先住民族関連ニュース

先住民族関連のニュース

アイヌ文様、マスク人気 登別アシリの会 全国から注文殺到

2020-06-17 | アイヌ民族関連
会員限定有料記事 毎日新聞2020年6月16日 北海道朝刊

 登別市の刺しゅうサークル「登別アシリの会」が作ったアイヌ文様をあしらったマスクが、生産が追いつかず一時受注を中止するほどの人気となっている。
 木綿の生地にさらしの裏地をつけ、魔よけの意味があるとされるアイヌ文様を刺しゅうしたもので15種類ある。2月ごろから製作を開始。菅義偉内閣官房長官が5月7日の記者会見で着用したことで一気に知名度が上がり、新型コロナウイルス感染拡大の収束が…
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残り287文字(全文477文字)
https://mainichi.jp/articles/20200616/ddr/018/040/002000c

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雨の日彩るアイヌ文様 オリジナル傘が好評―白老観光協会

2020-06-17 | アイヌ民族関連
苫小牧民報 2020.06.16

アイヌ文様をデザインした白老観光協会オリジナルの傘
 白老観光協会が駅北観光商業ゾーン(ポロトミンタラ)の観光インフォメーションセンターなどで扱うオリジナル傘の売れ行きが好調だ。傘の生地にアイヌ文様をデザインした品で、これまでに50本ほど売れた。観光協会は「白老に根付くアイヌ文化をアピールしたい」と販売に力を入れている。
 雨傘は、観光協会が運営する観光インフォメーションセンターの物販コーナーに置く商品として開発。4月から先行的にインターネット販売を始め、5月28日から同センターで本格的に売り出したところ、人気が出てきたという。
 ポリエチレン製の生地にアイヌ文様を縁取りした商品は、町経済振興課職員のアイデアを生かして開発した。観光協会は「売れ行きは上々。民族共生象徴空間(ウポポイ)がオープンすれば、白老に訪れる観光客にもアピールしたい」と言う。
 傘の色は今のところ紺のみだが、今後バリエーションを広げる考え。折り畳み式も商品化したいという。観光協会の物販担当者は「雨の日、町民も観光客もアイヌ文様の傘を手に歩けば、まちにアイヌ文化発信の素晴らしい光景が広がる」と、想像を膨らませながら商品をPRする。価格は1980円(税込み)。
http://www.hokkaido-nl.jp/article/17680

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蜂蜜に「ロゴ」ウポポイ応援 花カフェ・アイバレー【伊達】

2020-06-17 | アイヌ民族関連
室蘭民報 2020.06.16

ウポポイ応援のラベルが貼られた花カフェ・アイバレーの蜂蜜
大滝もPR
 伊達市大滝区優徳町で蜂蜜製造、販売などを手掛ける花カフェ・Aivalley(アイバレー、石川淳子代表)は、大人気商品の蜂蜜に、白老町にオープンするアイヌ文化発信の拠点「民族共生象徴空間」(ウポポイ)を応援するロゴマークを貼り付けた。石川代表は「ウポポイと一緒に大滝もPRできれば」と笑顔を見せている。
 アイバレーは、天然蜂蜜に大滝特産のアロニアをブレンドした「赤いはちみち」やアイヌ人が薬用や食材に重宝していたキハダの花の蜜の「緑のはちみつ」などを自家製造。同カフェと大滝区にある野口観光のホテル3館などで販売している。
 石川代表が、民族共生象徴空間交流促進官民応援ネットワークの存在を知り、「隣町を盛り上げられたら」と賛同を決めた。ラベルにはロゴマークが描かれ「花カフェアイバレーはウポポイを応援しています」と文字が入る。
 ラベルは140ミリリットル瓶(税込み2500円)と48ミリリットル瓶(同1300円)に貼っている。昨年からネット販売も始め全国各地にファンは多い。石川代表は新型コロナウイルス感染拡大に触れ「この空気が沈んでいる中、少しでも新しい風を吹かせたい。大滝の蜂蜜、ウポポイを多くの人に知ってもらいたい」と力を込めた。
 アイバレーの横には、母・愛子さんらが制作したアイヌ文様を展示する「ギャラリーアイバレー」がある。石川代表も昨年は、地元児童、生徒にアロニアを染料としたアイヌ文様の制作を教えるなどアイヌ文化の発信に力を入れている。
http://www.hokkaido-nl.jp/article/17669

