている。
曽国大尖石郷長は、原住民の歴史と文化を伝える新たな指標になったと喜び、周辺の観光スポットと合わせた原住民集落の観光や登山旅行の発展促進に期待を寄せた。
(郭宣彣/編集:齊藤啓介)
https://www.excite.co.jp/news/article/Jpcna_CNA_20220720_202207200010/

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「直感に従ってきたから今自分がここにいる」世界的運動に身を投じる若き環境活動家の思い

2022-07-21 | アイヌ民族関連
エンカウント7/20(水) 17:20
 現代に生きながらかつての豊かな世界観を取り戻すためのヒントは、毎日の生活のなかで、自分と他者の境界、自分の有限性にふれる瞬間を大切にすることにあるという。二項対立や植民地主義を乗り越えて、自然や社会と個人がつながるにはどうすればよいのだろうか。「Fridays For Future Tokyo」オーガナイザーの若き環境活動家、酒井功雄氏と、探究型の環境教育プログラムを実施する一般社団法人KOTOWARI代表理事の青木光太郎氏に語ってもらった。(取材・構成=梅原進吾)
酒井功雄「(中編からの続き)。直感とか感覚みたいなものに従ってきたから今自分がここにいます。理性的に判断せずに進路を決めたりとかインターンを合わないからといってやめたりしてきました。ひらめきや感覚で選択してきたんですね。かつては、将来の自分が今の大学にいるとも、『Fridays for Future(未来のための金曜日。気候変動への対策を求める運動)』をやるとも思っていなかった。理性的には選択しえない道を、感覚的に選んできたんです。結局のところ、頭ではなく体が答えを知っていると思っているんですよね。中国気功に取り組んできたというのもあって、子供のころから体が感じることに向き合ってきたつもりです。
 僕は都会育ちなので、気候変動運動を始めた頃は自然との関わりがすごく少なかったんです。当時は、自然が好きじゃない自分でもこんなことができるんだ、これは自然とは関係のない問題だと言っていました。しかし、大学に入ってリベラルアーツ的な教育を受ける中で、自分の持っていた自然の概念を揺さぶるような文献を読んでいきました。そうすると、かつての自分は、自然と人間を分断して、技術論的な解決策を提唱していたことに気づきます。問題の原因を再生産していたんです。
 さらに学び続けると、新しい植民地主義は暴力ではなく、文化の押し付けという形を取ってきたとも知りました。ならば、もともとはそれ以外の知のあり方が存在したはずだと気づきました。まさに、自分が信じてきた直感や気功、東洋思想です。それらもまた価値のある知や存在のあり方なんだと納得することができたんです。そういった感じで、自分はマインドのシフトが先で、そののちに自然へと向かっていきました」
青木光太郎「きっとどんな人でも、葬式に出たときなんかには、日常では隠されている人の有限性にぱっと出くわしますよね。その瞬間、見えるものがあるはずです。あるいは真暗闇の中で星や海を見るときに、目の前に無限が広がっていると感じることがあるはずです。つまり時間や空間のかたちがこことは違う世界をのぞき込む経験は誰でもできると思うんですよね。ところが、それらの経験同士のつながりというのは見えにくい。みながどこかで味わっているそれらの経験を結びつけて、人生のなかでもつながりを見出せるようにする、その動きを促進するのがKOTOWARIです。個人のなかでも、社会のレベルでもです」
酒井「そういう意味で言うと、どうしてかは分からないんですが、部屋の電気を消して、暗闇の中でただ佇むというのが子供の頃好きだったんですよね」
青木「私もやっていました(笑)。お風呂とかでね」