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ウポポイ誘客、当面は道内 どうみん割で需要喚起 道議会環境生活委

2020-06-17 | アイヌ民族関連
苫小牧民報 2020/6/16配信
 道の長橋聡アイヌ政策監は15日、開業時期が未定のアイヌ文化発信拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」(白老町)の誘客施策について、「当面は道内客を中心に、その後は観光需要の回復に応じて道外、海外の方々へと段階的に取り組みを拡大していく」との…
この続き:530文字
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https://www.tomamin.co.jp/article/news/main/21619/

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「水は命」なのに入手困難…コロナが照らす米先住民ナバホの苦境

2020-06-17 | 先住民族関連
AFP 2020年6月16日 12時0分
【AFP=時事】アマンダ・ラーソン(Amanda Larson)さん(35)が、米国最大の先住民居留地「ナバホ・ネーション(Navajo Nation)」にある自宅から数キロ離れた給水所に車を止めると、3人の子どもがピックアップトラックの荷台に並べてあった大きなボトルに水を詰めた。
 66ガロン(約250リットル)の水は家族の飲み水や洗濯、入浴に使われる。2、3日後にはまた、背中が痛くなる水くみを繰り返さなければならない。
「子どもたちが他のみんなのようシャワーに飛び込んでいって体を洗えないなんて、恥ずかしいし、情けないし、悲しい」と、ナバホ・ネーションの南東の端に位置するソロー(Thoreau)のプレハブの自宅に戻ると、保育士として働くラーソンさんはAFPに話した。
 ラーソンさんは浴室に置かれた大きなプラスチック製の入れ物を指さしながら「この二つの容器が、私たちが学校や仕事に行く準備をするための道具だ」と言った。
 米国の疾病対策予防センター(CDC)によると「手を洗うことは簡単で、病原菌の増殖を防ぐ最も効果的な方法の一つ」だ。この言葉は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)のさなかにしつこく繰り返されている。
 だが、ナバホ・ネーションに住む17万8000人の約30~40%は上下水道が利用できない環境にあり、手を洗うのは単純に不可能だ。
 このことが、居留地内で新型ウイルスの感染が増加している主な理由の一つとみられている。6月上旬時点で5500人以上の感染が確認され、死者は250人に上っており、米国内で死亡率が最も高い場所の一つとなっている。
■「水は命」
 ナバホの人々は自らを「ディネ(Dine)」、自らの土地を「ディネタ(Dinetah)」と呼び、「水は命だ」と語る。
 この三つの言葉は、2万7400平方マイル(約7万平方キロ)ほどの居留地内のあらゆる壁に書かれている。アリゾナ、ユタ、ニューメキシコという3州にまたがる土地は地理的な多様性に富んでおり、印象的な砂岩のある乾燥した砂漠は、次第に高原と高山の森林に取って代わる。
 その豊かさは「スイートウオーター」「農場の湖」「柳の春」といった地名にも表されている。
 しかしこうした地名は、もはや現実を反映していない。
 水資源関連の支援を行う米NPO「ディグディープ(DigDeep)」の報告書によると、気温上昇と降雨量の減少により、居留地の表流水は20世紀にかけて推定98%減少したという。
 政府が常にこの問題を放置していることが原因の一つだと、2012年にディグディープを創設したジョージ・マグロウ(George McGraw)氏はいう。
 米国では19世紀半ば、上下水道への重点的な投資が開始された。だが、米国人約3億3000万人のうち約200万人は今日でもこうした設備を利用できていない。
 マグロウ氏はAFPに対し、連邦政府の主なインフラ投資から忘れ去られた広大な一帯があり、そこには主に黒人や先住民が暮らしていると語った。
 先住民族がこの影響を最も受けている。水道設備がない世帯は、白人では1000世帯当たり3世帯にとどまるが、先住民では58世帯に上る。
■放射能に汚染された井戸水
 ニキシア・アンソニー(Nikishia Anthony)さん(25)はボーイフレンドとその家族と共に、ナバホ・ネーションの中心部で標高7500フィート(約2300メートル)の場所にある緑豊かなホワイトクレイ(White Clay)に住んでいる。
 ある春の日、アンソニーさんはこの地域で活動する団体の一つである米ジョンズ・ホプキンス・センター・フォー・アメリカンインディアン・ヘルス(Johns Hopkins Center for American Indian Health)から水などの物資を受け取った。
 アンソニーさんはこの水を、この間生まれたばかりの赤ちゃんの哺乳瓶を洗ったり、ミルクを作ったりするのに使うと話す。
 アンソニーさんの家族は、厳しい冬の間は洗濯や食器洗いには雪を使っている。雪が使えない時は、家から約1マイル(約1.6キロ)離れた風力ポンプでくむ井戸に頼っている。しかしくむのに時間がかかる上、新型ウイルスの流行以降は複数の家族が利用するようになったため、長時間並ばなければならなくなった。
 この地域には風車が点在している。しかし、このような井戸水は避けた方がいい別の理由が存在する。約521か所のウラン鉱山が放置された結果、微生物だけではなく時には放射能で汚染されていることさえあるためだ。
 こうした井戸水はいまだに家畜用の水として使われており、最終的には人間の口に入ることになる。
【翻訳編集】AFPBB News
https://news.livedoor.com/article/detail/18423688/