酒井「すごい好きだったんですよね。それがなぜかを考えてみたとき、自分のその身体の境界線が目視できなくなることの安心感に思い至ったんです。光が当たると、自分が空間の中で切り出されている感覚がある。それこそ日中は、自分を見てくれ、と思うわけです。ただ、全体性に包まれたくなるというか、個であることの辛さから離れたいというときに、外界と自分との境界が見えない、とけている感覚に浸って安心感を覚えていました」
青木「解放感がありますよね」
酒井「そうなんです。接続している感じというか。その後、本を読んだり話をしたりしていく中で、そうか、もともと生態系の働きとしては自分は元から溶けていたんだ、と気づいたんです。それはそれこそ西洋由来の世界において、個人の枠がはっきりしていることから来る生きづらさに起因していたのかもしれません」
「みんなが共感する必要はない。やるべきだと考えて行動を起こすのではない形がいい」
青木「人間の世界から闇が消えた歴史上のタイミングと個が生まれた、孤立が始まったタイミングが一緒だと述べている学者がかつていましたね」
酒井「そうなんですね。そう聞いて思い出したのですが、大学で先住民族の建築のエッセーを書いた際、日中もあまり光の入らない薄暗い建物に、集団で雑魚寝している例を取り上げました。きっと、そういう空間だと、自分の境界が見えづらくなって、集団に溶けている感覚が立ち上がるのではないでしょうか。自分が集団や空間の一部となることで、そういった状況下では、ある意味でアイデンティティが融合しているので、その空間から他者がいなくなることが、自分の一部が欠落するといった感覚として感じられる。そうしたかつての存在の仕方が変わってしまい、個が切り離されたことによって、他者がどうなろうが関係ないというような意識が現れる。それが孤立化なんでしょうね」
青木「かつて神話や原始宗教が人々の想像力にすんなりと働きかけられたのも、集団と接続された状態にみながいたからこそだと思います。それは、今の人が読んでも伝わらない話なんだと思います。修行みたいなものも、発達しきった個の意識をどう意図的にリセットするかが課題になってくるわけです。その上で教典や神話がすっと入ってくる」
酒井「そうですね。必ずしもみんなが共感する必要はないと思います。共感して、やるべきだと考えて行動を起こすのではなく、むしろ便乗するような感覚で参加できるインターフェースを作っていきたいですね。微生物は、自分たちが気持ちいいことしかしないんだそうです。だから微生物と仕事をする人たちはその前提の下で仕事を考える。人間も同じなんだと思います。『こっちのほうが面白そうだな』というふうに人間も集ってきますからね。
 神話ということばがまさにしっくり来るんですが、自分の世界を構成している、世界を納得するためのナラティブなんですよね。科学をベースにした合理主義が暫定解のナラティブだったのですが、そこに納得がいかなくなり始めている。だからこそ、それをどう修正するかが大事なのだと思います。アイヌの文化では、神=カムイと互恵的な関係性を築き、互いにケアをするという意識があります。それは自然を保護するといった枝葉の問題ではなく、自分たちの存在に根幹から関わる、この世界を成り立たせるレベルのことなんです。そういった世界観=神話をアップデートして現代に広めるにはどうしたらいいのかを考えています。自然は理にかなうデザインを持っている。自然が全体としてどう動いてるのかを見るなかで生まれた伝統的な神話というのは、まさに理にかなっているのかもしれません」
「本当のものであればあるほど、全部が入っている」
青木「科学神話は全体のつながりを描き出すことはありません。そういう意味で、科学というのは神話的な機能は十分には果たせないシステムですよね。どこまで突き詰めたところで、神話の役割を肩代わりすることはできない。神話には、原点につながっているような体験やそこから出てくる感情が含まれています。さっきあがった、直観や感覚というものを深く探求していくとここにつながってくるはずです。現代の人はビジネスの中に組み込まれた刹那的な快感だけを感じ取っていて、本当に楽しいという感覚を得ていないのかもしれません。その商品を作った人を越えた外の世界には手が届かないんだと思うんです。KOTOWARIでは会津の自然でも食べ物でも、本物が体験できる。そしてそれらは参加者自身に力を与えてくれる」