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炎上したNHK「抗議デモ特集番組」、何が問題だったのか徹底解説する

2020-06-17 | アイヌ民族関連
現代ビジネス 6/16(火) 7:01配信
 6月7日に放送されたNHKの番組『これでわかった! 世界のいま』(以下、『世界のいま』)のうち、「拡大する抗議デモ アメリカでいま何が」と題された26分間ほどの特集の内容と関連投稿に国内外から大きな批判が寄せられ、NHKは放送2日後に「お詫び」を発表して、見逃し配信を停止し動画を削除、14日の放送の冒頭では約4分間にわたって謝罪を述べる、という騒ぎがあった。いったい何が問題だったのか。
『世界のいま』が描く抗議運動
 世界各地から大きな非難を浴びたのはまず、番組内で使われた後にSNSで配信された、1分20秒のアニメーション動画だ。放送された番組の視聴者よりもTwitterでこの動画を見た人のほうががはるかに多いと思われるので、そこに批判が集まるのも当然だ。しかし、問題の核心は動画だけではなく、特集全体の報道と解説のありかたにある。
 この特集は、出所不明の爆発音のなか人々が走り回る実写映像で始まり、「激しい暴動」という言葉で状況が紹介される。そして、アメリカで実際に起きている放火や略奪の映像を流した後で、スタジオには「暴徒化」というマークがあちこちに貼られた米国の地図を中心に置き、今回の抗議運動の発端となった事件に触れるが、被害者である「黒人男性」ジョージ・フロイド氏の名前には言及がない。
 その後、在ニューヨークの記者が、「一時は街を歩いていると襲われるのではないかという危機感もあった」と述べた上で、破壊略奪防止のためガラス窓に板を囲った店舗の様子(実写映像)を映し、抗議デモがさらに拡がる可能性を心配するような口調で、抗議運動と暴力行為を結びつける。
 スタジオの解説者は、警察による黒人への暴力についての背景には、「(白人)警官の漠然とした黒人への恐怖」がある、と説明する。そして、「取材したロスアンゼルスの警察官は、黒人やヒスパニックの居住区で治安の悪い地域に行くときには、かなりの緊張感を強いられる、と言っていた」と述べる。
 しかし、そのような恐怖がどのようにして生まれ、再生産し続けられるのか、また、なぜアメリカの都市の多くで特定の地域に黒人やヒスパニックが集中し、そうした地域の治安が悪いのか、という説明はない。さらに、番組後半では、反ファシスト運動「アンティファ」による破壊行為の映像を流して、抗議運動が暴力的なものという印象をさらに強めている。
 まず、今回の抗議運動を「暴動」と呼ぶこと自体に、番組の視点が露呈している。アメリカの報道では、この番組内でも触れられている1992年の「ロスアンゼルス暴動」として知られる状況において、暴力行為に焦点を当て、それを黒人と結びつけ、黒人と韓国人・韓国系アメリカ人の対立を単純化した構図で説明したメディア報道が状況の悪化に加担する結果となった、との反省から、当時の状況を「暴動(riot)」ではなく、人々が不正に抗議する社会運動としての側面に焦点を当てた「蜂起(uprising)」という表現を使うことが多くなっている。そして、その後の様々な抗議活動や対立状況を報じる際にも、そうした配慮は続けられてきた。にもかかわらず、『世界のいま』では冒頭から現在の抗議運動を「暴動」として伝えているのだ。