酒井「そこで生まれる感情というのは、複雑なものなんだと思います。ポジティブとネガティブが並立するような。すごく楽しいけれど、すごい悲しいとか。山尾三省が『アニミズムという希望』(新装版:新泉社、2021年)のなかで沖縄の『愛い』(かない)という言葉を取り上げているのを思い出しました。悲しいほどに愛しいものがあると説いているんです。ポジティブさの塊のなかにだってネガティブさが含まれている。まさに真理だと思いました」
青木「本当のものであればあるほど、全部が入っています。私の好きなドストエフスキーには、もっとも俗なものからもっとも聖なるものまで、純粋な喜びから純粋な悲しみまで含んでいるんです」
酒井「二元論でもないですよね。二極が連続しているわけですからね」
青木「そうだと思います。そういったくくりやパターンをすべて外したところに見えてくるものを提示したいし提示されたい。自然もそういったものだと思うんです。空気が良いといったきらきらした要素だけではなくて、実際には残酷でもある。心地のよくないことも起きる。たとえば夜の森は個からの解放をもたらすかもしれない一方で、非常に危険な場所ですよね。そういった善悪ないまぜの何かに触れるということが重要なんだと思います」
(終わり)
□酒井功雄(さかい・いさお)アーラム大学3年休学中。2001年、東京都中野区出身。19年2月に学生たちの気候ストライキ、“Fridays For Future Tokyo”に参加。その後Fridays For Future Japanの立ち上げや、エネルギー政策に関してのキャンペーン立案に関わり、21年にはグラスゴーで開催されたCOP26に参加。気候変動のタイムリミットを示すClimate Clockを設置するプロジェクトを進め、1300万円をクラウドファンディングで集めた。現在は米国インディアナ州のリベラルアーツ大学において、平和学を専攻。 Forbes Japan 世界を変える30才未満の日本人30人選出。
□青木光太郎(あおき・こうたろう)1992年、千葉県生まれ。翻訳家、探求者。一般社団法人KOTOWARI代表理事。米ウェズリアン大学では哲学を専攻。卒業後、投資運用会社のBlackRockに勤務。その後、東京大学で開催した公開講座や教育の本質を考察するウェブメディアの連載など、教育関連の事業を経験。インドのヒマラヤ山脈などでの数年の瞑想修行などを経て帰国。KOTOWARI会津サマースクールを主宰。
□一般社団法人KOTOWARI 福島県奥会津での宿泊型集中学習を核に、高校生や大学生を対象とした探究型の環境教育プログラムを提供。大学の研究者、海外大学の大学院生・卒業生、地域の事業者や活動家、自然の原体験といった多様な情報の源泉に触れながら、参加者は対話を中心としたリベラルアーツと深い内省を組み合わせた学びを得る。経済や環境の多層的な理解を身につけると同時に、各々の世界に対する先入観や自分に対する固定観念を取り払い、自分自身と世界、自然のつながりを築く価値観、世界観を醸成する。代表理事に青木光太郎氏、事務局長に宇野宏泰氏。また一橋大学名誉教授・野中郁次郎氏、ハーバード大学経営大学院教授・竹内弘高氏が理事を務める。今年8月17日から21日には福島県南会津町・会津山村道場にて2回目のサマースクールを開催予定。
梅原進吾
https://news.yahoo.co.jp/articles/088461ce7216b879977f75b883dbf5f6e248ca05?page=1

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ほとばしる“欲望”を描いた冒険活劇マンガ『ゴールデンカムイ』が大ヒットを飛ばした理由とは