 今回の抗議運動が始まってから最初の数日間には、あちこちで破壊や略奪が起きたのは事実である。しかし、そうした暴力行為のほとんどは左派・右派どちらの組織とも関係を持たない「便乗犯」によるものであるらしい、という米国政府の調査結果は、番組放送4日前の6月3日に報じられていた。
 いっぽうで、トランプ大統領がホワイトハウス近くの教会の前で写真撮影をするために平和的抗議をしていた人々を催涙ガスで追い散らしたり、バファロー市の警官が市民を突き飛ばして大怪我を負わせたりなど、暴力を行使しているのは、むしろ権力側である。6月2日に発表された世論調査では、回答者の57%がデモ参加者の怒りは「完全に正当」、21%が「ある程度正当」と答えているように、アメリカの幅広い層がフロイド氏の殺害を不当と捉え、抗議運動を支持している。
 番組放送時点ですでに2週間近く拡大し続けていた運動のほとんどは、“Black Lives Matter,” “No Justice, No Peace(正義のないところに平和はない)”などのフレーズを唱えながら街を行進したり、警察署や市役所・州議事堂などの前や公園などで集会を開いたり、ジョージ・フロイド氏がデレク・チョービン警官(当時)に膝で首を押さえつけられていた時間と同じ8分間46秒のあいだ、抗議の意を表す膝をつく姿勢で黙祷したりという、合法で平和的な活動だ。
 参加者は黒人だけではなく、白人やその他のマイノリティも多く、人種・社会的地位・性別・地域を超えてきわめて幅広い人々が賛同して参加している。今回の運動ではとくに、10代や20代の若者が中心となってさまざまな行進や集会の原動力となっているのも特徴的だ。
 私自身、ハワイのホノルルで6月6日に行われた行進・集会に参加した。ハワイ州人口における黒人の比率は約2%と比較的低いにもかかわらず、行進の終着点であるハワイ州議事堂前に集まった人は約1万人にも達したという報道もあり、2017年1月のウイメンズ・マーチ以来の大規模な行進だった。
 ”Kanaka (ハワイ先住民を指す) for #BLM” や“Filipinx for Justice”といった、人種や民族間の連帯を示すサインや、抗議運動の正当性を訴えるプラカードなどを掲げて、マスク姿の老若男女が行進する様子は圧巻であった。
歴史と構造の不在
 この番組をはじめ、今回の抗議運動にかんする日本の報道の多くに見られる問題のひとつは、歴史認識の不足である。「いま」を報じるにあたっても、少なくとも琉球処分まで遡る歴史を理解しなければ現在の沖縄を論じることはできないし、明治期の北海道開拓からの歴史を踏まえなければ今日のアイヌ問題は報じられないのと同様、北米大陸で「黒人」が400年間にわたって公的・私的な暴力や殺害の対象となってきた歴史を踏まえていなければ、今回の抗議運動は理解できない。
 奴隷制時代、黒人は白人の所有物として売買され、白人の経済利益や性的欲求の道具として搾取され続けた。1862年の奴隷解放後には、南部社会の労働需要を満たすため、解放奴隷が不当に逮捕され、過酷な受刑者労働を課された。白人女性に色目を使ったなどの濡れ衣を着せられた多くの黒人、とくに男性への暴行や殺人が横行した。南部一帯では、学校や交通機関から水飲み場やトイレに至るまで人種隔離が施行された。