2022-07-21 | アイヌ民族関連
nippon.com7/20(水) 11:32配信

「ゴールデンカムイ」単行本。各巻の表紙には、個性豊かな登場人物たちがビビッドに描かれている。 (撮影:ニッポンドットコム編集部)明治末期の北海道と樺太を舞台に、過剰なまでキャラ立ちした登場人物たちが金塊争奪戦を繰り広げる、異色のマンガ作品『ゴールデンカムイ』(集英社)。その最終巻(第31巻)が7月19日に発売された。すでにアニメ化され、実写映画化も決定。クラシカルな冒険活劇のようでいて、何物にも似ていない個性を持つこの作品が、空前のヒット作となった理由とはなにか。マンガ表現の本質に迫る“怪作”の魅力を読み解く。
マンガの本質を描き切った異色作
20世紀初頭の北の大地を舞台とし、さまざまな形でマイノリティとなった人々が「金塊争奪戦」を繰り広げるという異色のマンガ作品の最終巻が、7月19日に発売される。
タイトルは『ゴールデンカムイ』。漫画家、野田サトル氏が集英社「ヤングジャンプ」誌にて週刊連載した作品だ。2022年7月の時点で累計1900万部を突破している大ヒット作であり、すでにアニメ化も行われ、実写映画版の公開も発表されている。
また大英博物館で行われた日本の「マンガ展」では、この作品がメインビジュアルとしてフィーチャーされていた。いわばマンガの“顔”として扱われたわけだが、確かに『ゴールデンカムイ』という作品には「マンガとはそもそもなにを描く表現か?」という問いを投げかけ、その解答を教えてくれるところがある。その答えとは「変態」。と言って語弊があるようであれば「生の力」。つまり人の欲望だ。
物語は、日露戦争終結(1905年)からまだほどない北海道から始まる。北海道は、日本列島を動物にたとえるなら頭の位置にある大きな島。だいたい現在のオーストリア共和国と同じくらいの面積を持つ。海を渡れば樺太(サハリン)という島もあり、そこで帝政ロシアと国境を接していた。戦争の帰還兵、杉元佐一は一攫千金を夢見て、この北海道にやってきた。彼は砂金を採ろうとしていたのだ。
しかし思うように採れず、そうするうちに杉元はあるうわさを耳にする。北海道はもともと少数民族「アイヌ」の土地だった。そのアイヌが、本土日本人の支配に対抗するために密かに蓄えた莫大な金塊がある。だがひとりの男がアイヌを殺戮し金塊を奪った。その男は囚人として地の果ての牢獄、網走監獄に送られるが、金塊のありかを入れ墨にして24人の死刑囚の身体に記す。秘密を知った兵士が死刑囚を監獄から移送しようとするが、囚人たちは兵士を殺して脱獄した。
「囚人たちの入れ墨を集めて暗号を解けば金塊が手に入る」
杉元にその話を語った男は、ただの酔っぱらいの、砂金採り仲間のはずだった。しかしふと気がつくと男の目の色が変わっていた。「しゃべりすぎた」。男は銃を手にしていた。
杉元は男を追ううちにアイヌの少女アシㇼパと出会い、優れたハンターであり、北海道の自然を熟知する彼女と手を組んで金塊探しに挑むことになる。
しかし金塊を追うのは彼らだけではなかった。陸軍最強と呼ばれた第7師団の兵士が動いていたのだ。また24人の死刑囚の中にも、とんでもない大物が身を潜めていた。それぞれの野望のもとに金塊を追う強者たちの大争奪戦が、北の大地で始まる。
時代の狭間(はざま)で躍動するマイノリティ
冒頭で記したが、金塊を追う者は、さまざまなかたちで社会の主流から逸脱し、マイノリティとなった人々だった。
第7師団の兵士たちは、国家から置き去りにされた者たち。
19世紀半ば、まだ封建制の国だった日本にも欧米の植民地獲得競争の波がやってくる。新時代に対応するために、日本は「明治維新」という革命を経て国民国家を成立させた。
もともと国防の危機意識から誕生した新国家は、清との戦争を経て、帝政ロシアと日露戦争を戦うことになる。
国家の存在は重く、ふつうの農民や職人だった市民が戦場に送られた。彼らが経験した近代戦はあまりに壮絶で、戦争には勝利したが、戦場となった満州(中国東北部)の地には彼らの亡骸が埋まっている。