 1950年代からの公民権運動のなかで、数多くの活動家が暴行されたり脅迫されたりした。1970年代からは、犯罪や薬物の取り締まり強化といった名目で、黒人、とりわけ男性が、人種的プロファイリングをされ、逮捕され、罪状に見合わない重刑を負い、刑務所に収容されている人間のうちの黒人の比率は、人口比の何倍にもなる。その背後には、刑事司法と刑務所の建設・運営を担う民間企業の利益が合体した刑務所産業複合体があり、「刑罰国家」が拡大する過程で、黒人のコミュニティや家庭の多くが崩壊を強いられてきた。
 オバマ政権の誕生が、アメリカが人種主義を乗り越えたことの象徴のように捉えられることもある。しかし、200年以上の歴史のなかでひとりの黒人大統領が誕生したことで人種主義がなくなったわけはなく、制度的にも、日常生活においても、黒人への差別や暴力はさまざまな形で続いている。2013年に始まった#BlackLivesMatter運動の発端となった高校生のトレイヴォン・マーティン射殺事件も、サウスカロライナ州の黒人教会で9人が乱射殺害された事件(2015年)も、オバマ政権期中のことである。
 そして、100年以上の歴史をもつ白人至上主義は、差別的な発言や行為を公然とするトランプ大統領の誕生に後押しされる形でさらに勢いをつけ、各地で活動を広げている。
 さらに、今年だけをとっても、ケンタッキー州の自宅で警察に射殺されたブレオナ・テイラー、フロリダ州で警官に射殺されたトニー・マクデイドと、黒人が白人の民間人や警官に殺される事件が相次いでいた。その矢先に起こったのが、ジョージ・フロイドの殺害事件だったのだ。
 こうした状況の根底にあるのは、個々の人間がもつ偏見や差別意識だけではない。アメリカでは歴史的に、奴隷を監視するためのパトロールや移民のコントロールに起源をもつ警察機構、自己防衛の名目で暴力行使を正当化する法律、投票の公正さや一票の重みの格差、居住や生活水準の格差を生む地域指定、教育や雇用機会へのアクセスなど、社会のありとあらゆる仕組みにおいて、人種が決定的な軸として作用している。
 個人が差別意識をなくすことももちろん重要だが、社会構造そのものを抜本的に変革し、制度的・体系的なレイシズムを廃絶しなくては、このような事件はなくならない、と訴えているのが今回の抗議運動である。『世界のいま』内でインタビューされているダンナ・キールさんや、デモの映像に映るプラカードにこのような訴えが含まれているにもかかわらず、番組はこのような構造的な問題にはまったく言及していない。
アニメーション動画の黒人像の表象
 さて、世界各地から非難の的となったアニメーション動画を見てみよう。これは、番組開始後にスタジオで抗議運動の状況を約7分間解説したあとで、アニメーションを使ってその背景を説明しようとしたもの。
 この動画は、ジョージ・フロイド氏殺害事件や、それ以前に何度となく繰り返されてきた警官による黒人への暴力にまったく触れていない。動画だけ見ると、今回の抗議運動は、白人と黒人の貧富の格差に黒人が怒りを抱いていたなか、コロナ禍によって黒人がとくに大きな経済的打撃を受け、溜まっていた不満が噴出した、という説明になっている。
 そして、その説明をするのは、「我々黒人」の置かれた立場を訴える、筋肉ムキムキの黒人男性。そのまわりを、燃える車や略奪された店舗の画像を抱えたり、拳を挙げて地団駄を踏んだりしている黒人たちが囲み、背後で煙が上がっている。抗議運動が「暴動」と同義のように描かれているだけでなく、「黒人」の表象そのものが、粗野で暴力的で過度にマッチョな男性、という典型的なステレオタイプに基づいており、「黒人」=「危険な男性」という認識を強化している。
 アメリカでは歴史的に、こうした差別的認識とステレオタイプが、多くの場合殺人にまで至る黒人への暴力を正当化してきた。そうした歴史の延長によって、ジョージア州のアマード・アーバリーがジョギングをしているだけで白人親子に殺害されたり(今年2月)、ニューヨークのセントラル・パークで散歩中の黒人男性が、公園の規則通り犬をつなぐようにと白人女性に声をかけただけで警察を呼ばれたりする(今年5月)、という事態があちこちで起こり、警官に抵抗をしていなかったジョージ・フロイド氏が殺害される、という事件になるのだ。
 たかがアニメ動画、ではない。メディアの表象は、制作する人々の意識を表すと同時に、視聴者の意識を形作るのだ。
番組制作のチェック機能
 番組の内容についての問題点は他にもあるが、なぜこれほどまでに歪んだ内容や描写が制作過程でチェックされることなく放送・発信に至ってしまったのか、という疑問もある。そして、放送2日後に発表された謝罪文では、「配慮が欠け、不快な思い」を与えたという表現が使われたが、いったい何に配慮が欠けていたのかという説明がなく、問題の所在は視聴者の「不快」感ではなく報道の内容や表象のありかたにあるという理解が欠如していた。
 ちなみに、公開された謝罪文の英語版では抗議運動の直接の契機となった事件がジョージ・フロイド氏の名前とともに言及されているが、日本語版にはなぜか名前はなくただ「黒人男性」となっているのも謎である。
 取材にあたる記者たちや編集スタッフの知識や認識の不足、画像や動画の製作者のもつ人種やジェンダーの意識など、さまざまな要因があると思われる。多くの番組に見られる、男性の解説者の説明を若い女性がフムフムと頷きながら聞く、という設定にも、製作者側の「常識」が感じ取られる。記者・ディレクターだけでなく、局全体の人事や組織運営、そして番組制作プロセスを徹底的に見直すことが望まれる。
 私も呼びかけ人のひとりとなって、アメリカの歴史や社会を専門とする研究者有志13人が、この番組内容とSNS投稿に関する要望書を6月12日にNHKに提出した。賛同者の署名を募っており、そのリストを月末にあらためてNHKに送付する予定だ。
 6月14日放送の『世界のいま』では、番組冒頭で国際部長みずからが、アニメの内容が不適切で、人権や多様性に対する認識が甘かったことを認め、頭を下げて謝罪した。各方面から寄せられた厳しい批判を真摯に受け止め、今後具体的な対策をとっていく意図の現れと受け取りたい。そして、受信料によって運営される公共放送であるNHKはもちろん、世界の状況を人々に伝えるメディアの内容について、必要なときには視聴者が批判の声を上げること、そのためのメディアリテラシーを身につけることの重要性をあらためて感じる。
 これを教訓にして、NHKだけでなく、メディア全般が、人種や社会運動の報道のありかたについてより真剣に考えるようになることを願う。
吉原 真里(ハワイ大学教授)
https://news.yahoo.co.jp/articles/36d99dd0ea15fb357390c69ea1088db1b4a7abf2

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