兵士たちの死を無為にしないために、首謀者、鶴見中尉は金塊を追う。彼の所属する第7師団は、大き過ぎる犠牲を出してしまった結果、軍の中で冷遇されていた。鶴見自身も戦傷を負い、異端、異形の軍人となっていた。
彼は金塊を得て、北海道に軍事政権を築くという。奇矯な言動を見せる「怪人」だが、恐ろしく切れる頭脳の持ち主であり、さらに魔性といえるほどのカリスマ性と人心掌握術も持っている。彼に心酔する部下たちは、戦いのエキスパート。戦場帰りの強者たちだ。
もうひとつの一派は、歴史から置き去りにされた者たち。文字通りのラストサムライ、土方歳三が率いる囚人たちのグループだ。
「明治維新」によって国民国家が誕生する以前、封建制日本はサムライが支配する国だった。その頂点は将軍。土方は滅びゆく旧秩序、将軍の側につき、新政府軍と戦った伝説のサムライである。19世紀に実在した人物で、史実の上では戦争の最終段階、北海道を分離させ、そこに独立国をつくろうとしていた。だが敗北し、土方も戦死したとされていた。
その土方が、実は生き延びていたのだ。彼は24人の死刑囚のひとりとして脱獄を主導。老いてもさすが天性のケンカ師で、剣の腕も戦闘センスも衰えておらず、あらためて北海道の独立を目指す。彼は北の島を帝政ロシアに対する緩衝国とし、そして広く移民を募り多民族による共和国をつくりたいと考えていた。その資金として金塊を追うのだ。
土方の一派は死刑囚たちが中核だけに、最強の柔術家や盲目のガンマンなど、異能のスキルを持つとびきり危険な男たちがそろっている。また、かつて共に戦ったサムライの生き残りも仲間になっている。
作品の中心を貫くアイヌの世界観
主人公の杉元佐一とアシㇼパだが、杉元の家族は伝染病にかかり、その生家は死病の源として村人たちから避けられていた。
杉元本人だけは無事だったが、一家は次々と亡くなってしまう。ついに最後の家族が死に絶えたとき、彼は家に火をつけて村を出た。思いが通じ合っていた梅子を残して。2年経って、自分が罹患していないことが明らかになれば、戻るつもりだった。やがて村に戻った彼が目にしたのは、彼の親友と結婚した梅子の姿だった。そのとき、彼の顔には笑みが浮かんでいた。
しかしその親友も戦争で命を落とし、残された梅子は目を患う。杉元は、彼女の目を治す資金として、なにがなんでも金を必要としていたのだ。
驚異的なタフネスと戦闘力を誇る男。家族を奪った死病も彼には手出しできなかった。肉体も強靭だが、なにより「自分は不死身だ」という信念が、彼を支えていた。「不死身の杉元」といえば、陸軍でも有名な兵士だ。
そしてアシㇼパ“さん”(杉元は彼女のことを必ず敬称をつけて呼ぶ)は、日本における少数民族だ。もともとアイヌたちは日本の歴史が始まる前から日本列島に居住し、狩猟採集生活を行っていた。しかし稲作を行う農耕民族が国家を成立させると、彼らは北へ北へと追われ、ついには北海道が居住地域として残される。中世にはオホーツク文化と呼ばれる独自の文化を成立させて、本土の人間とも交易を行っていた。近世に入ると経済的に支配され、さらに明治維新の後は、日本式の名を与えられ、文化まで奪われるようになっていた。
だが彼らには自然と共存する知恵と世界観、そして厳しい大地で生き抜く強さがあった。アイヌのライフスタイルと工夫、考え方、そしてアシㇼパさんが実践する狩猟採集生活の食事場面は、この作品の大きな魅力だ。
彼女にとって金塊はもともと自分の民族の財産だったわけだが、個人的にも、彼女の父親は金塊のために殺されたアイヌのひとりだった。父の身になにが起ったのか。自分はなにを託されたのか。自分とはいったい何者なのか。それを知るために彼女は金塊を追う。
こうした登場人物たちは、マイノリティといっても庇護が必要な弱者ではまったくない。厳しい自然の大地で戦われる金塊争奪戦。そもそも弱者は死んでいくだけなのだ。どのキャラクターも圧倒的にパワフルで、生き抜く力があふれている。
私ごとで恐縮だが、マンガ誌で働いていた若いころ、先輩に「マンガという表現は、根っこのところで人間のリビドー(生得的に備わっている本能のエネルギー)とつながってないとダメなんだ」と教わったものだ。そのリビドーがレッドゾーンにまで振り切れたとき、人は「変態」と呼ばれるのだろう。この作品は、そうした「変態」のはちきれんばかりのパワーが満ちている。
そもそもマンガとはなにか? 「それは人間の欲望を“全肯定”する表現だ」と言った人がいる。自分などもそれが一番マンガにふさわしい定義ではないかと感じているのだが、人間の普遍的な欲望を全面的に肯定する表現だからこそ、国境を越えても支持されるのではないだろうか。『ゴールデンカムイ』はそんなことを考えさせてくれる。
面白いことに金塊を追う者たちは、それぞれに違うあり方で他者と結ばれている。第7師団の兵士たちは、いびつな心理操作によって絆が強化された。土方歳三のグループは、最初は利害の一致によって結びつく。杉元とアシㇼパ、のちに彼らの仲間となる白石という脱獄の名人は、個人と個人の信頼によって結ばれた。
こうした「人のつながり」のもっとも大きな単位が「国」になるわけだが、実は『ゴールデンカムイ』は人とのつながりを得た者、あるいは失った者たちの、「自分の国づくり」の物語でもある。その目的は最後の最後に、意外な人物によって、意外なかたちで達成される。ぜひ見届けていただきたい。
【Profile】
堀田 純司 HOTTA Junji
作家、マンガ原作者。上智大学文学部卒。主な著作は『僕とツンデレとハイデガー ヴェルシオンアドレサンス』、シナリオを担当した『まんがでわかる妻のトリセツ』(ともに講談社)など。集英社「よみタイ」にて『まんがでわかる「もっと幸せに働こう」』を連載中。編集者としても『生協の白石さん』(講談社)などのヒット作を企画、編集している。最新作(漫画原作)は『東大教授が教える 日本史の大事なことだけ36の漫画でわかる本』(講談社)。日本漫画家協会員。
https://news.yahoo.co.jp/articles/3635400f983523e6ff2815ec1c1385f8cc3777b7

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『ゴールデンカムイ』手を血の受け皿に、舌で装填…不利な状況でも“負けなかった”名キャラたち

2022-07-21 | アイヌ民族関連
ふたまん7/20(水) 11:31配信

画像はヤングジャンプコミックス『ゴールデンカムイ』第31巻(集英社)
 野田サトル氏の漫画『ゴールデンカムイ』のコミックス最終巻となる第31巻が、7月19日に発売となった。2014年から『週刊ヤングジャンプ』で連載された同作は、“不死身の杉元”の異名を持つ元軍人の杉元佐一とアイヌの少女アシㇼパを中心とした登場人物たちが、金塊をめぐりサバイバルバトルを繰り広げる姿を描いた物語。
 全31巻を振り返り、本作の魅力のひとつとして挙げたいのが、迫力たっぷりの戦闘シーンだろう。強いキャラクターたちが全力でぶつかり合う展開に、一体どちらが勝つのか、手に汗にぎりながらページを読み進めた読者は多いはず。物語の半ばで倒れたものも少なくなかった同作だが、今回はそんな『ゴールデンカムイ』の名キャラたちによる「不利な状況を乗り越えた」シーンを選んで振り返りたいと思う。
■最後の侍・土方がみせた鮮やかな立ち回り
 まずは、土方歳三が“縛り”のある戦闘中に見せたかっこよすぎる戦術について。史実では函館戦争で死亡した土方だが、本作では網走監獄の囚人としてひっそり生きているという設定になっている。かなり高齢だがそれを感じさせない身体能力と精神力を持ち、「鬼の副長」の名にふさわしい戦いぶりを見せる。
 彼の見せ場は多々あったが、その中でも特に印象深いのがコミックス14巻の第135話、網走監獄の典獄である犬童四郎助との戦闘で見せた立ち回りだ。犬童は函館戦争にて兄を亡くしており、土方に復讐するという計画を常々あたためていた。そんな彼は網走監獄襲撃の際、混乱に乗じて土方をおびき寄せ「チェーン・デスマッチ」を強制的に開始する。これは互いを鎖の長い手錠でつなぐという、日本のプロレスでも採用されている試合形式のひとつである。
 土方は戦闘中、左腕に深い傷を負ってしまった。かなりの出血量で、余裕の犬童に対し劣勢に立たされたように見えるのだが、土方はここから鮮やかな形勢逆転をしてみせる。なんと彼は、背後に隠した左手を受け皿のようにして、自身の腕から滴り落ちる血を貯めていた。その血を犬童の目にぶちまけ、相手の視界を奪ったのである。そして力強い太刀さばきで犬童を完膚なきまでに叩きのめした。
 不意打ちや不利な状況にも動じることなく、どこまでも冷静な判断で最善手を打つ彼の姿は、まさに「最後の侍」にふさわしいものだった。
■ベテラン兵士・菊田のさすがの用意周到ぶり
 次に紹介するのは、菊田がコミックス20巻で見せた百戦錬磨の戦いぶりだ。彼は刺青人皮を求め都丹の存在にたどりつき、彼と一戦交えることになる。都丹は盲目の盗賊だが、視力以外の五感が非常にすぐれており、暗闇などでの戦闘が得意だ。杉元たちも真っ暗な夜に奇襲を仕掛けられ、追い詰められかけたことがある。
 都丹は夜暗くなってから菊田をおびき寄せた。はじめは自分の近くにランタンを置いておき、その明かりを不意に消すことで、敵の目が暗闇に慣れないように対策もとっていた。しかし残念なことに、菊田のほうが一枚上手だった。彼は夜間に戦うことを想定し、明るいうちから左目に眼帯をつけていたのである。こうして菊田は敵の位置をしっかりと把握し、有利な状況に持ち込むことに成功した。「てめえら全員見えてるぜ」のセリフもばっちり決まっていた。
 しかし都丹も負けてはいない。今度は地獄谷に舞台を変え、火山ガスの煙によって菊田の視界を奪う。その後宇佐美と二階堂、有古が助太刀に来なければ、さすがの菊田も危なかったかもしれない。
 その後、有古の作戦によって菊田たちは都丹に勝利をおさめるが、それまでにも戦況が二転三転して見ごたえのあるバトルシーンだった。
■天才スナイパー・尾形の驚きの機転
 ピンチを切り抜ける機転でいえば、コミックス26巻第255話の尾形百之助もあっぱれだった。ジャック・ザ・リッパーをめぐって各勢力が札幌ビール工場に集まる中、尾形は鶴見中尉の部下である宇佐美に出くわしてしまう。ふたりはどちらも第七師団の人間だが、尾形が途中で鶴見を裏切ったのに対し、宇佐美は「駒」となることもいとわないほど鶴見に心酔している。しかも尾形が宇佐美を「安い駒」呼ばわりした過去もあり、ふたりの関係は最悪の状態になっていた。
 これまでの戦いで、尾形は右目を失う大怪我を負っていた。そもそも彼は狙撃兵で接近戦を得意としないのだから、格闘能力の高い宇佐美では相手が悪すぎる。案の定、ボコボコにされたあげく銃の弾をすべて抜かれ、大ピンチに追い込まれてしまう。
 地面に這いつくばりながらも、やっとの思いで空っぽの銃のもとにたどりついた尾形。そんな彼を見て、宇佐美は弾を尾形の目の前に投げつけた。そして「取れよ その弾薬を装填するのが早いか…」「僕がお前の銃剣で心臓を一突きするのが早いか…」と勝負を持ちかける。
 どう見ても尾形が不利でしかない状況。しかしなんと彼は、口の中に隠していた弾丸を舌で装填するという神業をやってのける。こうして尾形は宇佐美の腹部を撃ち抜き、状況を一瞬でひっくり返してみせた。
 バトルシーンの描写に定評がある『ゴールデンカムイ』。一体どちらが勝つのかわからないスリリングな展開には、毎回ハラハラドキドキさせられた。物語がどのような結末を迎えるか、まだ未読はぜひ最後まで見届けてほしい。
https://news.yahoo.co.jp/articles/68b3da6a846aa467a229445a2345bfbe670473eb

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